「WWDビューティ」2018年12月27日・19年1月3日合併号の2018年ベストコスメ企画は、今年のヒットの傾向や注目アイテムを特集している。ここでは少々ニッチな視点で、個人的に気になった18年の美容キーワード3つをご紹介したい。「進化型オーガニック」「心地良い感触への注目」「ニッチフレグランス」――これらキーワードに共通するのは、今まで感覚的に「何となくよさそう」と感じていたことを“見える化”したことだ。
オーガニック植物×科学の融合「進化型オーガニックコスメ」
専門店やバラエティーショップでの取り扱いが増え、身近な存在になったオーガニックコスメ。消費者の購入動機としては「香りの心地よさ」「お洒落なイメージ」「肌にやさしそう」といった、ふわっとした理由が少なくないように思う。18年はそんな感覚的な理由から一歩進んで、肌や体への効果を科学的視点で検証した「進化型オーガニックコスメ」が充実した。
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ACROから誕生した「イトリン(ITRIM)」は、植物原料の抗酸化作用や保湿作用を検証し、製品を使った肌の改善作用に関してもエビデンスを得ている。「ジュリーク(JURLIQUE)」の「ハーバル シグニチャー」シリーズは、4種のオーガニック植物からなる独自成分“B-Drop”に、抗酸化、抗炎症、血流促進作用を確認。カラーズの「ザ パブリック オーガニック(THE PUBLIC ORGANIC)」は、睡眠学専門の白濱龍太郎・医師と、精油の専門家である塩田清二・医学博士が開発に参加した「スーパーディープナイト ホリスティック 精油ディフューザー」を発売。入眠までの時間や覚醒反応を指標に、睡眠の質の改善作用が認められている。
これらの製品は、オーガニックコスメをなんとなく選んでいた消費者に、肌や体への機能性という新たな価値を提供している。多忙な女性が増えた今、「心地よい香り」と「機能性」を両立させた進化型オーガニックコスメは、ますます注目を集めそうだ 。
「心地良い感触」が美肌を作る! ストレス時代のスキンケア
スキンケアにおいて、感触は重要なファクターだ。みずみずしさ、滑らかさなど心地よい感触に触れると、ポジティブな感情が生まれることはすでに知られている。18年は感情に対する効果からさらに踏み込み、「感触が実際の肌にどう影響を及ぼすか」が注目された。
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花王の研究所は、特定のテクスチャーが“快”の感情を呼び覚まし、その感情が艶感や透明感など「肌の質感向上」に寄与するメカニズムを解明。傘下のカネボウ化粧品から発売した「カネボウ ザ クリーム」には、肌の質感向上に寄与する特別なテクスチャーを採用している。資生堂はニューロサイエンス(神経科学)に注目し、肌が受け取る感覚をウェアラブル機械で数値化。「エッセンス イネルジャ」シリーズのクリームに独自の感触と触り心地の違う64種のボトルを採用し、化粧行為を通して「肌感度」を高め、化粧品の効果を実感しやすい肌に導くことを目指している。ポーラの「Red B.A」シリーズは、ストレスの影響で増加するホルモンが、短期間で肌変化に関与することに着目。一品一品ステップごとに違うユニークな感触で、停滞した肌機能の活性化を試みた。
これまでスキンケア製品開発の中心は、成分や処方技術の追求にあった。そんな中、「感触」に対する研究は、“何となく感じていたことの見える化”であり、ストレスフルな現代社会において今後意味を増していくだろう。
「特別感」「ジェンダーレス」、時代の空気を映すニッチフレグランス
香りは目に見えないぶん、時代の気分を反映するもの。今年気になったのは「ニッチフレグランス」……ワールドワイドな大手メジャーブランドに比べると企業規模が小さく、個性的なメゾンが展開する香りだ。
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18年秋に本格上陸を果たした「フレデリック マル(FREDERIC MALLE)」は、12人の調香師が時間や素材の制限を受けずにクリエイションを発揮したラグジュアリーな香りが充実している。アルゼンチン発の「フエギア1833(FEGUIA 1833)」からは、テキスタイル(生地)用のユニークなフレグランスが登場。全製品に消臭・除菌効果の期待できる75種の天然植物を配合し、カシミヤやウールなど生地に合う5種の香りを展開している。ボディーケアブランドの「クヴォン・デ・ミニム(LE COUVENT DES MINIMES)」は18年、植物フレグランスブランドへと舵を切った。1614年創建のミニム修道院の薬草レシピを受け継ぎながら、動物由来の原料(ハチミツやミツロウまで!)を一切使わないビーガンフレグランスがそろう。いずれのブランドも個性的な香りで、男女を問わず使えるのが特徴だ。
調査会社のユーロモニター社によると、ニッチフレグランスは06年の157製品から16年の674製品へと、この10年で約430%成長。今後も成長が期待される分野だという。17年、18年も増えていると予想され、美容に限らずどの分野でも大きなトレンドが生まれにくい今、「他にはない個性的な香り」「厳選された植物素材」「ジェンダーレス」という意味において、ニッチフレグランスは時代の気分を先取りする存在である。
宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける。