「ウィーウィル(WEWILL)」は、3月18日から開催の「アマゾン ファッション ウィーク東京(AMAZON FASHION WEEK TOKYO)」に先駆け、2019-20年秋冬コレクションのインスタレーションを行った。 “デスク パンク(机上のパンク)”をテーマに、モデルにユース感あふれる若者たちを起用。英国にインスパイアされたタータンチェックやツイードのセットアップ、ライダースやモッズコートなどのウエアの所々にブランドロゴやメッセージが配されたシールを荒々しく張り付け、「ウィーウィル」流のパンクを提案した。「パンクといっても切りっぱなしなどの手法は使わず、あえてきれいに仕立てている。自分はモヤモヤした気持ちの時に、派手に発散するのではなく、ゆっくりと気持ちを閉じ込める。そんな内面の葛藤を表現したかった」と福薗英貴デザイナーはコレクションについて説明する。
今回のインスタレーション最大の特徴は、モデルと来場者の距離の近さだ。会場である東京・丸の内のブリティッシュパブでは、モデルも来場者も関係なくドリンクが振る舞われ、モデル着用の服に触れることも可能。インスタレーション開始前から既に飲み始めていたモデルたちもお互いに談笑したり、写真撮影に応じたりと、自由に動き回る。中盤に差し掛かると、会場内の熱気からか、モデルがアウターを脱ぎだし、そのアウターを別のモデルが着るなど、何でもアリの状態となったが「これでいい」と福薗デザイナー。「丸の内という上品なイメージの街で、カオスなことをしたいと考えていた。どれが『ウィーウィル』の服か分からなくなったり、お酒をコレクションにこぼされたりするかもしれない。でも、洋服とはそもそもそんなものだと思う」と語る。
インスタレーションには、立席で約100人収容可能な会場のキャパシティーを大幅に超える観客が来場。各々がブランドの服を酒の“肴”に楽しんだ。企画段階では、多くのハプニングが予想されることから、反対の声も少なくなかったそうだが、「これまでにないインスタレーションで新しい」と多くの来場者が口にしていた。最後には英ロックバンド、オアシス(OASIS)の代表曲「Don’t Look Back In Anger」が流れ、モデルや来場者が口ずさむ。
超カオスな状態だったため、メディアが手配したフォトグラファーが写真を撮りにくいなどのデメリットもあったが、服の素材感やディテールなどを見るだけではなく、触って感じとれるというメリットもあった。興味ありそうに服を見つめている来場者には、モデル自身が歩み寄り、にこやかに話しかけたり、服を触るよう促したりする場面も見受けられた。小さい会場だからこそ来場者とブランドの距離が近づき、一体感を生んでいた。今回の超至近距離型のインスタレーションが、ブランドのコアなファンを獲得するきっかけになるかもしれない。