小泉智貴による「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」は2月8日(現地時間)、ニューヨークの「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」のショップでランウエイショーを行う。中学校の美術教師としてキャリアをスタートし、独学で服を作り、東京でコスチュームデザイナーに。レディー・ガガ(Lady Gaga)やYUKI、Perfume、木下優樹菜といったセレブリティーの衣装なども手掛けるという異色の経歴を持つ小泉だが、今回のニューヨークでのショー開催に至るまでの経緯も信じられない話ばかり。しかし、どれも本当に起きたことだ。マーク ジェイコブスのオフィスでショーの準備をする小泉と、ショー実現のキーパーソンであるスタイリスト、ケイティ・グランド(Katie Grand)に、その舞台裏を聞いた。
サクセスストーリーは、数カ月前、ファッション雑誌「ラブ(LOVE)」の編集長でありながら「プラダ(PRADA)」や「ミュウミュウ(MIU MIU)」などのショーのスタイリングも手掛けるケイティがインスタグラム上で小泉の作品に出合ったことで始まった。作品を気に入ったケイティはマヤ・ホーク(Maya Hawke)とカイア・ガーバー(Kaia Gerber)という2人の注目の2世モデルに「トモ コイズミ」の過去の作品をスタイリングし、「ラブ」最新号の撮影を行った。その後小泉がブランドのインスタグラムにアップした着物をヒントにした作品を見てケイティはすぐに、小泉に一緒にショーをしないかとメッセージを送った。ケイティが小泉にメッセージを送ったのは日本時間の朝4時だったが、小泉の合意を得るとすぐにマークのアシスタントのニック・デリエト(Nick DeLieto)に連絡し、彼が全てをまとめた。「だから24時間もせず全ての話がまとまったの。(メイクアップアーティストの)パット・マクグラス(Pat McGrath)から(ヘアスタイリストの)グイド・パラオ(Guido Palau)、(キャスティングディレクターの)アニタ・ビットン(Anita Bitton)、(ファッションサービス・エージェンシーの)KCD、(ショーの靴を提供する)『タビサシモンズ(TABITHA SIMMONS)』まで、みんなが加わった」とケイティは語る。
小泉とはショーの3日前に初めて対面し、電話さえしたことがなかったというが、ケイティは「彼の服には『この人が素敵でないわけがない』と感じさせるエネルギーがあった。絶対に楽しくなると思った」と言い切る。
人気スタイリストのケイティが小泉の作品にどんな可能性を見たのかと聞くと「今のファッションで私が気になっていること近しいと感じた。『ヴァレンティノ』の前々回のボリュームがあるコレクションも面白かった。服自体が大きくなってきているけど、華やかで楽しい雰囲気もあって。だからトモ(小泉)の作品を見たときに、この巨大で楽しい雰囲気を感じたの」と答える。それに加え、業界のベテランのケイティらにとって、小泉と働くことは新鮮なことなようだ。「私たちはこの働き方に慣れて切っていたから。マークやミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)と仕事しているけど、私たちは毎シーズン何が起こるのか、そしてどう進むのかを熟知している。だから今回のように自発的に突然何かをするのはとても楽しい」。
一方で、あっという間に起きたサクセスストーリーと目前に控えたショーについて小泉は「夢より夢みたいだ。全てがあっという間に起きた」と、まだ信じられていない様子。ジョン・ガリアーノ(John Galliano)のデザインを見て育ったという小泉のデザインは、フェミニンでカラフル。ラッフルを何層にも重ねた独特のシルエットのドレスの制作にかけた時間を聞くと「実は4〜5時間くらいで作れるんだ。いつも50種類の色のラッフルをストックしていて、それを組み合わせて色がマッチしているかを見る。これは僕が生み出した方法だけど、もしかしたら伝統的かも。でも、僕の方法は他の人よりちょっと独特だと思う。色を使うのが大好きで、アーティストや絵画にはいつもインスパイアされているよ」と語る。今後については、世界的なシンガーやアーティストのレッドカーペットの衣装を手掛けることもかなえたい夢の一つだとする一方で、オーダー制のウエアにも挑戦したいという。
今回のサクセスストーリーについて、ニューヨークの友人やパートナーはどう反応しているかと聞くと「とても驚いていたけれど、誰も僕がやってることを理解してる人はいないと思う。彼にも全て話したけど、たぶん意味を分かってないと思う」と小泉。その後ろでケイティが「きっとそれが一番ね」と付け加えた。「トモ コイズミ」のショーは8日18時(現地時間)に「マーク ジェイコブス」のマディソンアベニューの店舗で行われる。