1月19〜21日の3日間、パリ15区にあるポルト・ド・ベルサイユ見本市会場で44カ国から約440ブランドが集結する「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE)」が開催された。毎週末に起こる“黄色いベスト運動”と呼ばれるデモの影響が来場者にも少なからずあったようだが、世界中から集まったバイヤーやプレスで会場は熱気に包まれた。
64%はフランス国外からの来場、日本は9番目
ユーロヴェットが主催するこのランジェリー見本市の会場では、各ブランドが2019年秋冬コレクションを披露する他、トレンドや市場を解説する15のセミナー、1日に3つのショーが開催された。さまざまなパーティーイベントも催され、コミュニケーションの場としても活用されている。同じくユーロヴェット主催による下着や水着の素材の見本市「アンテルフィリエール(Interfiliere)」も同時開催され、下着関連の見本市としては世界一の規模を誇る。来場者の内訳は36%がフランス国内で、64%はフランス国外から。もちろん日本からも百貨店や専門店のバイヤー、インポーター、デザイナー、プレスなどが来場し、国別来場者数ではヨーロッパ各国に次いで9番目だった。
「ランジェリーク」のクリエイティブ・ディレクターをフィーチャー
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会場は下着ブランドだけでなく、ラウンジウエア(部屋着、ナイティー)やレッグウエア、ボディーアクセサリーのブランドも多く、それらを含めたトレンドを紹介する展示や売り場の提案なども設けられる。日本からの出展は「アロマティック カスカ(AROMATIQUE CASUCA)」「カナ・マツナミ(KANA MATSUNAMI)」「プルミエ(PREMIERE)」「ランジェリーク(L‘ANGERIQUE)」「ルイ・グラマラス(RUI GLAMOUROUS)」の5ブランド。いずれも、それぞれの個性を発揮しながらバイヤーとのコミュニケーションや商談に挑んでいた。その中で、7月に開催される「モードシティ(MODE CITY)」展も合わせて5度目の出展となる「ランジェリーク」は、素材展の「アンテルフィリエール」のトレンドフォーラムにおいて、“時代を変える次世代デザイナー”として有馬智子クリエイティブ・ディレクターがフィーチャーされていた。
フレッシュな魅力を放つランジェリー新興国のブランド
広い会場内の一角には、オンラインブティック「ザ・シェイプ・オブ・ザ・シーズン(THE SHAPE OF THE SEASON)」の創設者であるマチュー・ピネ(Matthiew Pinet)氏がオーガナイズし、有望で洗練された40ブランドを集めたエリアの“エクスポーズド”があった。今回はそのエリアの多様性が印象に残った。「アロマティック カスカ」「カナ・マツナミ」「ランジェリーク」もこのエリアへの出展で、ポーランド、リトアニア、スロベニア、ロシア、そして中国からも2ブランドが出展していた。フランスやイタリアのブランドがヨーロピアンランジェリーの主流だったのは、すでに過去の話のようだ。総じてそれらのクリエイションはフレッシュで、今の気分を軽やかに表現している。イギリスブランドでも、アジアをルーツに持つデザイナーが率いるなど、もはや、どの国のブランドかを確認するのは無意味とさえ思えてくる。
3日間、会場をくまなく歩いて感じたのは、そのモノに確固たるメッセージがあるブランドしか記憶に残らないということ。だからといって必要なのは奇抜なデザインなどではない。最新テクノロジーから生まれる下着ならではの機能や素材、肌に触れて初めて感じる心地よさ、そして小手先ではない信念のあるデザイン。モノが溢れる今、そうした要素に魅力を感じるのは消費者も同じなのではないだろうか。
川原好恵(かわはらよしえ):ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルスの分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身