2018年の11月末にスタートしたブランド「オティ(OTII)」は、アウトドアのテイストを軸に、古着や、オリジナルのウエア、コーヒー、食器などさまざまな商品を販売するライフスタイルブランドだ。同ブランドの特徴は、“スタイルセット”という販売方法。ウエアをトップスやインナー、パンツなどのコーディネートでの販売しており、スタート時に発売した約20コーディネートは即日完売した。同ブランドの運営会社は、アパレルECのマネジメントなどを行う企業、アズーロだ。同社の姜成明・代表に服をコーディネートで販売する理由や「オティ」の今後についてを聞いた。
WWD:「オティ」を立ち上げた経緯は?
姜成明アズーロ代表(以下、姜):アズーロでは、アパレル店舗のウインドーや、EC上でのスタイリングなどを行っています。企業で試行錯誤を繰り返しているうちにコーディネート自体に価値があることに気づき、「オティ」を立ち上げを決めました。
WWD:ブランドのコンセプトは?
姜:あまり表立ってコンセプトを表明していないのですが、“味のある服”を提案していきたいな、と考えています。今って、「ユニクロ(UNIQLO)」さんや「H&M」さんにいけば安くてそこそこ品質のいいものが買えるじゃないですか。でも、それってなんだかコンビニ的な消費感覚で味気がないな、と思っていて。今やブランドを立ち上げるのが難しくない時代に、周りと同じようなことをやっても意味がない。自分たちなりにどうすべきか考え、“味がある服”というコンセプトに辿りつきました。
WWD:姜代表にとって“味”とは?
姜:時間が経過しても魅力が色あせず、むしろ増していくものですね。家具なんかも、歴史を重ねることで価値が出てくるものがあります。洋服は消耗品扱いになりがちですが、「オティ」では家具と同じように色褪せない、普遍的な価値を持たせたいと思っています。そのアイデアを具現化しようと考えたときに、ブランドを使い込むほどに味が出てくるアウトドアのテイストにし、さらにユーズドのアイテムを扱うことを決めました。ユーズドは今のところ、ニューヨークとロサンゼルスで買い付けています。
WWD:ブランドのビジュアルなどは全て姜代表が手掛けている?
姜:ビジュアルやユーズドのセレクトなどを担っているのは、白川という、アズーロの社員です。彼女はインスタグラムでフォロワーを15万ほど抱えています。でも、単にフォロワーが多いだけでなく、彼女の投稿は商売っ気がないんですよね。タグ付けなどをほとんしない。でも、フォロワーから支持されている。彼女の周囲に媚びないスタンスが「オティ」の運営のヒントにもなっています。
WWD:オリジナルのウエアやコーヒー、食器なども白川さんが担当している?
姜:現状はそうです。彼女のセレクトやビジュアルの見せ方が素晴らしいと思います。ただ、「オティ」はあくまでも彼女のブランドではないので、ゆくゆくは白川には全体の大きな方向性を決める役割になってもらい、商品のセレクトなどは他のスタッフにも任せていこうと思っています。
WWD:「オティ」は現状、何人体制で運営している?
姜:基本的にはアズーロの業務との兼任ですが、倉庫がある長野に7人、東京に白川を含めて3人の計10人です。今後は人数を増やそうとも考えているのですが、最大利益を追求するようなブランドではないのかなとも思っているので、急激には増やさないと思います。
WWD:ブランドスタート時に販売した“スタイルセット”は即日完売したらしいが、コーディネートの量は今後増やすつもりか?
姜:確かにコーディネートを1000体ほど用意すればそれなりに利益も出るとは思いますが、変に商売っ気を出すのは良くないのでは、と考えています。スタッフの人数の話と同じですね。それよりも地道にいいもの、味のあるものをチョイスして、ブランドを長く続けることの方が大事です。
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WWD:商品カテゴリーは増やす?
姜:ブランドのベースであるアウトドア以外に手広くやるつもりはありませんが、リペアものは考えていて、実際にリペア系の企業とも話をしています。ユーズドの商品と新しいものを掛け合わせた一点モノを作ったりできればいいなと思っています。オリジナルとユーズド、リペアものを組み合わせ、ここでしか買えないコーディネートを販売していくつもりです。
WWD:ホームページには「ゆくゆくは実店舗も」と記載されているが、ショップオープンの予定は?
姜:ショップは今考えている最中です。お客さんにちゃんと「オティ」の服を手に取って感じてもらいたい。ただ、路面店のような店舗は時代に合っていないのかなとも思っているので、例えば300人限定で住所を一般公開せずにシークレットショップをオープンしてもいいなと考えています。あとは気に入ったら毎月一定の金額を払い、いらなくなったら返品するようなサブスクリプション型の運営もやってみたいです。特にユーズドに関しては、一度人の手を渡ったものなのでレンタルでも抵抗が少ないのかなと思っています。サブスクリプション型のビジネスとシークレットショップを組み合わせても面白いことができるのでは、と今はいろいろと模索中です。
WWD:「オティ」を今後、どうしていきたい?
姜:短期的には写真のビジュアルや、商品の補足情報をより充実させ、お客さんにとってより親切なサービスを構築していきます。“スタイルセット”などの売れ行きを見ていると、需要はあるなと実感はしているのですが、写真のクオリティーなど、まだまだ改善余地があるので。長期的には周りと競争するのではなく、「オティ」の特別感をしっかりと出し、店舗をはじめ、お客さんとのコミュニケーション方法を確立したいです。お客さんと一緒にブランドを作っていくくらいにしたいですね。