ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は2月24日、中国との貿易協議で「知的財産権の保護、技術移転、農業、サービス、通貨などの重要な問題に関して大きな進展があった」として、3月2日に予定されていた中国製品への関税引き上げを延期すると表明した。米中は2018年12月の首脳会談で貿易問題を90日間にわたって集中的に協議すると決定しており、その期限が3月1日だったが、それも併せて延長された。協議がさらに進展すれば、中国の習近平国家主席との首脳会談を米フロリダ州で開いて最終合意を目指すという。
18年7月に米政府が中国への制裁として2000億ドル(約22兆円)に相当する6031品目への10%の追加関税を発表した際、衣料品の大半が対象から外されたため、あまり影響を受けなかったアパレル企業も多い。しかしレザーグッズやハンドバッグ類は対象に含まれており、1月1日からは25%に引き上げられる予定だったが、今回の貿易交渉の一部として実施が見送られていた。交渉が決裂した場合は3月2日から25%の関税になる可能性があったため、ハンドバッグを取り扱っているブランドはさしあたり一安心といったところだろう。
だが、気を緩めるのは早計だ。今後の協議が不調に終われば、やはり関税を引き上げるとトランプ政権は示唆しており、さらに2670億ドル(約29兆円)相当の中国製品に追加関税がかけられる可能性が高まってくる。これが実施されると、関税の合計額は17年に米国が中国から輸入した全製品の価格を上回るという。マシュー・シェイ(Matthew Shay)全米小売業連盟(National Retail Federation)会長兼最高経営責任者は、「関税引き上げを避けようという判断は前向きな進展だ。米政権には、米国の企業や消費者が感じている不安を終結させる最終案の合意に向けてこのまま動いてもらいたい」とコメントした。