河野秀和・社長が率いるシタテル(SITATERU)は、2014年3月に創業した。ファッションブランドはもちろん、セレクトショップのオリジナルやユニホームなど、服作りのさまざまなニーズに対応し、最適なマネジメントサービスを提供する。登録数はユーザー(ブランド)側が1万105、工場側が631(12月21日現在)で、両者のマッチングを行っている。同社が18年に開発した販促支援ツール「スペック」から、19年に計画しているグローバル化の施策についてまでを聞いた。
WWD:シタテルの強みは?
河野秀和シタテル社長(以下、河野):パターン・縫製・2次加工と服作りにおける全てを網羅している点だ。そもそも弊社以外で、ユーザー(ブランド)と工場のマッチングを行う企業を知らない。その独自性も挙げることができる。
WWD:2018年は、どんな一年だった?
河野:川上の“交通整理”をしている印象があるだろうが、商品を売るためのサービスも開発している。2月に発表した販売支援ツール「スペック(SPEC)」がそれだ。特許も取得した。現在、13社の大手小売が導入している。商品を受注生産することで、「在庫ゼロ」「セールなし」が実現できる。川下の消費者も諸経費が反映されない分、商品を安く購入できるメリットがある。
WWD:最近のニーズの特徴について教えてほしい。
河野:例えば大手セレクトショップがオリジナルブランドを新設する際、社内コンペを行うことが多いが、シタテルはそのサンプル作りを請け負っている。またインフルエンサーと組んだ新たなビジネスや、アパレル以外の企業が販促や物販目的で服を作るなど、ブランドの新しい形が増えている。
WWD:工場の登録数が630を超えた。
河野:創業時は5しかなかったので感慨深い。例えば、売り上げ規模が20億円以下のブランドの場合、工場にアカウントを開いてもらえないケースもあるだろうが、シタテルを通すことで与信となり、取引が可能になる。また工場と聞くと、いまだにガラケーを使っているイメージかもしれないが、「デジタルを使いたい」という声は多い。同時に「難しいことはできないから簡略化してほしい」と言われ、それに応えるのもシタテルの仕事だ。
WWD:大手企業による利用も増えている。どう応えている?
河野:2年前に外部から人材を招いて、工場の品質管理にテコ入れをした。それまでは正直、工場ごとに品質のばらつきがあったが現在はコントロールできており、外注の生産管理としても機能している。
WWD:2019年の施策は?
河野:グローバル化を図りたい。そのために海外の需要についてリサーチを終えたところだ。商社やOEM(相手先ブランドの生産)メーカーは別として、シタテルのようなサービスは海外にもなく、19年に海外開拓のための特別チームを結成する。ローカライズは簡単ではないだろうが可能だ。精度の高いコミュニケーションや品質管理は、日本の得意とするところ。細やかにサービスを運営することでミスも削減でき、信頼も得られる。国内ではプラットフォーム上に、工場が自ら「仕事が取りにいける」機能も追加する予定だ。これによって需要と供給の均衡がいっそう図れるだろう。「スペック」の発展型として、ショールーミングサービスもスタートさせたい。
WWD:シタテルの未来像について教えてほしい。
河野:ファッション的感覚とデジタルの駆使。2つを両立できているのがシタテルの強みであり、既存のプラットフォームをブラッシュアップすることで不良在庫や現場の労働環境など、アパレル生産を取り巻く諸々の問題を解決できると信じている。