名古屋にあるメンズのセレクトショップ、グーフォ(gufo)は、1年に8カ月しか営業しない珍しい店舗だ。営業期間は春夏シーズンが2月末〜6月末、秋冬シーズンが8月末〜12月末で、残りの4カ月は買い付けと休暇に出る。店舗では「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」「ルメール(LEMAIRE)」などのハイエンドブランドから「クレイグ グリーン(CRAIG GREEN)」「マーティン ローズ(MARTINE ROSE)」などの若手ブランドまで取り扱い、シーズン6カ月の予算分の商品を4カ月で売り切るという。なぜこのような形態をとり、どのようにビジネスを成り立たせているのか、同店を一人で切り盛りする泉元浩トーゴ代表に聞いた。
WWD:どのようにグーフォを開いたのか?
泉元浩・代表(以下、泉):私はイタリアのラグジュアリーブランドの販売、店長、バイヤーを経験後、セレクトショップの立ち上げからバイヤーを任せてもらいました。そして、当時一緒に買い付けを担当していた同僚と独立を決め、12年前にグーフォを開きました。現在私が代表で店舗の運営、販売、買い付けを担当し、取締役の同僚は東京を拠点にイタリアブランドのお手伝いをしており、一年の半分はイタリアにいます。
WWD:半年に2カ月間は店をクローズするのはなぜ?
泉:夏季休暇と冬季休暇としてそれぞれ約2カ月休業しています。創業した12年前、2月に店をオープンしたのですが、買い付け額が少なかったこともありすぐに商品が売り切れてしまったんです。当初からミラノとパリのファッション・ウイークでの仕入れもあるので、1〜2週間は休むことを考えていましたが、もう売る商品もないので最初から2カ月休んでみたんです。そこで、同僚と2人で買い付けのついでに、地中海のエルバ島で休暇を楽しみました。それから6カ月の予算設定を4カ月で売り切るように考えるようになりました。
WWD:休業する2カ月間はどのように過ごしている?
泉:2カ月間ただ休んでいるわけではありません。ミラノとパリ、東京の展示会も回り、充電期間として年に2回は旅行をするようにしています。その体験を接客にも生かすことができるんです。
WWD:旅行をどのように接客に生かしているのか?
泉:旅行の情報をお客さまに頼られることが多いです。イタリアに行くとしたら、オススメのレストランや美術館をお伝えできますし、旅行プランを立てることもできます。それは大手旅行会社ではできない付加価値ですね。もちろん手数料はいただきませんよ(笑)。今、服のことはウェブで何でも検索でき、SNSの情報も溢れています。販売スタッフのセンスや感性も大事ですが、経験値が重要になっていると思います。
WWD:接客スタイルは?
泉:顧客に関して僕は聞き手で、話をよく聞くようにしています。いろんなタイプのお客さまがいらっしゃるので、ご家族のこと、女性のこと、旅行のことについてまで対応できるよう、普段から知っておかなければいけないことが多いです。また、接客を受けるのが苦手な方もいらっしゃいますが、お店に入ってくることは人の家に入ってくることと一緒だと思います。「今日何かお探しですか?」とあいさつするのは当然のこと。買っていただかなくても、“今日グーフォに行ってよかったな”って思ってもらえるように心掛けています。
WWD:新規顧客を増やすための施策は?
泉:SNSですが、今はほとんどインスタグラムでの発信に力を入れています。ただ服の画像をアップするのではなく、必ず音楽やアート、旅行、飲食など服以外のネタも交ぜて、洋服を着てどう楽しむかも一緒に伝えたいと思っています。服を撮影する場合には、友人をモデルに撮影しています。
WWD:顧客はどのような人が多いのか?
泉:メーンで200人ほどいらっしゃって、中には経営者という方も多いです。ランウエイをチェックしているような“ファッションオタク”の方は少ないですね。顧客はシーズン立ち上がりにお越しいただき、僕とお話ししながら「このシーズンはこれがオススメです」という感じでサロン的な接客が多い。お客さまが過去に購入したものも覚えていますので、それらの組み合わせも考えながら提案しています。立ち上がりのときにはアポイント制で1日3〜4組のお客さまに限らせていただくこともあり、1人平均1時間半ほど接客し、客単価は一度に30万〜150万円くらいになります。それからシーズン中に何度か買い足しの来店があります。
WWD:グーフォの買い付けポイントは?
泉:正直、今どこのお店に行っても同じようなブランドが並んでいるので、より個性的なセレクトを心がけています。自分たちの感性と今の素直な気分を信じていつも買い付けるようにしている。一年に4カ月間で店閉めていますが、プロパー消化率は8割くらいです。なので、中には消化率100%のブランドもいくつもあります。今、ストリートが強い時代ですが、逆にストリートをあまり意識しないのが今の僕らの気分。それがグーフォらしさかもしれません。
WWD:オンラインショップでの販売は?
泉:前は行っていたのですが、今僕一人で販売担当をしていることもあって手が回らず、やめてしまいました。立ち上がりの1カ月で在庫の3分の1が店頭で消化されてしまうので、オンラインで在庫を更新できないという理由もありますし、以前はECを見たお客さまが「今のグーフォの品ぞろえはこうなっているのか」と、ウェブ上に出ている在庫が全てではないのに、そう思い込まれてしまうこともあって。ECをやめたら固定客の来店頻度が増えました。一方で通販は行っています。インスタグラムでは掲載した商品のブランド名、アイテム名、税込価格を必ず明記していて、お店に見にこられる方も入れば、問い合わせをくださり通販で購入される方もいます。
WWD:今後、注力していくことは?
泉:店を拡大しようとは考えていません。自分たちの目の届くところで得意なことを続けていきたい。まだ漠然ですが、服だけでなくインテリアや食、アートなど衣食住に関わることができたら面白いと思っています。