米国発ファッション&ライフスタイルストア「フレッド シーガル(FRED SEGAL)」が国内唯一の店舗である代官山店を1月15日に閉店していたことが分かった。フレッドシーガルジャパン(藤田浩行・社長)が米フレッドシーガルからライセンスを受けて運営していた。2016年から本国CEOを務めるアリソン・サメック(Allison Samek)氏は代官山店の閉店理由について、「日本の以前のライセンシーから引き継がれた遺産の店舗だった。私たちは新しい場所で新たにスタートを切ることが最善だと感じたため」と説明する。
代官山店は東急電鉄が開発した代官山ログロードに2015年4月に出店したが、目抜き通りから奥まった場所にあり、来店客数の少なさも指摘されていた。
ただし、日本からの撤退は考えていない。「日本は『フレッド シーガル』ブランドのための重要な市場になると信じている。成長戦略としてeコマース、店舗、プライベートブランドを構築していく」と続ける。今後数カ月は「ポップアップストアを通じてコミュニティーと来訪者にサービスを提供し、eコマースビジネスの成功に軸足を移していく」としている。
日本の顧客や取引先に対しては、「カリフォルニアを象徴するヘリテージブランドである私たちに対して、愛と情熱とを持っていただけていると感じている。1961年以来、『フレッド シーガル』は世界中の人々に、自由に、そして個性的に生きるよう促してきた。今後数年間でこのブランドをこれまでとは違ったやり方で復活させる機会を得てワクワクしている」と語る。
「場所や規模は検討中だが、今後数年以内に旗艦店も出店する予定もある」。日本での経営体制については「ノーコメント」としている。
なお、フレッドシーガルは米本国でも店舗網を再編しており、17年にロサンゼルスのウエストハリウッド(サンセット通り)に新旗艦店をオープンしているが、「米国での事業は順調に進んでいる。サンセットのフラッグシップストアは予想を上回る成果を残している。ラグジュアリーなアイテムだけでなく、音楽や食を含めて、お客さまに独自の体験を提供することに重点を置いている」と説明する。一方で、ECについては、「これまでフォーカスしてこなかったが、今年から来年にかけて、この分野をかなり成長させたい」考え。
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【解説】日本展開に紆余曲折
「フレッド シーガル」の日本展開には紆余曲折があった。
米国ではハリウッドにあるメルローズ店でコミュニティー型モール「フレッド シーガル」のインショップとして展開していた「ロンハーマン(RON HERMAN))」が2009年にサザビーリーグと組んで日本に進出して話題を呼び、“西海岸ブーム”を巻き起こした。「フレッドシーガル」本体に対しても、提携や誘致など日本企業からのラブコールは多かった。
そんな中、ガールズ系アパレルのマークスタイラーが12年11月、日本での商標およびマスターライセンス権、独占輸入販売権を取得。出店場所になかなか合意が得られず、先行投資がかさんだ。マークスタイラー本体の業績の低迷も重なったことから、15年2月、この事業にかかわる子会社の全株式とライセンス使用権を諸戸(もろと)インベストメントと関連会社のセレンディップ・コンサルティングに譲渡。ようやく1号店として代官山店をオープンできたのは、15年9月のことだった。
2号店を16年3月に「マリン アンド ウォーク ヨコハマ(MARINE&WALK YOKOHAMA)」に、3号店を17年3月に関西初の旗艦店として大丸神戸店の旧居留地に出店した。
しかし、業績が想定に届かず、17年8月にはヰノセントがフレッドシーガル本国とライセンス契約を締結。9月にナノ・ユニバース(NANO UNIVERSE)前社長で、ヰノセントの共同経営者兼クリエイティブ・ディレクターだった藤田浩行氏がヰノセントの経営から離れてフレッド シーガル ジャパンを設立し、社長に就任。諸戸から代官山店と神戸店の2店舗と事業を譲り受ける一方で、横浜店は諸戸が閉鎖した。神戸店は新生フレッド シーガル ジャパンが18年9月に閉店していた。
松下久美:「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力小売企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルもカバー。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)