人工クモ糸で知られるスタートアップ企業スパイバー(SPIBER)が、ベビーカシミヤを凌ぐ風合いとタッチを持つ“原毛”の開発に成功した。同社は遺伝子レベルで設計したタンパク質を使った素材開発で、世界で最も進んだ企業の一つ。このタンパク質素材は、石油を使わず、かつ従来の化学繊維やプラスチックより高機能で環境にも優しい繊維や樹脂などを作れる究極のサステイナブル素材として、世界中の投資家や研究機関から注目を集めている。
関山和秀スパイバー取締役兼代表執行役と、香港の高級専門店レーン・クロフォード(LANE CRAWFORD)などの国内外のブランドのディレクションやコンサルティングなどを行い、スパイバーの商品開発にアドバイザーとして関わる源馬大輔・源馬大輔事務所代表に、東京都内で直撃した。関山代表は「人工構造タンパク質は、いろいろな素材が作れるとずっと話してきた。今回の新素材は設計から生産まで、これまでのクモの糸とはまったく違うアプローチで、新しい技術を盛り込んだ」という。源馬大輔は「1年前にスパイバーからアプローチがあった。山形県鶴岡市のラボで関山さんから話を聞いてすぐに、環境問題やサステイナビリティーなどの複雑で難しいファッションの課題に、かなりハイレベルに応えることができる新しい選択肢になると直感した。ブレードランナー的な暗い未来ではなく、僕らが目指すべき本当の未来がある」。
商品化はいつ、どのようなものになるのか。関山代表は「様々な試作品を開発している。来年か再来年には消費者に届けられる、そういったクオリティーには達している」。
一方、源馬大輔は「僕はもともと、仕事はグローバルでしか考えていない。近々は素材の供給量が少ないので、まずは限られたブランドにはなると思うが、素材のクオリティーはすごいレベルに到達してきている。勝手な妄想という前提で話すと、タンパク質という意味ではファーやレザー、ダウンもいける。むしろ服だけじゃなくて、プロのスケーターと協力してスケートボードを作っても良いし、インテリアブランドと組んで什器を作ってもいい。お店に並んだときに、服も什器も含めてこの一角がすべて“Made by Spiber”みたいな見せ方ができたら面白い。関山さんと話していて楽しいのは、何を聞いても “んー、できますねぇ”と答えるところ(笑)。断定口調でないけど、かなり無茶なことを聞いているのに、こっちが“え?できるんだ”って感じ(笑)」。
スパイバーが目指す未来とはいったいどのようなものなのか。関山代表は「世界に今までなかった選択肢を提供できたら嬉しい。それが人々の意識やライフスタイルに少しでもプラスの影響を与え、より良い未来につながっていくといいなと思っています」。
スパイバー広報室
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