ネット通販が勢いを増しているが、それに伴い返品量も増加する。ミレニアル世代などの若年層を中心に、サステイナビリティーや環境保護に敏感な消費者が増える中、企業がそうした返品をどのように扱っているのかが注目を集めている。
米ユーチューバーのサフィア・ナイガード(Safiya Nygaard)が発表した動画「アマゾン再販売品ボックスを買ってみた(I Bought a Box of Amazon Customer Returns)」は、1500ドル(約16万3500円)で購入した“返品の再販売詰め合わせセット”を開けて見せていく様子が映されており、1月24日現在で約1285万回も視聴されている。
返品された物の多くは回収業者にまとめて払い下げられ、再販売や寄付、もしくは廃棄の道をたどる。トービン・ムーア(Tobin Moore)=オプトロ(OPTORO)創業者兼最高経営責任者(CEO)によれば、2018年のホリデーシーズンに買われた商品のうち940億ドル(約10兆円)相当が返品され、およそ25%の商品が廃棄物になるという。同社はECサイトの返品や売れ残り商品を扱う、新世代の物流会社だ。従来は回収した品物の状態を手作業で仕分けする必要があったが、同社はデータ分析やAI(人工知能)によって作業工程の多くを自動化し、効率的な処理を実現。仕分けられた品物は最適なルートで再販売されるため、小売店はより多くの金額を回収することができる。またオプトロは自社でも再販売サイトを運営しているため、消費者は安心して再販売品を購入でき、社会全体の廃棄物が減るという好循環だとムーア創業者兼CEOは説明する。「サステイナビリティーは一時的な流行ではない。今後さらに重視される分野なので、事業の一部として考えるべきだ」。
ハイブランドの中では、「バーバリー(BURBERRY)」がブランド保護のため売れ残り製品を焼却処分していたことが18年に発覚し、批判が相次いだ。現代の消費者は、サステイナビリティーに反することに敏感に反応する。結果として、「バーバリー」は今後そうした焼却処分は廃止すると発表するにいたった。
興味深いデータがある。古着をオンラインで販売するスレッドアップ(THREDUP)の18年アパレル再販売レポートによれば、18~24歳の若者は洋服を1~5回着用して捨てることが多く、49%が衝動買いをすると答えたが、その一方で77%は環境保護に熱心なブランドから買うことを好むという。
こうしたことを踏まえてか、新製品は以前よりライフサイクルを意識して製造されている。より少ない資源を使い、再生素材が活用されるように設計することで付加価値をつけているのだ。例えば、「アディダス(ADIDAS)」はプラスチック廃棄物から生成した新素材製のシューズを発売し、「パタゴニア(PATAGONIA)」は再生フリース素材のジャケットなどを作っている。こうしたことに加えて、返品や売れ残り品の処分に関する透明性を高めれば、サステイナビリティーに真剣に取り組んでいるブランドとして消費者に認知されるだろう。