ファッション週刊紙「WWDジャパン」が2018年に掲載した中でも特に話題になった、もしくは話題にはそれほどならなかった(!)けど編集長の私が自信を持っておススメする記事を3回にわたって紹介します。2回目はメディアとインテリアにまつわる話題から。
「WWDジャパン」の特徴のひとつに、他メディアは競合相手というよりも取材先であるという点があります。毎年5月に発行している「雑誌・メディア」特集はその象徴で、紙面にはモード誌、実用誌、メンズ誌、女性誌、カルチャー誌などなどジャンルを問わずさまざまな雑誌やウェブメディアの編集長に登場していただいています。
この特集から今回ピックアップするのが「東京カレンダー」の記事です。通称「東カレ」のウェブ・アプリをご存じですか?実は私自身、今春からハマっていて、毎週金曜日に更新される「1分港区おじさん」という短い動画の連載物語を楽しみにしています。すでに90話を数える「港区おじさん」はバブルをちょっと引きずる大人たちが主役の、笑いあり涙あり時にアツい戦いあり、そしてハートウォーミングなオチありの物語。舞台が「WWDジャパン」も事務所を構える六本木界隈ということもあり “あるある~”と突っ込みながら金曜日深夜に観ています。「港区女子」というバズワードもここから誕生しました。
この記事では東京カレンダーの菅野祐介・社長にインタビューをしています。ルックスも港区風な菅野社長はIT業界出身。担当記者は「そこで培った高速PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを徹底したことで快進撃を生んだ」と分析しています。「紙全体がダウントレンドだから雑誌が売れないなんて、単なる言い訳でしかない」とか、「われわれは異業種から見た出版業界のおかしな点をことごとく潰してきただけ」と言い切る同社長の言葉には説得力があります。
話は突然変わりますが、雑誌特集の5月28日号には別冊がついており、毎年4月にイタリア・ミラノで開催されるインテリアとデザインの見本市、「ミラノサローネ国際家具見本市2018 (SALONE DEL MOBILE.MILANO 2018 以下、サローネ)」を特集しました。で、ぜひ見ていただきたいのがこの表紙の写真です。
こちらは「サローネ」の会場入り口の写真です。ナニコレ!?ですよね。コンサート会場の入り口さながらですが、プロ向け見本市会場の入り口なのです。タイトル通り、今年の「サローネ」は史上最高の入場者数を記録したそうです。一人くらい知り合いが写っているのではと目を凝らしたものの見つかりませんでしたが、話を聞けば今年の「サローネ」には、インテリア関係者だけではなくセレクトショップのオーナーなどファッション関係者も多数訪れたそうです。「サローネ」に出展するファッションブランドも年々増えており、マーケットにおけるインテリアやアートの重要性がひしひしと伝わる表紙です。
ファッション関係者とインテリア&アートのつながりの深さを伝えたのが、11月19日号の「業界人お宅訪問特集」です。表紙と中面2ページを飾ったのは、ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インクのダニエル・ペレル(Daniel Perel)社長です。ご自宅の部屋や廊下に並ぶ現代アートの数々は見ものですし、数は多いのに不思議と居心地がよさそうです。
この特集を発行後、「われこそは!」とご自宅取材に名乗りを上げてくださるファッション関係者の方もいて、皆さんのインテリアやアートへの関心の高さがうかがえます。
私自身、数年前に小さなアート作品を購入して自宅に飾ってからその魅力にハマりつつあります。「好き」というよりも、いそがしい日常生活の中でちょっと一息つくために、音楽や「港区おじさん」と同じくらいアートが「必要」と言った方が正しいかもしれません。部屋のどこに何を飾ろうかと考える時間は、自分自身の心のバランスを取っているのに近しいからです。来年の「WWDジャパン」にはアートやインテリアの登場がこれまで以上に増える予感です。