ファッション

中国最強ファッションアイコンの一人、エディソン・チャンに独占取材 「ファッションでの奇跡は誰にでも起こせる」

 中国語圏を中心に俳優や歌手として活躍するかたわら、ファッション界でも精力的に活動するエディソン・チャン(Edison Chen)がますます影響力を増している。同氏はメンズブランド「クロット(CLOT)」や中国本土を中心に出店するセレクトショップのジュース(JUICE)を手掛けており、若い世代を中心に支持を集める。また、背中の“V”のマークがアイコンの「ヴィーロン(VLONE)」のマネジャーを務めたり、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)やカニエ・ウェスト(Kanye West)らメンズファッション界で話題の人物と親交があったりと、もはやその知名度の高さは中国語圏だけにとどまらない。

 2018年にバーニーズ ニューヨーク六本木店で同氏がクリエイティブ・ディレクターを務めるアートプロジェクト「3125C ギャレリア(3125C GALLERIA)」のポップアップショップを開き、大盛況だった。中箸充男バーニーズ ニューヨーク ファッション・ディレクターは「ポップアップでは、インバウンドを中心に新たな顧客を創出することができた。エディソンさんの影響力は国内外のみならず、デザイナーやストリートの垣根をも超越しているとあらためて実感した」と振り返る。またポップアップに参加した倉石一樹「エー・フォー・ラブス(A.FOUR LABS)」ディレクターも「日本人は中国のファッションを自国より下に見ていた時期もあったが、現在その関係性は逆転していると言ってもいい。世界に出たがっている中国ブランドの多くが彼の影響力を頼りにしている」と語る。中国だけではなく、日本を含むアジアのファッションが飛躍するためのキーマンが見据えるアジアのファッションの未来とは。また同氏が愛する日本ブランドについても聞いた。

WWD:ファッション業界ではどのような活動をしている?

エディソン:20歳のころに立ち上げたファッションブランド「クロット」で立ち上げ以降チーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めている。他にも「3125C ギャレリア」でコンサル会社のような活動をしたり、デザイナーやモデル、マーケティングやプロモーションなどを行ったりと、ファッションに関わることは本当に何でもやっているんだ。でも今一番力を入れているのは、新しいブランドを支援すること。資金集めからデザイナー探し、卸先を探すことまで、全てにおいてサポートしているよ。有名なブランドで言うとエイサップ・バリ(A$AP Bari)の「ヴィーロン」ではマネジャーをしていて、成功させることができた。

WWD:現在何ブランドに関わっている?また最近の事例は?

エディソン:11ブランドだ。今後も支援活動には力を入れていく予定で、近いうちに20ブランドぐらいまで増える予定さ。最近では、バーニーズのポップアップストアのために作った「クロット」のTシャツに、もともとは僕のファンだった19歳の中国人グラフィックデザイナーの作品を採用しているんだ。僕のインスタグラムにDMで作品を送ってくれて、今はチームの一員として活躍している。「夢がかなった!」と喜んでくれているのはいいけど、彼を通じて大量の履歴書が届いて大変なんだよ(笑)。でも「中国にいるから無理」と諦めがちだった若者が、「自分にはこれができるからやりたい!」という気持ちに変わっているのが実感できてうれしいんだ。

WWD:若手を支援するのはビジネスのため?

エディソン:ビジネスとしてだけではなく、純粋に新しい才能を育てたいからさ。特に中国は情報が限られているから、若者は“箱”の中で搾取され続けている。でもクリエイティブの世界には“箱”なんてないし、制限されることもない。信じてやり続ければ何でもできるということを、経験をもとに伝えていきたいんだ。僕が「クロット」を立ち上げた頃は、まさか大好きな「ナイキ(NIKE)」と協業できるなんて夢にも思っていなかった。コラボレーションが決まった時はマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)の“ジャンプマン”ロゴのように飛び跳ねて天にも昇るぐらいうれしかったよ。そんな奇跡は、誰にでも起こせるはずなんだ。

WWD:日本のデザイナーとも親交があるようだが?

エディソン:好きなブランドを10挙げろと言われたら、6か7は東京のブランドになるかも。それぐらい日本のデザイナーが好きだし、才能があると思っているから。ファッションに興味を持ったのも日本のおかげさ。昔はジョーダンのシューズにヒップホップ系の服を着て、ラッパー気分でカルチャーを知ったつもりでいたけど、藤原ヒロシさんやNIGOさん、世界で一番尊敬する「アンダーカバー(UNDERCOVER)」の高橋盾さんや「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」の宮下貴裕さんに出会って、ファッションの楽しさを教えてもらった。「サカイ(SACAI)」の阿部千登勢さんも大好き。日本は心からかっこいいと思える人たちに出会えた国だし、今でも多くのインスピレーションを得られるから、世界で一番好きな国なんだ。

WWD:今後の活動は?

エディソン:まずは「クロット」でベストを尽くすこと。クリエイティブな仕事をここまでグローバルで行える中国人は少ないから。日本やパリ、ニューヨークでのビジネスはいまだに大きなプレッシャーはあるけど、自分にできることはまだまだまだある。自分が携わる会社やブランドだけではなく、中国を代表するつもりで責任を持って活動していきたい。そして、次世代にもチャンスが広がっていけばいいね。

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