防弾少年団(BTS)やBLACKPINK、TWICEをはじめとするK-POPアイドルの他、コ・ジュンヒ(Koh Joon Hee)、ハン・イェスル(Han Ye Seul)、ジェシカ(Jessica)、イ・ジュヨン(Lee Joo Yeon)など多くの韓国セレブリティーのスタイリングを担当するカリスマスタイリストのキム・ジヘ(Kim Ji Hye)。彼女がスタイリングをするとその人が必ずブレイクすると言われるほどの影響力の持ち主で、芸能人から“先生”と呼ばれる彼女が手掛けるブランド「インスタントファンク(INSTANTFUNK)」が2月24日までギンザ シックス(GINZA SIX)でポップアップイベントを開催中だ。それに合わせて来日したキム=デザイナーにブランドのコンセプトやスタイリストの仕事について聞いた。
WWD:「インスタントファンク」のコンセプトは?
キム・ジヘ(以下、キム):入れ替わりが激しく、速いペースで流れる現代社会の意味を込めた“INSTANT(インスタント)”と、1970〜80年代に流行ったファンク音楽の“FUNK(ファンク)”を掛け合わせたのが「インスタントファンク」。私はロンドンの音楽やファッションといったカルチャーが好きなので、洋服のテイストはロンドンのビンテージっぽいものを取り入れながら、今の時代に合わせたモダンな要素をミックスしています。スタイリングの仕事も、常にロンドンベースのファッションを取り入れていますね。
WWD:ブランドを立ち上げたきっかけは?
キム:私の本業はスタイリスト。さまざまなブランドと出合い、洋服を見てきて、「ディテールがもっとこうだったらいいのに」「シルエットがオーバーサイズだったらすてきなのに」など、市場に出ている服に違和感を感じることが多くありました。そういう思いが増える中で、自分で服を作った方が満足いく服に出合えると思ったのがきっかけでブランドをスタートしました。
WWD:2018-19年秋冬のコンセプトは?
キム:クリエイションの中心には必ずロンドンのカルチャーがあります。今季は、そんなロンドンから車で約2時間離れたマーゲートという町がテーマ。マーゲートは現地の人が集う町で、観光地としてはあまり栄えていません。だからこそイギリスのカルチャーが色濃く出ているところでもあり、大きなインスピレーションを受けました。また、ビーチがある町なのですが、ロンドンで海を思い浮かべる人はあまりいないと思います。秋冬なのにビーチがある土地からインスパイアされるのも面白いのではと思い、マーゲートをテーマにしました。
WWD:スタイリストになったきっかけは?
キム:昔から人形に洋服を着せることが好きで、自然とスタイリストの道を選びました。純粋にファッションが好きなので、スタイリングはお遊びの延長上にあるといっても言い過ぎではないかもしれません(笑)。
WWD:スタイリングの仕事内容は?
キム:芸能人の専属スタイリストとして活動することが多いです。特に女優が多く、コ・ジュンヒやハン・イェスル、ジェシカ、イ・ジュヨンの専属としてスタイリングさせていただいています。彼女たちがテレビや雑誌に登場するときは私が洋服を選んでいます。
WWD:K-POPアイドルのスタイリングも多い。K-POPは音楽だけでなく、ファッションやメイクも世界中で人気だが、アイドルをスタイリングするときにこだわっていることは?
キム:アイドルは韓国でも日本でもステージに立つ人たちなので、カリスマ性を出すようなスタイリングを意識しています。K-POPアイドルは普段は着られないけど、ステージ上で彼らが輝くような洋服を着せています。日本のアイドルはキュートなコーディネートが多い印象ですが、私はかっこよく、カリスマ性が出るようにシックなものを選ぶことが多いです。
WWD:スタイリングにおいての鉄則は?
キム:特にありません(笑)!その人その人の魅力があるので、スタイリングしてかわいかったりかっこよかったりするものを選ぶだけです。「こうでなければならない」といったルールは作っていません。ソウルの狎鴎亭(アックジョン)にある旗艦店の地下は実はスタリイング部屋になっていて、230平方メートルほどあるスペースに何千着も洋服が並んでいます。そこで芸能人に来てもらってスタイリングしています。
WWD:「インスタントファンク」の洋服作りは?
キム:OEM生産などはせず、全て自社のオリジナル商品になります。社内にデザイナーとパタンナーがいて、私はディレクターとして洋服を作っています。
WWD:人気のアイテムは?
キム:一番人気は“ロングムスタン”コート。多くの芸能人にも着ていただいています。毎シーズン出している定番品で、今季はムートンとスエードのリバーシブルタイプを出しています。
WWD:メイクアップもラインアップしている。スタートしたきっかけは?
キム:もともとコスメブランドを立ち上げようと思ってスタートしたわけではなく、あくまでも洋服の延長線上にあるものとしてリップを手掛けました。そのためリップは、「このコーディネートにはこの色」と、必ず洋服と絡めた提案をしています。次は「このコーディネートにはこの香り」というように、フレグランスをはじめとする他アイテムも考えています。
WWD:ポップアップにギンザ シックスを選んだ理由は?
キム:昨年伊勢丹新宿本店と阪急うめだ本店でもポップアップを開催したのですが、ありがたいことにとても反響がありました。ギンザ シックスは従来の百貨店とは違ってゆったりしたスペースで洋服を見せるラグジュアリーな施設で、日本では一番好きなショッピングスポットです。ここでいつかポップアップを出したいと以前から思っていました。
WWD:日本にはよく訪れる?
キム:よく来ます!日本に来ると原宿、渋谷、青山、代官山、銀座エリアをひたすら歩き回っています。日本のストリートファッションをはじめ街中で見る人のファッションはとてもユニークだと思います。トレンドにとらわれず、自分が好きなものを堂々と着ていて、だから日本にはたくさんのファッションのスタイルが存在すると思います。それは自分のスタイリングのインスピレーションにもなっていますし、アイデアを韓国に持ち帰って洋服作りにも生かしています。
WWD:今後の目標は?
キム:ブランドを立ち上げて3年ほどたち、旗艦店をソウルに構えるほどに成長しました。昨年は韓国に近い日本に進出することができました。次はパリで洋服を発表したいですね。トレードショーに出展したり、いずれはショーなども発表できたらと思っています。