ファッション

32歳のダニエル・リーによる新しい「ボッテガ・ヴェネタ」は“フィービー枠”を狙えるか?

 「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は22日、32歳の英国人デザイナー、ダニエル・リー(Daniel Lee)によるメンズとウィメンズのデビューコレクションを発表した。ショー会場は公園に建てた透明のテントで、日差しがたっぷり降り注ぐ。フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の「セリーヌ(CELINE)」出身というキャリアからもダニエルへの期待値は高く、オープンでフレッシュなショー会場が若いデザイナーへの一層の興味を掻き立てた。

 ファーストルックは、デコルテのカッティングが特徴的なシンプルな黒のレザーのワンピース。イタリア・ヴェネト州で高級レザーグッズからスタートした同ブランドのコアバリューを端的に表す始まりで、黒はこの後も度々登場するキーカラーとなった。前任のトーマス・マイヤー(Tomas Maier)の黒が複雑なニュアンスを持つシックな黒だったのに対して、ダニエルの黒はストレートで強い黒。中盤に登場する光沢あるシャツのインスピレーション源が90年代の“トラッシーな(売れない)”ミュージシャンという視点からもわかるように、新生「ボッテガ・ヴェネタ」はエレガンスからストロングネスへとかじを切るようだ。

 若いリーを起用した狙いのひとつは、彼と同世代の若い顧客の獲得。先に発表したプレ・フォールではメンズ・ウィメンズともに、シンプルなトレンチコートやニットトップ、レザーやナイロン製のスポーティーなブルゾンといった定番アイテムが充実していた。メーンはその延長にありつつ素材使いはより強く、インパクトあるものに。イギリス人であるダニエルが、イタリアのカルチャーを学び取り入れたというウィメンズの服のカタチは広いデコルテや長いスリットなど女性の官能性を強調する。
 

 ダニエル自身が車好きなことから、バイカーディテールが随所に登場し、これも強さにつながっている。また、アイコンであるレザーを編み込む技法、イントレチャートは服もバッグもひとつひとつの四角を大きく使い、これまでよりポップに。ぽってりとしたトゥーにイントレチャートを用いたパンプスは可愛らしく、アイコニックなアイテムとなりそうだ。

 同ブランドは、「自分のイニシャルだけで十分」(When your own initials are enough)というキーフレーズを持つが、ダニエルもロゴは用いず、素材とデザインで勝負。それだけにフォームやバランスが重要となるが、レザーやマッキントッシュなどハリのある素材が多いことからか、着こなしの難易度が高いバランスのアイテムが増えている。元々レザーグッズのブランドであり、プレタポルテの歴史は前任者トーマス・マイヤーが築いたもの。トーマスが残したアーカイヴに頼らずに独自路線を築くのは難易度の高い仕事だけに、ダニエルの強みが職人技と融合し独自の世界を確立するにはもう少し時間がかかりそうだ。

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