ハイジュエリーは、各ジュエラーの素材調達力やクラフツマンシップ、デザイン力が最高レベルで表現されるコレクションだ。毎年7月パリで開催されるオートクチュール期間中に新作を発表するジュエラーが多いが、独自のスケジュールで新作を打ち出すジュエラーもある。「ショパール(CHOPARD) 」は5月のカンヌ国際映画祭で新作ハイジュエリーの一部を披露し、7月のオートクチュールでも展示する。「ティファニー(TIFFANY)」は毎年“ブルーブック”コレクションをニューヨークで発表。ハイジュエリーというと数千万円級のものが中心だが、中には億超えのものもある。調達が極めて難しい石を使用した一点もの=ユニークピースが多く、発表後即売れてしまうものも多い。ここでは、各ジュエラーの最も高額な新作ハイジュエリーをランキング形式で紹介する。
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ダイヤモンド20.54CT(D/FL)、エメラルド12.77CT、ダイヤモンド4.15CT(D/FL)、エメラルド16個・計39.35CT、ダイヤモンド31個・計29.55CT(D/IF)、PT (c) CHOPARD
1位 ショパール レッドカーペット コレクション ネックレス 参考価格 15億4554万円
2018年ハイジュエリーの億越えランキングの1位に輝いたのはスイス発ジュエラーの「ショパール(CHOPARD) 」だ。ダイヤモンドはDカラーのフローレスかインターナルフローレスという最高レベルの石を採用。中央の20.54カラットと4.15カラットのダイヤモンド、12.77カラットのエメラルド以外に16個・計39.35カラットのエメラルドと、31個・計29.55カラットのダイヤモンドを使用したネックレスだ。これだけの数の石のクオリティーをそろえるのは簡単なことではない。クオリティーといっても、色、クラリティー、サイズなどさまざまな要素がある。しかも石は自然の産物であって人が製造するわけにはいかない。まさに、一点ものの逸品だ。
サファイア2個・計50.03CT、サファイア計15.17CT、ダイヤモンド計24.66CT、ターコイズ、WG、YG (c) VAN CLEEF & ARPELS
2位 ヴァン クリーフ&アーペル キャトル コントゥ ド グリム コレクション “トラヴェルセ エトワーレ”ブレスレット 参考価格 6億5640万円
グリム童話の「12人の踊る王女」がテーマのコレクションの中のブレスレット。「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS) 」らしくメルヘンの世界をジュエリーにした一点ものだ。ブレスレットの先端のペアシェイプのサファイア2石はビルマ産で、計50.03カラット。ビルマ産のサファイアは産出量が少なく、同じサイズ、クオリティーの石を2つそろえるのは至難の業。これらのサファイアと脇に施されたターコイズは物語で王女が訪れた湖の色を表現しているようだ。ぎっしり施されたダイヤモンドに関してもカラーはD~F、クラリティーはIF~VVS2と高品質のものだけで、クオリティーにこだわる同ブランドらしい。
ダイヤモンド737個・計128.15CT、WG (c) CHANEL FINE JEWELRY
3位 シャネル コロマンデル コレクション “エヴォカスィヨン フロラル”ネックレス 参考価格 3億1440万円
3位にランクインした「シャネル(CHANEL) 」はココ・シャネル(Coco Chanel)が愛してやまなかったコロマンデル(屏風)をテーマにした新作を発表した。全59点のうち24点が一点もの。このネックレスも1点もので、「シャネル」を象徴するカメリアを描いた屏風のモチーフがアシンメトリーにあしらわれている。グラデーション状に連ねられたエメラルドカットのダイヤモンドの上下に3連のダイヤモンドネックレスを施したダイヤモンド尽くしのゴージャスなネックレスだ。このネックレスに使用されているダイヤモンドの数は737個・計128.15カラット。石のセッティングに350時間、ネックレスの制作に1000時間を費やしたという。斬新なデザインもさることながら、それを可能にする素材調達と職人技の結晶ともいえる一点だ。
