今年も多数のファッション系コンテストやアワードが世界各国で開催された。ファッション界の“オスカー賞”とも言われる「CFDAアワード」では、2年連続でラフ・シモンズ(Raf Simons)「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」チーフ・クリエイティブ・ディレクターがウィメンズウエア・デザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、世界で最もサステイナブルな企業100社のリスト「グローバル100(Global 100)」では、ケリング(KERING)がテキスタイル、アパレル&ラグジュアリーグッズ企業カテゴリーで唯一ランクインするなど話題を集めた。
また、国際的に日本のデザイナーや企業の功績が称えられ、多くのメジャーな賞を獲得した1年でもあった。「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」では「ダブレット(DOUBLET)」を手掛ける井野将之デザイナーがグランプリを手にした他、辻一弘メイクアップ・アーティストが「アカデミー賞」の「メイク・ヘアスタイリング賞」を受賞するなど日本人初の快挙を成し遂げた。
そこで、国内外を問わず、若手支援を目的とするコンテストから、デザイナーやアーティスト、経営者らを称えるアワードまで、今年開催された20のタイトルを紹介する。
新たな才能を発掘 若手デザイナーを支援する
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毎年4月末に開催される「イエール国際モードフェスティバル(33e Festival International de Mode, d’Accessoires et de Photographie à Hyères)」は、クリエイティブな才能を後押しするために用意されたプラットフォームで、若手デザイナーの登竜門として知られている。過去の受賞者にはアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)、フェリペ・オリヴェイラ・バティスタ(Felipe Oliveira Baptista)らが名を連ねる。写真は「ボッター」“FISH OR FIGHT”コレクション
グランプリ:デザイナーデュオのルシェミー・ボッター(Rushemy Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)のメンズウエアブランド「ボッター(BOTTER)」
「ANDAMファッション・アワード」は、フランス国立モード芸術開発協会が主催してパリで開催される若手デザイナーの登竜門。ケリング(KERING)やLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)、エルメス(HERMES)、シャネル(CHANEL)などがプライベートスポンサーとして名を連ねている。写真はANDAMファッション・アワードの公式インスタグラム(@andamfashionaward
)から
グランドプライズ:アントニン・トロン(Antonin Tron)が手掛ける「アトライン(ATLEIN)」
クリエイティブ・レーベル・プライズ:「ルドヴィック デ サン サーナン(LUDOVIC DE SAINT SERNIN)」
アクセサリー・プライズ:ステファニー・ディジェール(Stephanie d’Heygere)=デザイナーの「ディジェール(D’HEYGERE)」
「インターナショナル・ウールマーク・プライズ(INTERNATIONAL WOOLMARK PRIZE)」は、ザ・ウールマーク・カンパニーの前身である国際羊毛事務局が新たな才能発掘のために創設した賞で、1953年に初めて開催した。54年の大会では、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)とカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が優勝し、キャリアのスタートを飾っている。写真左から、ルチカ・サチデヴァ「ボディス」デザイナー、クリストファー・ベヴァンス「ダイン」デザイナー、マシュー・ミラー「マシュー ミラー」デザイナーとそれぞれのコレクションを着用したモデル GIOVANNI GIANNONI / WWD (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
ウィメンズ部門:ルチカ・サチデヴァ(Ruchika Sachdeva)の「ボディス(BODICE)」(インド・パキスタン・中東地域ファイナリスト)
メンズ部門:マシュー・ミラー(Matthew Miller)の「マシュー ミラー」(ブリテン諸島ファイナリスト)
イノベーション・アワード(18年度新設):クリストファー・ベヴァンス(Christopher Bevans)の「ダイン(DYNE)」(ポートランド拠点)
「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」は、アマチュア部門を繊維ファッション産業協議会と日本ファッション教育振興協会が共催し、プロ部門を同協議会と東京都が主催する。プロ部門は毎年10ブランドが選出され、最長で3年間(意欲・成果により毎年更新)、企画から販売、広報までブランドビジネスに関するさまざま支援が行われる。
東京都知事賞:「バルムング(BALMUNG)」のハチ
