ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)=アマゾン(AMAZON)創業者兼最高経営責任者(CEO)は2月7日、タブロイド紙「ナショナル・エンクワイアラー(THE NATIONAL ENQUIRER以下、エンクワイアラー)」の発行元であるアメリカン・メディア(AMERICAN MEDIA以下、AMI)から、自身が不倫相手に送ったヌード写真を公表すると脅迫を受けたことを明らかにした。
ベゾスCEOは25年間連れ添った妻と離婚することを1月に発表しており、アマゾンの株式を含むおよそ1310億ドル(約14兆円)に上る財産の分与などが話題となっていたが、同氏が不倫相手に送ったとされる携帯メールを「エンクワイアラー」紙が同月に暴露している。デイビッド・ペッカー(David Pecker)AMI会長兼CEOはドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の盟友として知られており、ベゾスCEOが所有する米紙「ワシントン・ポスト(WASHINGTON POST)」は以前からトランプ大統領を厳しく批判していた。ベゾスCEOは今回、暴露記事が“政治的な動機”によるものではないかという調査を止めなければヌード写真を掲載すると脅迫されたという。「個人的な写真をさらしたくはないが、より重要なことがあるので恥を忍んで事態を公表する。私のような(権力のある)立場の人間が抵抗しなかったら、他に誰ができるというのか。私は彼らの汚いやり口に屈するつもりはない」とブログに投稿した。
アマゾンという巨大企業を率いるベゾスCEOは、常に前向きで積極的に事業を拡大するビジネスの天才だと評されてきた。米コンサルタント会社プレディクティブ(PREDICTIV)のジョナサン・ロー(Jonathan Low)=パートナーは、「20年前であればこのようなスキャンダルは致命的だったが、トランプ米大統領の登場で倫理観の基準が変わってしまった。西側世界で最大の権力を持つトランプ大統領がしていることに比べれば、大抵のことはたいしたことがないように見えてしまう。ベゾス氏の優れた経営手腕と、アマゾンが小売業界に与えた影響の大きさなどを考えると、不倫など誰も気にしないだろう。重要なビジネスパートナーが離れていかない限り、同社の株主も問題にしないと思われる」とコメントした。
実際、株主から不満が出ているという声は聞かない。彼らが気にするのは利益だけであり、アマゾンはその期待に応えているからだ。しかし、従業員は今回の騒動をどう考えているのだろうか?米コンサルタント会社のHRリーガリー・スピーキング(HR LEGALLY SPEAKING)のケリー・チャールズ・コリンズ(Kelly Charles-Collins)CEOは、「このようなスキャンダルを起こしておいて、企業トップとしてどのように社員に訓辞を垂れるのかという問題はある。しかし暴露されたのがあくまでもプライベートなメールなので、社員の多くを占めるミレニアル世代は『プライバシーを侵害するなんて間違っている』と感じており、ベゾス氏を擁護するだろう。また、『私は脅迫に屈しない』と経緯を発表したことも賢かった。これで彼はヒーロー的な存在になった」と述べた。
いずれにしても、ベゾスCEOを見る世間の目は変わるだろう。人は巨大な権力や富を持つ人間に対して畏敬の念を抱くものだが、アマゾン帝国に君臨する彼もまた、不倫相手に浮ついたメールを送るただの人間にすぎないのだ、と。