「メゾン マルジェラ “アーティザナル” デザインド バイ ジョン ガリアーノ(MAISON MARGIELA 'ARTISANAL' DESIGNED BY JOHN GALLIANO)」が2019年春夏オートクチュール・コレクションで、初となるメンズとウィメンズの合同ショーを、パリ11区の本社で開いた。テーマは、退廃的を意味する“デカダンス”。ジョン・ガリアーノ(John Galliano)が現職に就く前から得意としてきたテーマだ。ただし、今回発表したそれは様子が違う。「ジョン・ガリアーノ(JOHN GALLIANO)」時代は、19世紀の詩人ボードレール(Baudelaire)が「パリの憂鬱」の中で娼婦や貧しい芸術家、群衆を通して書いたような “デカダンス”を好んできた。フェミニンな20年代調のバイアスカットのドレスがその象徴だった。
今回、“デカダンス”を題材に見せたのはそれとはまったく違う、若々しくエネルギッシュでジェンダーレスな世界観だ。腕を服の中に隠して前のめりかつ猛スピードで歩くモデルの見た目にメンズとウィメンズの境はなく、ひとつのルックの中に形も柄も色々なアイデアがギュッと詰め込まれている。どうやらガリアーノは、2019年における“デカダンス”はグローバル&デジタル化が進んだ社会のひずみに生まれる、ととらえたようだ。一見するとフラットになってゆく社会。しかしその奥には人間的なゴチャゴチャした感情があり、それを引き出すことが「マルジェラ“アーティザナル”」流のグラマラスの追求という訳だ。
あふれる情報やそこから生まれる感情はグラフィティー風の柄となり、ジャカードやダッチェスサテンのプリントで表現された。同じ柄は、会場の床や壁、天井にも取り入れられさらにミラーに反射するため写真に撮ると服が情報の中に埋もれているように映る。
洋服の構造を露わにする“デコルティケ”と呼ぶ技法を随所に取り入れ、コートがスカートやケープに変わるなど、だまし絵のようなアイテムも多いことから、どこからどこまでが何のアイテムなのかがあいまいだ。メンズコートをカットしてスカートやケープに変形するアイデアは、“リバース・ドレッシング”と呼びボトムスをトップスとして採用するケースもある。当たり前と思われている見方を勢いよく変えてみよう、そんなガリアーノからのメッセージが伝わってくる。