ファッション

26歳の兄と24歳の弟が作る「エブリデニム」が“提案型”の販売で伝えたいこと

 26歳の兄、山脇耀平と24歳の弟、島田舜介の2人が手掛ける岡山発のデニムブランド「エブリデニム(EVERYDENIM)」は2015年の9月にスタート。現在、店舗を持たずにキャンピングカー「えぶり号」で全国を巡りながら商品の試着・受注会を行う“移動型販売”を行っており、行く先々でデニムのインディゴ染めの体験会を開いたり、実際に職人を招いてデニムの製造工程をみせたりと、さまざまな手法でモノ作りの背景を伝えてきた。リアルな場の他にも、月額会員制オンラインコミュニティー「えぶりシティ」を今年の4月にオープン。コットンの種を育てて成長過程をコミュニティー内でシェアし、最終的にはそのコットンでできたシャツを着る「服のたね」といった企画を用意する。「全ては提案型」と語る山脇、島田・両代表にブランド設立のきっかけや“提案型”の販売方法で伝えたい思いを聞いた。

WWD:ブランドを始めたきっかけは?

山脇耀平「エブリデニム」代表(以下、山脇):最初はブランドとして商品を販売はしていなくて、「エブリデニム」という名前でデニム関連の情報を発信するメディア的な存在だったんです。14年の12月ごろから、岡山などの瀬戸内地域に住むデニム関連の職人さんや経営者の方を取材して、ウェブで発信するという活動をしていました。取材を重ねて多くの工場や職人の方から話を聞くうちに、自分たちでプロダクトを作ろうと考え、15年の9月にクラウドファンディングでの資金調達などを通じて商品を販売し始めました。

WWD:なぜ、デニムに興味を持ったのか?

島田舜介「エブリデニム」代表(以下、島田):転機は僕が岡山の大学に進学したことです。経年変化のあるデニムや革製品がもともと好きだったのですが、大学1年生の時にたまたま昔ブランドのデザイナーをされていたという方と知り合う機会があって。その方に「デニムが好きなんです」と話したら、デニム工場の方を紹介してもらい、案内してもらいました。自分が普段履いているデニムから、有名なブランドのデニムまで、地方の工場がこんなにたくさんのデニムを手掛けていることを知り、単純に「すごいな、かっこいいな」と感動しました。

WWD:デニムの工場を実際に見てから、取材をして情報を発信しようと思った経緯は?

島田:工場見学で初めてモノ作りの現場を見て感動した一方で、安く作れるという理由だけで海外の工場に注文が流れ、つぶれてしまう国内の工場の話も聞きました。工場は下請けの生産が主で、情報発信をしていない。仮につぶれたとしても、そのことを僕たちのような若い世代が知ることはほとんどないんです。僕たちにも何かできることはないかと思い、情報発信を始めました。はじめはSNSでの発信を行っていましたが、最終的には取材をして記事を書くようになりました。

キャンピングカーで“移動型販売”をする理由

WWD:メディアからブランドになり、現在は全国をキャンピングカー「えぶり号」で巡りながら商品の試着・受注会を行っている。2人で各地を巡る理由は?

山脇:キャンピングカーで全国を巡り始めたのは今年の4月くらいからですが、それ以前は夜行バスや電車などで行ける範囲の地域に行っていました。ただ、従来のやり方だと時間や会える人の数の制約があり、「もっと自分たちの販売方法をコンテンツ化できないか」と考え、キャンピングカーでの“移動型販売”を始めました。各地を巡るのは、現地の人たちとの交流もあるし、ブランドのことを知らない人たちに納得して消費してもらいたいからですね。僕たちはプロダクト自体には自信をもっていますが、知名度が低いブランドが特定の場所で展示会を開いても、そもそも誰も来てくれない。各地の人たちと交流しながら、商品や生産背景について丁寧に語りかければ、共感して購入し、大事に身に付けてもらえると考えています。

WWD:「エブリデニム」のメンバーは2人のみ?

島田:基本的には2人でしたが、つい最近1人入りました。連絡をいただいて東京で一度会い、参加してくれることになりました。一緒に事業を新しく作ろうと思っていて、そこにコミットしてもらう予定です。

山脇:工場のある地区でのツアーなど、新しいビジネスを始めようと考えています。目的自体は今までと変わらず、モノ作りの背景を知ってもらい、工場の周りがにぎわいを見せること。工場では真新しいことは起きることは少ないですが、何かしら若い世代に響く新しい提案の仕方があるはずだと考えています。

WWD:今まで活動してきた中で、環境が変わったなと思ったことはある?

山脇:出会う人たちはどんどん変わってきています。最初は大学の友人しか身の回りにはいませんでしたが、今では人のつながりも広がり、昨年は「フォーブス(Forbes)」の「アジアを代表する30歳未満の若者30人」に選ばれもしました。特に最近は同世代の、価値観が合う人と出会う機会が増えています。彼らとは生き方や働き方について共感することがとても多いです。

WWD:どういった点で共感する?

山脇:僕を含め「自分で何かをやりたい」という人が多いです。少し傲慢な言い方かもしれませんが、自分が決定権を持っていなかったり、100%やりたいと思っていなかったりすると、あまり熱を向けられない。一方で、どんな小さな企業でもいいから、やりたいと思えることをやりたいという人たちが増えている印象ですね。

WWD:今年の4月には定額制オンラインコミュニティー「えぶりシティ」をオープンしたが、その目的は?

山脇:「えぶりシティ」は僕らがデニムを届ける中で「こういうものが良い」と提案し、シェアする場所で、旅をして売っていることともリンクしています。また、服の生産背景を理解する機会が少ないお客さんたちのために、少しでもいいから何か体感して欲しいという思いも込めています。コミュニティー内の「服のたね」という1年をかけた企画もその一つです。

島田:月額性で、1年間払い続けるとちょうどシャツの販売価格になるのですが、実際に種を育てるという体験を上乗せしているんです。文字では伝えづらいもでも伝えられるような、ハードルの低い参加型のプチ企画をいくつか用意しています。

山脇:とにかく提案型ですね。いろいろな切り口からどうやったらモノ作りの現場を知ってもらえるのか、常に考えています。

WWD:今後の目標は?

山脇:「エブリデニム」は岡山の工場の人たちとの出会いから始まりました。彼らのことをもっと知ってもらうのが内側の使命。そして外側の使命は、納得のできる消費をしてもらうこと。この2つはこれからも変わりません。今は各地を旅することでいろいろな地域の人たちとのつながりが増えています。今後は出会った人たちとのご縁を次の活動に生かせたらなと思っています。僕らが素敵だなと思っているモノの作り方をしている人たちが集まって、いろいろなことができる場所を造っていきたいです。

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