2016年春夏のヴィジュアル
「リヴィエラ(RIVIERAS)」は2009年夏にフランス・パリで設立されたスリッポンブランドだ。1型のみながら、カジュアルすぎないモダンな面構えのデザインと、カラー&素材バリエーションを用意し、世界40カ国800店舗に販路を持つ。価格帯が1万円前後であることも成功した理由だろう。
創業者はデザイナー兼クリエイティブ・ディレクターのダン・アンザラグと、ダンのいとこでコミュニケーション&マーケティングディレクターのファブリッツィオ・カルヴェドュだ。1型3色を用意したデビューコレクションは、「リヴィエラ」のショールーム で販売したほか、「クリストフ ルメール(CHRISTOPHE LEMAIRE)」のためにスペシャルエディションを制作し、同ショップで販売した。転機が訪れたのは1年後の2010年の夏。5色のクラシックカラーと10°、20°、30°の3つのスタイルを“クラシックコレクション”としてローンチした。「10°は10℃、20°は20℃、30°は30℃の意味。気温に適した通気性の素材を用いて、快適な履き心地を提供している」とファブリッツィオ。コレットやオープニングセレモニー、ドーバーストリートマーケット、ル・ボン・マルシェといった有力店が買い付けた。日本では、11年春夏からアマングループが正規代理店になった。
次ページ:ポイントは“あるようでなかったキチンと感のあるスリッポン”▶
READ MORE 1 / 3
“あるようでなかったキチンと感のあるスリッポンを”
「メンズシューズってカチっとしたローファーやモカシンなどオーセンティックなものか、あるいは『ヴァンズ』や『コンバース』などのカジュアルなものしかなかった。その中間がなかった。リラックスしているけどシック、そういう靴を作ろうと思った」とダン。「コンセプトの“good for leisure”(レジャーに行くためのもの)は、仕事する日もレジャーに行くように楽しんで欲しいと思って。俺たちみたいにね(笑)」と二人。
ブランド名の「リヴィエラ」は、南仏のリゾート地リヴィエラから。「イメージしたのは1960年代のリヴィエラ。シックな場所でセレブがレジャーに行く場所だった」とダン。デザインは、1950年代のスペインのエスパドリーユがベースになっている。「スペイン人でさえ、見向きもしなかった古めかしくて名もないモデルだったんだ。そこに自分たちのヴィジョンを載せてアップデートした」と続ける。「高品質なものを作るためにスペインで工場を探すところから始まったよ」とファブリッツィオ。スリッポンはスリッポンでも、ヒールがあるデザインが特徴で、「ヒールがあると少しシックさやクラシック感が出るだろう?」。
次ページ:目指すのは“ロゼワインみたいなブランド”▶
READ MORE 2 / 3
“俺たちはロゼワインみたいなブランドになりたい”
東京で行ったお茶会のときのふたり。ダン・アンザラグ=デザイナー兼クリエイティブ・ディレクター(左)と、ファブリッツィオ・カルヴェドュ=コミュニケーション&マーケティングディレクター
彼らに会ったのは、日差しが強く初夏の陽気の気持ちが良い4月の昼下がりだった。「一緒にお茶しましょう。お茶を飲みながらブランドについてカジュアルにお話できたら」という誘いだった。ロゼワインを口にしながら、冗談を織り交ぜながら話す“ユルさ”はとても居心地が良い。「僕たちは一年中ロゼワインしか飲まないんだ(笑)。なぜって?夏を感じることができるから。フランスでは、ロゼは夏によく飲むものとして人気でしょ。ブランドのルーツである南仏の代名詞の一つでもあるしね。僕たちはロゼワインみたいなブランドになりたい。白ワインや赤ワインってソーシャルな印象が強いけれど、ロゼはもう少しカジュアルで一般的だから」とダン。「君も飲むかい?」。
現在、1年で50万足を売り上げる。今年1月には、アンクルブーツスタイルの“モントントゥ”を発表。さらに「レジャーに必要な」スカーフやワインオープナーに加え、シューズボックスやレザーソール、トートバッグやクラッチバッグなども提案する予定で、コレクションの幅を少しずつ広げていく意向だ。「俺たちが目指すのはシューズブランドではない。ライフスタイルを提案したい」と二人。
次ページ:日本に旗艦店を出す予定は?▶
READ MORE 3 / 3
“2年後に旗艦店を20店舗に。日本でも路面店を持ちたい”
ジャカルタのショップの様子
現在、ジャカルタ、ソウル、スペイン・イビザ島などに旗艦店を持つ。今月、中国・上海とカリブ海に浮かぶフランス領の島、サン・バルテルミーに路面店を開き、旗艦店は6店舗になる。「上海の店は3カ月に1度コンセプトを変える予定で、その度、外観も変わる。外観のイメージがそのまま店内に並ぶ商品につながるユニークなショップになる。SNS映えすると思うよ」とファブリッツィオ。開店時は、フランス国旗のトリコロールカラーをキーに見せるという。モール中心の上海で、路面店は極めてめずらしい。「場所はなかなか見つからなくってね。中心部よりは少し離れている。それでも路面店で僕たちの世界を表現したかった。いつか日本でも路面店を持ちたい。今後リテールを強化し2年後には20店舗にしたい」。
全仏オープンテニス「ローラン・ギャロス」の2016年エディション 9000円
程良い“ユルさ”がありながら、人を巻き込み、さまざまな国でパートナーを見つけビジネスを拡大する押さえるべきところを押さえたビジネスが面白い。「ビジネスを面白いとは思ってないんだ。見ての通り、僕たちはビジネスマンぽくないでしょう?(笑)」とファブリッツィオ。ダンは、「新しいものを生み出すことが面白いし、良いモノを提案することにこだわっている。もともと自分たちが履きたいもの、友達に履いてほしいものを作った。俺は仕事が好きだし働き者だと思う。でも、強制されるとストレスを感じる。ニューヨークの「カルバン・クライン」にいた頃は、朝から夜中まで働かされていたよ。それでも商品になったのは10%程度。でもミラノで「スウォッチ」でデザインを手掛けたときは11時に出社して12時にはランチ。夕方5時になるとパブにいた(笑)。でもデザインの70%くらいは採用されていた。最近思うのは、何事もバランスが大切ってこと」と話す。
今月には全仏オープンテニス「ローラン・ギャロス」の2016年エディションをローンチする。「リヴィエラ」の代表的なスタイルであるネイビーブルーとホワイトのコットンメッシュ素材の“クラシック30°”をベースに、全仏オープンのロゴマークをほうふつとさせるバイカーラーのストライプのバンドをデザインした。日本ではアスティーレ ハウスとエストネーションで販売する。