入賞:コトハヨコザワ(KOTOHAYOKOZAWA)」の横澤琴葉、「カイキ(KAIKI)」の飯尾開毅ほか
「ベストデビュタント」は日本メンズファッション協会が主催し、若手クリエイターの発掘支援を目的とする。ファッション、映像、グラフィック、アート、音楽、建築、文芸などの分野で各界に大きな影響を与えた若手クリエイターの中から選出する。写真は第14回「ベストデビュタント賞」の受賞者
新人クリエイターを表彰 第14、15回「ベストデビュタント賞」
第14回「ベストデビュタント賞」
ファッション部門:「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」を手掛ける青木明子
グラフィック・アート部門:映像監督・アートディレクターのかとうみさと
空間デザイン・インテリア部門:建築家の増田信吾+大坪克亘
第15回「ベストデビュタント賞」
ファッション部門:「パ―ミニット(PERMINUTE)」デザイナーの半澤慶樹、靴職人兼デザイナーの花田優一
空間デザイン・インテリア部門:建築設計家兼写真家の高栄智史
世界で日本人が快進撃! 海外アワードで受賞した 日本のデザイナー&企業
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「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」は、LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)が若手支援のために2013年11月に創設した賞。対象は18歳以上40歳以下で、ウィメンズウエアまたはメンズウエアのブランドを持ち、それまでに2回以上コレクションを制作しているデザイナー。写真は「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」の公式インスタグラム(@lvmhprize)から
グランプリ:「ダブレット(DOUBLET)」の井野将之
特別賞:韓国ブランド「ロック(ROKH)」のロック・ファン(Rok Hwang)
「アカデミー賞」の「メイク・ヘアスタイリング賞」はメイクアップにおいて最優秀であると評価された映画作品、およびそのメイク・アップアーティストに贈られる。
メイク・ヘアスタイリング賞:辻一弘メイクアップ・アーティスト(「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」作品)
「BoF500」は、イギリスのファッションメディア「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion以下、BoF)」が2兆4000億ドルのファッション市場に影響を与える人を毎年500人選ぶ「BoF」独自の指標。前年度の被選出者をベースに、毎年何百人もの推薦者を加えて「BoF」のエディターが分析し、選出している。写真は「BoF」の公式サイトから
・モデルの秋元梢
・コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)で「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」を手掛ける二宮啓
・メイクアップアーティストのカナコ・タカセ(Kanako Takase)
「ベストア・アワード」は、世界最大級のアイウエア国際展「ミド(MIDO)」で世界の優秀なアイウエアショップを表彰するもの。デザイン賞は店舗の内装、ディスプレー、顧客が楽しんで買い物できるクリエイティブな空間作りが審査され、イノベーション賞はそれに加えて、強いストーリー性を持ち常に進化が認められる店舗に贈られる。写真(左)授賞式の岡田哲哉グローブスペックス代表、(右)グローブスペックス渋谷店
イノベーション賞部門:グローブスペックス(GLOBE SPECS、渋谷店)
活動の功績を称えるアワード
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「CFDAアワード」は、アメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA、CFDA)が主催するファッション業界のデザイナー、ブランド、メディアを表彰するアワード。ファッション界の“オスカー賞”とも言われる。功労賞や国際賞、メディア賞、デザイナー・オブ・ザ・イヤー、ボード・オブ・ディレクターズ・トリビュート賞、スワロフスキー賞など多様な項目が存在する。写真はジェームス・ジェビア「シュプリーム」創業者の受賞アナウンス CFDAの公式インスタグラム(@cfda)から
ウィメンズウエア・デザイナー・オブ・ザ・イヤー:ラフ・シモンズ(Raf Simons)「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」チーフ・クリエイティブ・ディレクター
メンズウエア・デザイナー・オブ・ザ・イヤー:「シュプリーム(SUPREME)」の創業者ジェームス・ジェビア(James Jebbia)
アクセサリー・デザイナー・オブ・ザ・イヤー:「ザ・ロウ(THE ROW)」を手掛けるアシュリー・オルセン(Ashley Olsen)とメアリー・ケイト・オルセン(Mary Kate Olsen)姉妹
「ACEアワード」は、米国のアクセサリーズ・カウンシル(Accessories Council)が主催する、アクセサリー関連業界で活躍した人物、企業、トレンドメーカー、デザイナーを表彰するアワード。