トルマリン34.77CT、ダイヤモンド計16.26カラット、WG
4位 ルイ・ヴィトン レガリア コレクション ネックレス 参考価格 2億9420万円
「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON) 」からは、君主の権力を象徴する装身具や宝物などを表す“レガリア”をテーマにしたコレクションが登場した。メゾンのシグニチャーの“モノグラム・フラワー”やイニシャルの“V”などが表現されている。このネックレスもそれらのモチーフにぎっしりと計16.26カラットのダイヤモンドが施されている。トルマリンは無色、ピンク、グリーン、ブルーとさまざまな色があるが、センターにあしらわれた34.77カラットの独特なカラーの美しさには目をうばわれる。特殊なカラー、サイズの大きさ、クラリティーの高さの3拍子がそろった希少性の高い石といえるだろう。
エメラルド18.88CT、エメラルド4個・計7.85CT、ダイヤモンド778個・計20.12CT、WG (c) PIAGET
5位 ピアジェ サンライト エスケープ コレクション ‟エメラルドスター“ネックレス 2億7400万円
スイス発「ピアジェ(PIAGET) 」は、オーロラや夜空、星や太陽の輝きなど天空の自然現象を表現した新作を発表した。このネックレスのセンターストーンのエメラルドはコロンビア産で18.88カラット。それを取り巻くパーツやネックレスにはさまざまなカットのダイヤモンドをセッティングしている。ダイヤモンドのカットは6種類。バゲットカットが28個・計0.76カラット、プリンセスカットが4個・計0.84カラット、スクエアカットが19個・計3.68カラット、ヘキサゴナルカットが26個・計8.88カラット、トライアングルカットが3個・計0.21カラット、ブリリアントカットが698個・計5.75カラット。これらの緻密な組み合わせが躍動感のある仕上がりを可能にしている。
エメラルド5.65CT、エメラルド506個・計22.98CT、ダイヤモンド284個・計13.08CT、オニキス1098個・計286.28CT、マラカイト、MOP、ブラックラッカー、WG (c) BOUCHERON
6位 ブシュロン ナチュール トリオンファント コレクション ”フルール グラフィック“ネックレス 参考価格 2億1540万円
本物の花びらをジュエリーにした新作で注目を集めた「ブシュロン(BOUCHERON) 」からは、自然をテーマにしたコレクションが登場した。その中で最も高額なのが、“フルール グラフィック”ネックレスだ。グラフィカルと自然という一見相反するテーマを融合させた作品はその名前のとおり、白と黒で幾何学的な模様を描くシャープなイメージ。センターストーンのエメラルドはコロンビア産で5.65カラット。それを取り巻く花びらはブラックラッカーとマザーオブパール(MOP)で出来ており、花弁にダイヤモンドがちりばめられている。意外性のある素材の組み合わせた卓越したセンスが光る一点だ。
ブラックオパール35.29CT、ダイヤモンド計2.49CT、エメラルド計5.45CT、アレキサンドライト計9.56CT、デマントイドガーネット計5.27CT、PT (c) TASAKI
7位 リッツ パリ パー タサキ ‟ジャルダン ドゥ ローズ“ ネックレス 参考価格 1億6000万円
「リッツ パリ パー タサキ(RITZ PARIS PAR TASAKI)」はホテル「リッツ パリ」内にサロンを構えるTASAKIのブランドの一つだ。18年の新作は同ホテル内の庭がイメージソース。このネックレスでは「リッツ パリ」の庭園に咲くバラの力強く官能的な美しさを表現している。バラのつぼみには最高級クラスのブラックオパールを使用。茎の部分にも幻の宝石と呼ばれるデマントイドガーネットや希少性の高いアレキサンドライトなどの珍しい石を使用しているのが特徴で、従来のクラシカルなイメージのハイジュエリーとは一味違った魅力のあるジュエリーに仕上げている。
ダイヤモンド237個・計91.61CT、PT
8位 ティファニー ブルーブック コレクション 2018 ダイヤモンドネックレス 参考価格 1億4537万6000円
