シーズンごとのコレクション発表やファッションショーを行わず、“異端児”と呼ばれながらも2013年の立ち上げからラグジュアリー・ストリート界をけん引してきた「フィアー オブ ゴッド(FEAR OF GOD以下、FOG)」を手掛けるジェリー・ロレンゾ(Jerry Lorenzo)。カルト的人気を誇る彼は、先日発売した「ナイキ(NIKE)」とのコラボコレクションでも「FOG」らしさと、スポーツブランドである「ナイキ」のDNAを活かした“機能性”を共存させ、1万5000〜6万5000円というハイエンドな価格帯ながら多くのアイテムを見事完売させた。そんな彼に、「ナイキ」との協業のきっかけから、パイオニアとしてリードしてきたラグジュアリー・ストリート界の今、そしてその先の未来までを語ってもらった。
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WWD:「ナイキ」とのコラボに至った経緯は?
ロレンゾ:2年半~3年前に、「ナイキ」と「FOG」がいかに協働できるかを話す機会があったんだ。トレーニングやアメリカンフットボール、ベースボールでコラボをするも話もあったんだが、バスケットボールの話になったときに俺の気持ちがとにかく盛り上がったんだ。それで「ナイキ」も、俺とならバスケをテーマにいいコレクションが作れると判断したんだと思う。
WWD:幼い頃からNBAを観たり、実際にプレーしたりと慣れ親しんでいたことは、今回のコラボに関係していますか?
ロレンゾ:ああ、関係しているさ。高校生の頃の俺のスタイルは、スニーカーありきというか、バッシュありきだったんだ。コートでプレーしているときも普段生活しているときも、いつだってバッシュを履いていた。バスケは俺のスタイルの基本的な要素だったんだ。
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WWD:バッシュというと“エア ジョーダン(AIR JORDAN)”シリーズのイメージが強いですが、今回は“エア マックス(AIR MAX)”をベースとしていますね。
ロレンゾ:「ジョーダン」が「ナイキ」とは別の会社だからっていうのもあるさ(笑)。でも「ジョーダン」よりも「ナイキ」の方が、俺の視点を生かした自由度が高いバッシュを製作することができると思ったんだよ。
WWD:今のトレンドの一つである“機能性”をこのバッシュでも表現しましたか?
ロレンゾ:もちろん。ラグジュアリー・スニーカーはもう「FOG」でイタリアに行ったときに作ったから、今回はスタイルやプロポーションだけじゃなくて、パフォーマンスの高さやバッシュであるという“機能性”にフォーカスしてこだわりたかったんだ。
WWD:実際にNBA選手が履いて試合に出場しているのも、“機能性”が高いからこそですね。
ロレンゾ:そういうこと!ちなみにシュータンが後ろについているところが気に入っているよ。
WWD:普通は前にありますが……?
ロレンゾ:そこが面白いと思って(笑)。でもケージ(固い部分)があるから、従来のモデルよりもしっかりと足がサポートされる。あとはエアバッグが中に二重に入っていて、とてもよく弾むようになっているんだ。君(177cm)だってダンクできるぐらいよく飛べるぜ!(笑)。
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WWD:このバッシュは、発売の2〜3カ月前にNBA選手が履くことで、リークより先に正式にお披露目することに成功していましたが、その理由は?
ロレンゾ:いつリークされるかと思って眠れない夜を過ごしたくなかったから、リークされるより前に発表したんだ(笑)。とにかく、リークなしで発表したかったから出来上がってすぐに(NBA選手に履かせることを)実行したよ。
WWD:ウエアは「FOG」よりもシンプルな印象ですが、スポーツウエアという点を意識したからでしょうか?
ロレンゾ:いや、そういうわけではない。確かにグラフィックは少ないかもしれないけど、個人的にはシンプルだと思っていない。バッシュに合うものを作りたかったんだが、とにかくバッシュが派手で主張が強いから、ウエアはデザイン性よりもシルエットを重視したんだ。ウエアを90年代のビンテージ風にしてバッシュを未来的な感じにすることで、それぞれが補完し合っていい感じに仕上がるように心掛けた。
WWD:今回のコレクションは「ナイキ」の中でもかなりハイエンドです。過去のインタビューで「価格を下げるために品質を犠牲にすることはしない」とおっしゃっていましたが、やはり意識したのでしょうか?
ロレンゾ:俺はデザイナーとしてはまだまだ新人だから、頭の中にある中で最高のアイデアを形にしなくちゃいけないと思っている。そうなると妥協はできない。常にできる限り最高なモノを作りたくて、今回はオフコートでもオンコートでも着れるものを作りたかったんだ。ただ、まだ妥協できるほど器用にできないってのもあるけどな(笑)。
WWD:実際に「ナイキ」と協業して、これまでの「ナイキ」のイメージと違いはありましたか?
ロレンゾ:同じだったよ。小さいときから「ナイキ」に憧れを抱いていて、製品やストーリーテリングはもちろん、「ナイキ」の“顔”であるマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)やアンドレ・アガシ(Andre Agassi、元男子プロテニス選手)らアスリートのことを尊敬している。俺はアスリートたちにも感情的にすごく強い結びつきを感じていて、自分のスタイルや人生に対する考え方、スポーツに対する姿勢など、「ナイキ」から多くの影響を受けて育ったんだ。