近年、オートクチュールの勢いが減退する中、オートクチュール化するプレタポルテ「プレタクチュール」がその隙間を埋めるようになり、「オートクチュールの終焉」と叫ばれることもあった。しかし、現在は若年層の顧客が増加したことでブランドのオートクチュール部門は2ケタ成長を始めている。ラグジュアリーファッションの頂点、オートクチュールは健在のようだ。
シドニー・トレダノ=クリスチャンディオール クチュール社社長兼最高経営責任者(CEO)は、新たな顧客層により、全体の平均年齢が40代から30代前半へ、約10歳近くも下がっていると話す。「クリスチャン ディオール(CHRISTIAN DIOR)」の売り上げの2ケタ成長は、アジアやアメリカ、南アメリカ、西ヨーロッパのハイテク産業や急成長する新興市場を支える若い顧客によって実現したという。「ドイツでもラグジュアリー商品の需要が伸びている」と話すトレダノ社長兼CEOは、デュッセルドルフとフランクフルトでも店舗のオープンを予定していると発表した。また、ヴェルサイユ宮殿に120名の顧客を招き、最新の高級ジュエリーコレクションを披露した。これまでのクチュールの顧客はプライベートのイベント以外に表に出ることが少なかったが、新たな顧客は芸術イベントやギャラリーのオープニングパーティー、ファッションショーなど、より多くの場でオートクチュールを身に着けているという。
スニーカーを提案し話題となった「シャネル(CHANEL)」の2014年春夏オートクチュールコレクションは、前年比120%という記録的な売り上げになった。14-15年秋冬オートクチュールのショーも予約で即満員となったようだ。ブルーノ・パブロフスキー=シャネル ファッション部門プレジデントは、オートクチュールについて、「さらなる発展の余地がある」とコメントし、コレクションのターゲット層を明確に定め、進んで海外の顧客のもとへも出向く必要性を強調した。
オートクチュールを発表するブランドにとって、パリ・コレクション後に香港や北京、上海でショーを開催することはもはや一般的となった。「シャネル」は再来年までにモスクワとドバイでの開催も予定している。昨年11月に上海で展示会を開いたステファノ・サッシ=ヴァレンティノCEOも、オートクチュール部門で30~40%の売上増を予測しているという。
「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」を発表したジョルジオ・アルマーニも、オートクチュールの顧客像の変化について語っている。「ここ数年、とても面白い現象を目の当たりにしている。以前までクチュールは母親の年代の女性たちに向けて作られるものだった。それが今では、彼女らの娘たちの世代がクチュールの素晴らしさを理解し始めている。美意識が高く、情報も持っており、既存の堅苦しいクチュールの型にはまらない女性たちの支持を得ている」とアルマーニ。ロシアや中国だけでなく、多様な国から顧客が集まる「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ」コレクションは、景気の変動に影響されることのない上顧客に限らず、新興マーケットで富を得た女性たちからの需要も伸びている。