メンズファッションの祭典「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO以下、ピッティ)」の見物(みもの)といえば、歴史とテクニックに裏打ちされたクラシコイタリアの奥深い世界……、ではなくピンクやイエロー、グリーンのスーツで決めた“ピッティくん”ではないでしょうか。「コスプレーヤー」「サクラ」とも形容され、目的なく(も見え!)たむろする彼らは、今や「ピッティ」の風物詩。でも、ちょっと待って。彼らはどこから来ているの?目的は?年齢は?職業は?……10年来「ピッティ」に通うジャーナリストたちも、実はよく分からない彼らの生態に迫ります!
まず声を掛けたのは、陽気にはしゃいでいた4人組。聞けば国籍も職業もバラバラで、左からオーストラリアのテーラーショップのオーナー、フランスのインフルエンサー、ファイナンスの仕事をしているナミビア人と南アフリカ人。「ピッティ」で知り合い、年に2回顔を合わせるうちに今ではファミリーのような存在になったとか。「普段から連絡を取り合い、ファッション関連の仕事でコラボレーションもしているよ」。4人ともサングラスは提供されたものだとか。
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お次は、ピンクがキーカラーの彼。あどけなさが残るので年を尋ねると、なんと地元の高校生!3年前、15歳のときに初めて訪れた「ピッティ」で、彼の中の何かが爆発。その後、自慢のファッションで「ピッティ」を訪れたところスカウトされ、今では複数のファッションブランドがPRのために商品を提供。仕事として朝10時から会場を“うろうろしている”んですって。「『ピッティ』期間外は、しっかり勉強しているよ。ブロガーとしても活動しているんだ」。
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オレンジのスーツに身を包んだ彼の職業にも驚かされました。だって銀行員なんですもの。もともとのファッション好きが高じて、数年前から休暇を取ってはアドリア海沿いの街リミニから車で「ピッティ」に通っているとか。服は全て自前で、4日間異なる着こなしで会場内を歩き回っていました。「『ピッティ』は、年に2回の非日常体験。まじめに働いて、稼ぎはほとんど服に投資しているよ」。なるほど、コートの襟元はしっかりミンクでした……。
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女の子にも聞きました。フィレンツェのファッション専門学校ポリモーダでアートディレクションとデザインを学ぶカナダ人の彼女も、ブランドから提供された服を着てPR活動。この日は午前中にファッション撮影を終えて会場入り。「ギャラはないけれど、服は全てプレゼントされるから、学生の私にとってはありがたいの」。
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最後は、ザ“ピッティくん”なグリーン、イエロー、オレンジコートの3人組。ポルトガルブランド「オフィチーナ’38(OFFICINA’38)」のクルーで、他にコンサルタントやインフルエンサーとしても活動しているそう。「昼ごろ来場して夕方まで会場内を歩き回り、ブランドをアピールしているよ」。コートの裏地は、ど派手なシルクプリントでした。
“ピッティくん”って皆スカしているし、何を考えてるだろう?といささか警戒していたところもあったんですが、4日間いろんな人に声を掛けて、ずいぶんと印象が変わりました。当たり前ですが、彼らにも「ピッティ」以外の日常があり、「ピッティ」を祭りととらえてストレス発散したりアピールしたり。短い間ですが声を交わしたことで、ぐっと親近感がわいたし、陰ながら彼らの活動を応援しよう!なんて思ったのでした。