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LVMH環境部門トップに聞く ラグジュアリーとサステイナビリティーは両立するのか

 LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY - LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、サステイナビリティーとラグジュアリーは両立すると考えているのか。

 LVMHに本格的な環境部門が発足したのは1992年で、リオデジャネイロで初めて地球サミットが開かれたのもこの年のことだった。しかし、グループ内で目標を掲げて取り組みを活発化させたのは2012年。傘下メゾンの環境パフォーマンス改善のために考案したプログラム、LIFEを導入した。LIFEとはLVMH INITIATIVES FOR THE ENVIRONMENT の頭文字を取ったもの。16年には、製品やサプライチェーン、製造拠点目標、そしてエネルギー消費に関連する二酸化炭素排出量を13年に比べて 25%削減するという目標を基軸とする「LIFE2020」を策定した。

 5月末に来日したアレクサンドル・カペリ(Alexandre Capelli)LVMH環境マネジャーに、サステイナビリティーへの取り組みと現在抱える課題を聞いた。

「グループ全体の共通言語を作ることが重要だった」

WWD:サステイナビリティーへの取り組みにはさまざまなアプローチがあるが、最も力を入れているのは?

アレクサンドル・カペリLVMH環境マネジャー(以下、カペリ):12年に始めたLIFEプログラムだ。9つの目標を掲げ、現在グループ全体のサステイナビリティーにおける共通言語になっている。1番目はデザインの段階から環境パフォーマンスを考慮すること。2番目は戦略的な原材料調達の確保。3番目は材料と製品のトレーサビリティーと適合性。4つ目はサプライヤーの環境的・社会的責任。5番目は重要なサヴォアフェール(伝承技術)の保護。6番目は業務活動が二酸化炭素に与える影響。7番目は製造工程における環境面での卓越性。8番目は製品寿命と修理可能な製品。9番目は顧客からの環境に対する要望に的確に対応する能力だ。

加えて16年に、20年までに達成させる目標「LIFE2020」を掲げ、各メゾンのパフォーマンスを評価しながら取り組んでいる。各メゾンが自主性と固有のDNAを持っていることは素晴らしい点でもあるが、一方で、まとまりを欠くということでもある。そういう観点から言うと共通目標を掲げたことは大きいと言える。

WWD:全社員の意識共有のための努力をどのように行っているか。

カペリ:社内コミュニケーションを徹底している。現在パリの環境部門にいる12人のスタッフと、全世界の各ブランドに設けた環境部門ディレクター約70人がネットワークを組ん で進めている。また、毛皮や希少な動植物など具体的なテーマに即してワークショップを開き、具体的な情報共有を行っている。加えて、環境アカデミーと呼ぶ研修プログラムを開催するなど啓発活動を行っている。

「毛皮の使用・不使用はメゾンに、
毛皮を選ぶかどうかはお客さまに委ねている」

WWD:毛皮と言えば、毛皮使用を廃止するメゾンが増えているが、LVMHとしてどう考えているか?

カペリ:われわれは毛皮の使用・不使用に関する判断をメゾンに、毛皮を選ぶかどうかの判断をお客さまに委ねている。メゾンが毛皮を使用する場合、われわれは動物福祉の実践を保証する体系的な認証を求めている。常に改善するためLVMHは、ヨーロッパおよび北米の農家組合と密接に連携している。また環境面に目を向けると、毛皮は生分解性であるため、例えばマイクロプラスチックファイバーによる水質汚染につながる人工ファーよりも、おそらく環境負荷が低くなるだろう。われわれは毛皮における動物福祉の観点と人工ファーの環境に対するインパクトの間のバランスを取る必要があると考える。

WWD:ラグジュアリー・ブランドのビジネスを維持すること、例えば、セールをしないで破棄することや、シーズンのための什器設備、ショーの大がかりなセットなどのブランディングとサステイナビリティーの追求は、一見すると正反対だ。そのバランスをどう考えているか。

カペリ:良いポイントだ。非常に意識している点である。このほど、パリに廃棄物をリサイクルする拠点を設け、できるだけリサイクルできる素材を使う努力をしていて、年5〜6回変わるウインドーの装飾に利用している。またデザイナーに対してもリサイクルできるような素材選びとデザインを意識するように促して、使用する素材自体を減らす努力をしても らっている。またウインドーやショーのセットで用いるものは、借りることで無駄をなくすようにしている。現在、パリの拠点でイタリアやスペインにも対応している。今後は、北米やアジアにも作りたいと考えている。

「課題の一つはデザイナー交代による店舗改装
循環経済を作り上げることが目標だ」

WWD:例えば、「セリーヌ(CELINE)」のデザイナーがフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)からエディ・スリマン(Hedi Slimane)に代わることで、ストアコンセプトなどが大きく変わるが、そういった場合も素材などをリサイクルしていくのか。

カペリ:確かにデザイナーが代わると、店舗改装の要求が出る。大きな課題だ。各ブランドに対しては、廃棄物をリサイクルするようにと伝えている。商品に関しては、より中長期的なプロセスで考えており、ウールや希少動物などの使用をある程度予見して対応している。

WWD:サステイナビリティーはここ数年でグローバル企業の“標準装備”になっているが、推進することでどうビジネスに還元されていくのか。環境保全以外にもたらすものは?

カペリ:グループの主要な4つの原材料であるブドウ、レザー、コットン、ウールはすべて自然に関わるものであり、将来も使い続けるならば、まさに今保護していくことが非常に重要になっている。また、社会のメンバーとして、サステイナビリティーはまさに“標準装備”であり、これに向けて効率的な努力することがビジネス成功の欠かせない条件だ。また最良のテクノロジーを利用することも重要と考えている。良い技術への初期投資費用はかかるが、エネルギー効率を考えれば結果的に節約になる。最良の技術と最高品質の原料をLVMHが使用しなくて他に誰が使うことができるのか?加えて、サステイナビリティーへの取り組みは人材確保にもつながっている。近年、若い人はサステイナビリティーへの意識が高くなっているため、企業としてもその方針を確立していることが重要だからだ。

WWD:今取り組んでいる中での課題は?

カペリ:改善すべき点は山積している。次の重要な課題は循環経済を作り上げることだと考える。できるだけ廃棄物を出さずにリサイクルできる仕組みを作ることだ。また、輸送効率の向上も課題だ。航空会社や船舶会社との協力が必要になるだろう。さらに、より厳しい目で原材料の調達を行うべきだと考えている。問題の一つは、石油がベースになっているプラスチックなどだ。水質汚染を引き起こす原因になっており、できるだけ動植物ベースのものに替える必要がある。そして、次世代のバイオテクノロジーを用いていくことも重要になるだろう。また、多くの生物種が失われている中で、香水、化粧品、ファッション製品、革製品全てにおいて生物多様性を維持し保全する努力をすべきと考える。

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