ファッション

15万歩、7000枚の結晶 2人のカメラマンに聞いた「スナップレオン」ができるまで

 「レオン(LEON)」(主婦と生活社)の別冊「スナップレオン(Snap LEON)」は年に2回発行され、“リアルでお洒落な着こなし見本帳”をうたう。同誌に掲載する写真の約8割が撮られるという「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO以下、ピッティ)」で、担当カメラマン2人を直撃し、「スナップレオン」の最前線を取材した。

WWD:「スナップレオン」に掲載する「ピッティ」の写真は、2人で全て撮影すると聞いた。一日何回くらいシャッターを切るのか?

マッシ・ニンニ(Massi Ninni以下、ニンニ):私は一日2000枚ほど撮影します。「ピッティ」の会期は4日間ですが、最終日は来場者が極端に減るので、3日間で6000枚ほどの写真を撮る計算です。

WWD:一日2000枚!編集作業にも時間が掛かりそう……。

ニンニ:そうですね。3時間以上掛かります。

藤原悠(以下、藤原):僕は一日に300枚くらいです。

WWD:ニンニさんとは対照的。

藤原:別に手を抜いているわけではありませんよ(笑)。「ピッティ」に通い始めた2013年ごろは3500回くらいシャッターを切っていました。僕は今「ライカ(LEICA)」の“ライカM(TYP240)”を使っていて、被写体を全身で撮る場合、2mくらいの距離が最適なんです。以前は望遠レンズを使っていましたが、「被写体に肉薄したい」という気持ちがあって。連写もできないので、一人2~3枚と“一押し入魂”しています。

ニンニ:私の相棒は「キヤノン(CANON)」の“5Dマーク4”です。望遠レンズを使った “スピード重視”の撮影スタイルですね。

WWD:いくら「ピッティ」がファッショニスタの集まりでも、「レオン」好みの“お洒落オヤジ”を探して追いかけ、2000枚撮影するのは重労働では?

ニンニ:いえ、これは全てのカメラマンに言えることだと思いますが、ファインダーをのぞいている間は何時間でも疲れません。

藤原:えっ、本当ですか?僕は疲れちゃうなぁ……(笑)。僕が「ピッティ」会場で撮影するのは、だいたい朝9、10時から17、18時で、ホテルに戻って編集してから、日によってはショーのバックステージの撮影に向かいます。それが2~3時間くらいなので、全て終わるのは深夜。だから、どんぶりが必需品なんです。

WWD:どんぶり?

藤原:疲れていることもあり夕飯を食べちゃうと眠くなってしまうので、仕事が終わるまでは抜くんです。初日に、フィレンツェ市街で乾麺を買うのがルーティンになっています(笑)。

WWD:華やかな誌面の裏で、涙ぐましい努力だ。

ニンニ:私もカメラを置いた途端に疲れを感じますよ……。私は藤原さんよりちょっと早めの朝8時半から撮り始めて、冬なら16時半くらいまで、夏なら18時までに終わります。光がよくなくなってしまうので。

藤原: 2年前にウェブ(現在の「LEON.JP」)ができてからは、そちらの撮影も担当しています。こちらは即日納品なので、いっそう編集作業が“盛り上がっちゃう”わけです(笑)。

WWD:なかなか過酷な労働環境下の、二人の楽しみとは?

ニンニ:“お洒落オヤジ”を撮ることはシンプルに楽しいです。ここまで彼らが密集するのは、やはり「ピッティ」ならではですから。

WWD:「ピッティ」会場は6万平方メートルと広大だが、お気に入りの撮影場所は?

藤原:会場北側のパビリオン近くは、建物の影の影響もなく光が回っていいですね。逆にメインパビリオンに続く通路は、撮られたがりのコスプレーヤーが多いので避けます。

ニンニ:私は、人の流れと陽の光に合わせて移動することが多いです。

藤原:僕も定点観測だと飽きちゃうので歩きます。だいたい一日2万5000歩くらい。最初のころはブーツで来ていましたが、スニーカーじゃなきゃ足がもげちゃいますね(笑)。

ニンニ:効率だけ考えたら、特定の場所から望遠レンズで狙うのがいいんでしょうが、それだと写真がおもしろくならないですよね。

WWD:「レオン」のスナップを撮る、ということで心掛けていることは?

ニンニ:特にないですね。

藤原:僕も「レオンだから」と意識することはないです。

WWD:つまり「レオン」の求めるものが分かっている?

ニンニ:そうだといいんですけど(笑)。

藤原:もともと年配の人を撮ろうという意識はあまりなかったのと、「LEON.JP」が始まったことで、本誌に比べて若い人を撮ることも増えました。

ニンニ:いろんな人に出会い、いろんな写真を撮れるのは本当に楽しいです。

藤原:僕は会場の外で撮影することもあるんですが、フィレンツェは街全体が世界遺産だから、どこで撮っても絵になるんですよね。

WWD:「レオン」編集部に聞いたところ、石井洋・新「LEON.JP」編集長のもとスナップコンテンツも刷新を図っていて、今回初めて動画専門のカメラマンを起用したとか。二人の写真も掲載される4月号の発売日である2月25日の前に「LEON.JP」で公開するらしい。

ニンニ&藤原:そうなんですよ。スチール班も、ますますがんばらなくては!とふんどしを締め直したところです。

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