KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)が5月22日まで、京都市で開催中だ。今年のテーマは「Circle Of Life(いのちの環)」。アートギャラリーや寺院から、普段は非公開の歴史的建造物といった特別な場所まで15会場を開放し、国内外の写真家による作品を展示している。京都市美術館別館では雑誌「ヴォーグ」などを刊行するコンデナスト社の貴重なアーカイブを集めた特別展「ファッション写真でみる100年」,誉田屋源兵衛 黒蔵(こんだやげんべい くろぐら)ではヨーガン・レールが環境破壊に警笛を鳴らす作品を展示した「Midway : 環流からのメッセージ」など、ファッションとリンクした展示も多い。
目玉は、写真家のサラ・ムーンによる二つの新作シリーズ。重森三玲旧宅主屋部の招喜庵では、世界各地の水平線を土佐和紙にモノクロでプラチナプリントした「Time Stands Still(以下、TSS)」、ギャラリー素形(すがた)では、アンティークミラー越しに撮影した鳥や花を大型プリントした「Late Fall(以下、LF)」を発表している。どちらも共通するのは、時の経過を繊細にとらえていることだ。
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「『TSS』は“変わらない時間”。海の水平線や地平線の光景は、ずっと変わらないものよ。対して『LF』は“前に進む時間”。花が枯れる瞬間の美しさをとらえたかったの。100年近く使われてゆがみやキズができた古いミラー越しに撮ることで、人生の終わりを迎える花の儚い瞬間を表現できた。作品名はシーズンの終わりという意味なんだけれど、作品を見た人から、日本には四季の終わりの表現で“夏枯れ”“冬枯れ”という言葉があると聞いて、なんて美しい言葉だと思った」とサラ。インタビュー時も、“儚い”“枯れる”という漢字を手帳に何度も書いて練習していた。「日本語の表現や漢字が大好き。自分の作品をフランス語で伝える時も『ephemere(儚い)』という単語をよく使う。女性を撮る時も自然を撮る時も、いつも興味があるのは、若さが持っている儚い美しさなの。時にそれは、目に見えない美かもしれないわね。さまざまな角度からじっくり時間をかけて見ないと気付かない。だから時の経過にも惹かれるのよ」。
1960年台にファッションモデルとして活躍し、写真家としての顔のほかにも映像や詩、アートなどさまざまな分野で活動するサラ。シャネルやディオールといった多くのファッションメゾンのキャンペーンビジュアルも手掛けてきた。自身にとってファッションはどんな存在かと聞くと「よく『着る服はその人の人格を決めない』と言う人もいるけれど、私はそうは思わない。私が私でいるために着る洋服を選ぶし、洋服を着ることで夢を見させてくれることだってあるもの」。この日のコーディネートは「ヨウジヤマモト」のメンズの白シャツに、「コム デ ギャルソン」のセットアップ。「コットンの白いシャツに目がないの。自分自身を語ることができる、ファッションが大好きよ」とあどけない笑顔で語った。
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