英紳士服テーラーでクチュールブランドの「ハーディ・エイミス(HARDY AMIES)」が破産を申請し、知的財産権を含めた英国内事業の買い手を探している。売上高はおよそ400万ポンド(約5億4800万円)と見られているが、最近は損失が続くなど業績が低迷していた。同ブランドは2008年にも破産しており、香港の大手商社リー&フォン(LI & FUNG)傘下の投資会社フォン・キャピタル(FUNG CAPITAL)が同ブランドのライセンス契約やサヴィルローにある店舗のリース契約なども含めて買収している。なお、フォン・キャピタルのコメントは得られなかった。
「ハーディ・エイミス」は、35年近く英女王エリザベス2世のドレスメーカーを務め、ロイヤルワラント(王室御用達証)を授与されている。また、故マーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher)元英首相や故ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)元米大統領など、顧客には世界的な政治家やセレブリティーも多い。映画「2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)」では衣装デザインを担当している。12年にはロンドン・メンズ・ファッション・ウイークに参加し、米百貨店ブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE’S)でセカンドラインの販売を開始。14年にサヴィルローに約350平方メートルの旗艦店をオープンしたが、ハイエンドなオーダーメード紳士服自体が衰退していることや、魅力的な買い物体験を消費者に提供できなかったことなどにより苦戦していた。
今回の破産申請は、「ハーディ・エイミス」の英国内事業であるサヴィルローの1店舗と自社ECサイトが対象であり、英国外事業は影響を受けない。また、同ブランドの創業者であるハーディ・エイミスによるデザインや日記などの貴重なアーカイブに対する入札も募られている。管財人である英会計会社メンジーズ(MENZIES)は、「損失を出しているものの、『ハーディ・エイミス』は長い歴史を持っており、オートクチュールの世界で尊敬されているブランドだ。存続に値するので、買い手候補と前向きな交渉ができることを期待している」と語った。