ファッション

23歳の気鋭デザイナーを起用した「ロートル ショーズ」が目指すリブランディングとは

 1987年創業のイタリアのシューズブランド「ロートル ショーズ(L’AUTRE CHOSE)」は、2018年9月にニコロ・ベレッタ(Nicolo Beretta)をクリエイティブ・ディレクターに迎えリブランディングを果たした。現在23歳のニコロは13年にわずか17歳で自身のブランド「ジャンニコ(GIANNNICO)」を立ち上げた人物で、世界で最も影響力のあるシューズデザイナーの一人、マノロ・ブラニク(Manolo Blahnik)からも高い評価を受ける若手デザイナーだ。18年6月に最高経営責任者(CEO)に就任したアリーチェ・カーリ(Alice Carli)とニコロのコンビが導く新生「ロートル ショーズ」とは。

WWD:ニコロとアリーチェとの出会いは?

アリーチェ・カーリ=ロートル ショーズCEO(以下、カーリ):2018年6月から着手したリブランディングプロジェクトの前からの知り合いで、フィーリングがすごく合うからいつか一緒にやりたいと思っていた。この会社にCEOとして参加した際に、単にデザイナーとして仕事をする人ではなく、クリエイティブ・ディレクターとして自分の仕事をサポートしてくれる人が必要だと思ったときに、彼が頭に浮かんだ。ニコロはさまざまな世界感を作り上げることができる天才。だから私から特に注文をつけることはないし、安心して彼にクリエイティブ面を任せることができる。

WWD:ニコロから見た「ロートル ショーズ」はどんなブランド?

ニコロ・ベレッタ「ロートル ショーズ」クリエイティブ・ディレクター(以下、ニコロ):美しい製品を適切な価格で作っていくことを目指しているブランド。生産背景もしっかりしているから、多くの人たちに納得感のある価格で高品質の商品を提供できるということはとても魅力的に感じている。この方針は維持しつつ、今まで明確でなかったブランドのイメージを私が作り上げていく。

WWD:ブランドを自分の手で変えられるというのが引き受けた理由?

ニコロ:新しくブランドにアイデンティティーを与えることができるというのも引き受けた理由の一つではある。シューズの他にウエアやバッグ、革小物にも挑戦できることを楽しみにしているんだ。

WWD:これまでブランドイメージが確立されていなかったというが、新生「ロートル ショーズ」はどんなイメージにしていきたい?

ニコロ:「ロートル ショーズ」はイタリアのブランドだがブランド名はフランス語なんだ。イタリアとフランスのデュアリズムからインスパイアを受けているブランド。多くのインスピレーションをベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)監督の映画「ザ・ドリーマーズ(THE DREAMERS)」から得た。この映画の舞台はフランスだが製作はイタリアという点からもインスピレーション源になった理由だ。また、私たちのブランドがイメージする女性像はいそがしく働く女性。着心地の良さも大事だけどシックでありたい。フレンチシックで洗練されているけど、少しスパイスが利いた感じをイメージしている。

WWD:自身のシューズブランド「ジャンニコ」との両立は難しい?

ニコロ:大変だけどまだ若いから(笑)、エネルギーは十分にあるよ。「ロートル ショーズ」のデザインを考えながら「ジャンニコ」も並行して作っていくと、双方の刺激になってクリエイティブな力が湧いてくる。今後、「ジャンニコ」のアイテムを「ロートル ショーズ」の工場で生産していくからシナジーが生まれると思う。

WWD:自分の中でデザインの差別化をどう図っている?

ニコロ:コンセプトが全く違うから別の仕事としてやれるんだ。「ロートル ショーズ」の方は日常的に使えるシューズ。反対に「ジャンニコ」はよりラグジュアリー的要素が強いから、靴というよりは一つのアートやオブジェのようなイメージだね。私は靴のデザイナーとしていろんなスタイルを持っているつもりだ。

WWD:ウエアをデザインするのは初めて?また、ウエアはシューズをデザインするに当たって違うはある?

ニコロ:ウエアは初めてだ。技術的な部分で言えば、例えばどんな生地があるのかとか、生地の名前や縫製の方法などを学ぶ必要があったし、シューズとウエアでは作法が全く異なるが、どんな人を対象としたウエアをデザインするかというアイデアはすでにあったからあまり難しくはなかった。ウエアをデザインするのは私の夢だったから素直にうれしいよ。

WWD:尊敬するデザイナー、影響を受けたデザイナーは?

ニコロ:インスピレーションの源泉としてはアート作品などもあるけど、人物で言えばイヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)。靴の世界ではマノロ・ブラニクを尊敬している。特にマノロは私の精神的なメンターとも言える人で、幼いときに自分のデザイン画を見せたところ、彼がほめてくれたんだ。そのおかげで今の私があると言っても過言ではないよ。

WWD:CEOとしてブランドをどのように成長させたい?

カーリ:就任してから4カ月で、ブランドのあまり定まっていなかったアイデンティティーの確立やロゴの刷新、新たなSNS施策や新しい百貨店との契約交渉など、たくさんのことを達成できた。より健全によりグローバルに育てていくことが当面の目標。また、ハイブランドのセカンドライン群を競合相手と考えており、それらのブランドと並んだときにファーストチョイスになることを目指す。また、日本市場に関して言えば、主要なセレクトショップで展開していた10年前の規模くらいまで戻していきたいと考えている。それを実現するためにまずはECで日本向けの24時間対応のカスタマーサービスを設けた。また、日本限定でOL向けのエントリー価格のシューズコレクションを展開することなども念頭に置いてパートナーと交渉している。また小売りを先に見据えて、各地の百貨店などでポップアップストアを順次開く。よく“EC限定アイテム”というのがあるが、“ポップアップ限定アイテム”を展開していきたい。

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