2018年10月に経営破綻した米小売り大手シアーズ ホールディングス(SEARS HOLDINGS以下、シアーズ)の入札が1月15日に非公開で行われ、エドワード・S・ランパート(Edward S. Lampert)=シアーズ会長および同会長が率いるヘッジファンドのESLインベストメンツ(ESL INVESTMENTS)がおよそ52億ドル(約5616億円)で落札したと、複数の米メディアが伝えている。買収の成立には米破産裁判所による承認が必要だが、傘下の百貨店シアーズ(SEARS)とディスカウントストアのKマート(KMART)の営業継続に向けて事態が前進した。買収が承認されれば、425店舗の大半の営業継続および約5万人の雇用が守られる見通しだ。
2018年12月、シアーズの最大株主であり最大債権者のランパート会長は44億ドル(約4752億円)での買収を提示したが、債権や破産に関する費用として不十分だと破産裁判所がこれを却下したため、今回は提示額を引き上げたと見られている。入札に先立ち、ランパート会長とESLインベストメンツは、「当社の提示額は、清算などの選択肢と比較してステークホルダーにはるかに多くの価値をもたらすものであり、シアーズや関連会社、そしてコミュニティーにとって最善策であると確信している」と1月初めにコメントした。それに対して清算人は、シアーズを清算して資産を売却したほうが債権団の資金を回収できると主張していた。
126年の歴史があり、かつては米国最大の百貨店であったシアーズは、最盛期の06年には3770店を運営しておよそ530億ドル(約5兆7200億円)の売り上げがあったが、デジタル化が遅れるなど消費者ニーズをつかみきれずに業績が悪化。18年10月に破産を申請した時点での店舗数は700弱で、その後もシアーズとKマートを合わせて約260店を閉鎖した。破産を申請した際、ランパート会長は再建策の一環として最高経営責任者の職を辞したが、会長職にはとどまった。シアーズが10年近く赤字経営であることについて、店舗への投資不足など、同氏の舵取りが各方面から批判されている。