中国の国家統計局が21日に発表した2018年の国内総生産(GDP)は前年比6.6%増にとどまり、天安門事件翌年の1990年以来28年ぶりの低水準となった。しかし米市場調査会社イーマーケター(EMARKETER)によれば、成長が減速しながらも、中国は2019年中にアメリカを抜いて世界1位の小売市場となることが予想されるという。
同社は、19年における中国の小売業界の売上高は前年比7.5%増の5兆6400億ドル(約614兆円)に達し、アメリカは同3.3%増の5兆5300億ドル(約586兆円)になると予想。経済全体での成長率は米中共に鈍化しているが、中国における18年12月の小売業界の売上高は前年同月比8.2%増となり、前月の8.1%から若干上向いている。
中国の調査およびマーケティング会社で、外国企業の中国進出を支援しているチャイナスキニー(CHINA SKINNY)のマーク・スキナー(Mark Skinner)=マネジング・ディレクターは、「中国経済は確かに減速しているが、それは消費者動向の読みを外したブランドの便利な言い訳でもある。中国は巨大な市場なので、成長が多少緩やかになっても事業機会は豊富にあり、大成功を収めているブランドも多い」と語る。同氏によれば、「ナイキ(NIKE)」は18年9~11月期の中国市場での売り上げが前年同期比31%増となり、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」も同じく2ケタ成長となった。「ランニングやスポーツ人口の増加に伴い、『ナイキ』などのフィットネス関連が業績を伸ばしている他、日用消費財も強い。中国市場をより深く理解している地元ブランドも成長している」という。
中国の小売業において大きな成長要因となっているのがECだ。13年には売上高が3140億ドル(約34兆円)に上り、2550億ドル(約27兆円)のアメリカを抜いて首位に立った。それ以降も独走状態で、イーマーケターによれば19年は中国における小売り売上高の35.3%がECによるものになり、世界中のEC売上高の55.8%を同国が占めることになるという。なお、22年にはこれが63%に達すると同社は見ている。スキナー=マネジング・ディレクターは、「中国のECは他市場のはるか先を行っており、今後もその差は広がっていくだろう。中国はプライバシーに関する規制が他国より緩く、一般的に関心も低いため、アリババ(ALIBABA)のようなEC大手は他市場では入手が難しいようなデータも取得している。圧倒的に巨大な市場と、そうして得たビッグデータが組み合わされていることを考えると、他の小売業者が太刀打ちするのは容易ではないだろう」とコメントした。