春・夏・秋・冬とカラーセオリーという5つのテーマで構成された新作ハイジュエリーはリード・クラッコフ(Reed Krakoff)が「ティファニー(TIFANNY)」のチーフ・アーティスティック・オフィサーに就任して初めて手掛けたコレクションだ。このネックレスは氷をモチーフに、プラチナの海を漂流する氷山を表現している。使用しているダイヤモンドは237個・計91.61カラット。不規則にカットされたダイヤモンドを複雑なパズルのように組み合わせるには高度な技術が必要だ。オリジナリティーあふれる発想を確かな技術力でラグジュアリーかつモダンに昇華した作品。
白蝶真珠(10.2~14.7mm)、サファイア・計51.38CT、ダイヤモンド計34.91CT、WG
9位 ミキモト ジュ ドゥ リュバン コレクション ネックレス 参考価格 1億4000万円
「ミキモト(MIKIMOTO) 」は今年7月、パリで初めて新作ハイジュエリーの発表を行った。テーマは世界中で愛される永遠のモチーフである‟リボン“。風に舞うリボンの躍動感やたおやかさを遊び心たっぷりに表現している。このネックレスには、ダイヤモンドをちりばめたリボンのループの中に10.2~14.7mmの白蝶真珠と10カラット前後のサファイアがまるで浮いているかのようにセッティングされている。リボンのしなやかさを細いラインで大胆に描いているのが特徴で、ネックラインに自然に沿うようになっている。大ぶりの真珠とサファイアを存分に使用しながらも軽やかに仕上げている。
エメラルド7.15CT、ダイヤモンド62個・計14.26CT、オニキス34個、WG、YG (c) CHAUMET
10位 ショーメ トレゾール アフリックコレクション ‟カスカード ロワイヤル“ネックレス 参考価格 1億2300万円
「ショーメ(CHAUMET) 」はハイジュエリーコレクション‟レ モンド ドゥ ショーメ“の第3章でアフリカをテーマにしたコレクションを発表した。アフリカのプリミティブな要素をモダンにアレンジし、オニキスやマラカイト、ラピスラズリなどの素材をミックスしてダイナミックなデザインに落とし込んだ。最高額のネックレスのセンターには7.15カラットのコロンビア産のエメラルドを使用。オニキスとダイヤモンドを組み合わせ、カラーコントラストを利かせたデザインで仕上げている。フリンジのようなパーツが凛としたネックレスに躍動感と華やかさを添えている。
ダイヤモンド5.07CT、ダイヤモンド100個・2.34CT、ピンクサファイア35個・4.31CT、WG (c) DIOR
11位 ディオール ファイン ジュエリー ‟ディオール ディオール ディオール“ リング 1億1500万円
クチュールメゾンらしく、メゾンのアーカイブのレースからインスピレーションを得た新作を発表したのは「ディオール ファイン ジュエリー(DIOR HAUTE JOAILLERIE)」だ。ホワイトやピンク、イエローゴールドを糸に見立ててオープンワークで編み上げ、レースの繊細さ表現。それらに、ダイヤモンドやサファイアなどの宝石を縫い込むようにセッティングしている。このリングのセンターストーンには5.07カラットのカイトシェイプのダイヤモンドを使用。個性的なシェイプのダイヤモンドとそれを取り巻く可憐なピンクサファイアの組み合わせが新鮮だ。
キャプション:ダイヤモンド計2141個、WG、PG (c) MAUD REMY LONVIS, HERMES
12位 エルメス アンシェーヌマン・リーブル コレクション ‟アダージュ“ネックレス 参考価格 1億124万円
「エルメス(HERMES) 」は、ブランドの核であるチェーンをモチーフにした新作を発表。クリエイティブ・ディレクターのピエール・アルディ(Pierre Hardy)はチェーンが持つ‟つなげたり”“離れたり”する特性に着目し、従来のハイジュエリーの概念を超えるコンセプチュアルな作品をデザインした。アンカーチェーンとトグルのクラスプから構成されるこのネックレスの制作期間は約8カ月。2070個のブリリアントカットのダイヤモンドパヴェと71個のバゲットカットのダイヤモンドがセッティングされている。ボリューム感と軽さがミックスされた動きのエレガンスを表現した同ブランドならではの一点だ。