リユース大手のコメ兵は、AI(人工知能)を活用し、高級ブランドの真贋を判定する。すでに自社でソフトウエアを開発、現在試験的に「ルイ・ヴィトン」の判定を行っており、真贋正答率は97%に達しているという。今春にも店頭でのテスト導入し、いずれは全店舗に広げる考え。開発を担った山内祐也・執行役員事業開発部長に直撃した。
WWDジャパン(以下、WWD):AIを使った真贋判定の仕組みは?
山内:製品の複数箇所をマイクロスコープで撮影、その情報をクラウドに上げて独自に開発したAIが分析する。現在検査しているのは「ルイ・ヴィトン」のみだが、真贋の正答率は97%。今後は99%を目指している。
WWD:実用化はいつになるのか?
山内:今春にも一部の店舗にテスト導入する。ブランドも「エルメス(HERMES)」「グッチ(GUCCI)」「シャネル(CHANEL)」「プラダ(PRADA)」などに広げる。半年ほどのテスト導入を経て、導入のスピード感などは未定だが、いずれは全国の「コメ兵」全35店舗に導入する予定だ。
WWD:AI導入の背景は?
山内:3つある。1つ目が非常に優秀なエンジニアを幸いにもチームに迎い入れられたこと。2つ目は当社の真贋の“匠”の存在、3つ目が豊富な商品データを当社が持っていることだ。コメ兵は年間140万点の商品を扱っており、買い取り後に全商品を名古屋市内で検品・判定を行う商品センターに一度集約している。この物流拠点でAI判定に使うデータのための撮影などを行っており、そのことが精度の高さにつながっている。
また、昨今は人気の高級ブランドでは偽物のクオリティが非常に上がっている。当社は真贋を見極める目利きなどで5重のチェック体制を敷いているが、いずれはプロでも人の目だけでは見抜けない製品も出てくる可能性がある。今回AIなどの最新テクノロジーを導入することで、素材のテキスタイルやパーツそのものを判定できるようにもなった。仮に見た目や触感は一緒でも、実はテキスタイルの組織や糸が違えば真贋を判定できる。極端に言えば、糸一本でも本物と違うものが使われていれば、真贋を判定できる。このAI判定を機に、“リユーステック”という新しい概念を提唱したい。
WWD:“リユーステック”とは?
山内:フリマアプリ「メルカリ」を筆頭に、リユース市場は拡大しつつ、これまでよりさらに身近な存在になるなど新たな局面も迎えている。商品のフィジカルな物流とテクノロジーを組み合わせることで、リユース市場をより活性化できる手応えを感じている。今回のAI判定は当社だけの活用にとどまらず、「メルカリ」などの、実際にはフィジカルな真贋判定の難しい外部のECプラットフォームへの提供も検討している。ECプラットフォームも独自のテクノロジーを活用し、真贋判定の開発を行っていると見られ、そうした多種多様な技術を“リユーステック”と定義することで、企業や業界の枠を超えた交流や連携を目指したい。