アメリカン・ヘリテージ・アワード:「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」
ブレイクスルー・アワード:サンフランシスコ発シューズブランド「オールバーズ(ALLBIRDS)」
リテール・インフルエンサー・アワード:キス(KITH)
ホール・オブ・フェイム・アワード:デザイナー夫妻のサム・エデルマン(Sam Edelman)とリビー・エデルマン(Libby Edelman)
「グローバル100」は、カナダ・トロントのメディア「コーポレート・ナイツ(Corporate Knights)」が世界のあらゆる企業(2018年は7425社)を対象に、環境・社会・ガバナンスなど17項目の業績評価指標に基づいて最も持続可能性の高い100社を選出する。ケリング新社屋 THIERRY DEPAGNE (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
47位:ケリング(KERING)(テキスタイル、アパレル&ラグジュアリーグッズ企業カテゴリーで唯一ランクイン)
57位:H&M
84位:ロレアル(L'OREAL SA)
92位:ジョンソン・エンド・ジョンソン(JOHNSON & JOHNSON)
「ベスト・デパートメント・ストア・イン・ザ・ワールド(GLOBAL DEPARTMENT STORE SUMMIT 2018)賞」は、世界中の百貨店を対象に、商品や店内、オンラインなどあらゆる面から革新的で効果的な取り組みを行い、財務的にも好調な百貨店に贈られる賞。隔年で開催される「グローバル・デパートメント・ストア・サミット2018」のセレモニー中で授与される。写真はホリー・ヘンドリーの彫刻「Phylis」 PHOTO BY LEWIS RONALD / WWD (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
ベスト・デパートメント・ストア・イン・ザ・ワールド賞:英百貨店のセルフリッジ(SELFRIDGES)
「毎日ファッション大賞」は、毎日新聞社が毎日新聞創刊110年を記念して1983年に創設した表彰事業。大賞は、年間を通じてファッションという文化活動の中で最も優れた成果をあげた人(デザイナー、経営者、コーディネーターなど)、企業、団体に贈られる。写真は左から、伊藤正裕ZOZO取締役、青木明子「アキコアオキ」デザイナー、古田泰子「トーガ」デザイナー、アートディレクターの仲條正義 PHOTO BY KAZUSHI TOYOTA
大賞:「トーガ(TOGA)」の古田泰子
新人賞・資生堂奨励賞:「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」の青木明子
鯨岡阿美子賞:アートディレクターの仲條正義
話題賞:ZOZOの“ゾゾスーツ(ZOZOSUIT)”
東京を代表する“旬”ブランドを選出
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「ファッション プライズ オブ トウキョウ」は、東京都と繊維ファッション産学協議会が主催するファッションコンペ。同コンペは、“東京を代表するインターナショナルブランド”になる可能性を持つブランドを選び、パリでのコレクション発表の支援を行うもの。第1回の受賞者には「マメ(MAME KUROGOUCHI)」の黒河内真衣子が選ばれた。
「東京ファッションアワード」は、東京都と繊維ファッション産業協議会、ファッション・ウィーク推進機構が共催する。世界をフィールドに活躍する東京の旬なファッションブランドを選定し、海外での展開をサポートする。同アワードは2015年に設立後、これまで「ファセッタズム(FACETASM)」「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」「サルバム(SULVAM)」「ダブレット(DOUBLET)」など24ブランドが受賞してきた。写真左から、茅野誉之「チノ」デザイナー、藤田宏行「ジエダ」デザイナー、羽石裕「アーネイ」デザイナー、松井信之「ノブユキ マツイ」デザイナー、中田優也「ポステレガント」デザイナー、渡部宏一「レインメーカー」デザイナー、岸隆太郎「レインメーカー」デザイナー
6ブランドのデザイナーが選出
・「チノ(CINOH)」の茅野誉之
・「ジエダ(JIEDA)」の藤田宏行
・「レインメーカー(RAINMAKER)」の岸隆太郎
・「アーネイ(ANEI)」の羽石裕
・「ノブユキ マツイ(NOBUYUKI MATSUI)」の松井信之
・「ポステレガント(POSTELEGANT」の中田優也
勲章を受章した日本の経営者
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「イタリア星勲章」は、他国との友好協力関係ならびにイタリアとの関係促進に多大な貢献があった人に対して授与される勲章。グランデ・ウフィチャーレ章は、イタリア人と外国人に対して授与される最高位の勲章とされている。写真右が岡藤会長CEO
「旭日章」は1875年に日本初の勲章として制定。顕著な功績を上げた人に贈られる。写真は島三博・島精機製作所社長と章江夫人の2人から花束を受け取った島正博・同会長(右)
「フランス芸術文化勲章」は1957年に創設され、フランス共和国文化通信省から与えられる勲章。芸術・文学の領域で創造・普及に傑出した功績のあった人物に授与されるもので、日本人では過去に北野武や草間彌生、市川海老蔵、坂本龍一らが受章している。