「シャネル(CHANEL)」は2月27日、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏の死去後の新体制について、デザインチームや経営陣などに変更がないことを正式に発表した。
ラガーフェルド氏の後継者としては、その右腕として30年来共に仕事をしてきたヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)=クリエイティブ・スタジオ・ディレクターが2月19日に任命されており、今後はファッション・コレクション部門のアーティスティック・ディレクターとしてオートクチュールとウエア、そしてアクセサリー部門を統括する。また、ファッション・イメージ部門もやはり30年以上統括してきたエリック・フルンデール(Eric Pfrunder)=ファッション・イメージ・アーティスティック・ディレクターが同職のまま続投する。アラン・ヴェルタイマー(Alain Wertheimer)=シャネル最高経営責任者は、「ラガーフェルド氏と30年以上にわたって仕事をしてきたチームと、ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=ファッション部門プレジデントが率いる全てのチームが、『シャネル』の創造性と活力をさらに発展させてくれるものと確信している」と声明文で述べた。
ヴィアール=アーティスティック・ディレクターは1962年にフランス・リヨン市で生まれ、現在57歳。創業者であるガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)以来、女性として初めて同ブランドの舵取りをすることになるが、19年プレ・スプリング・コレクションからはショーのフィナーレにラガーフェルド氏と共に登場している。地元の学校で舞台美術を学んだ後、衣装デザイナーのドミニク・ボルグ(Dominique Borg)のアシスタントとしてキャリアをスタートした彼女は、1987年にインターンとして「シャネル」に加わり、やがて刺しゅう部門の責任者となった。92~97年にラガーフェルド氏と一緒に「クロエ(CHLOE)」で仕事をした後、2000年に同氏と「シャネル」に戻っている。以後、オートクチュールやウエア、アクセサリー部門を統括し、ラガーフェルド氏をして「私の右腕であり、左腕でもある」と言わしめるほどの強い信頼関係を築いた。
17年の英紙「デイリー・テレグラフ(THE DAILY TELEGRAPH)」のインタビューでは、ラガーフェルド氏について「毎日会っているし、話している。彼から携帯電話にスケッチが送られてくることもよくあるし、共犯者のように緊密に連絡しあっている」と語っている。そうして長く一緒に仕事をしてきたからか、2人はそのプロ意識の高さと、本や音楽を愛するところがよく似ている。ヴィアール=アーティスティック・ディレクターは、「私は忙しくしているのが好き。休んでしまうと勘を取り戻すのに時間がかかる」と15年に受けた仏誌「クラッシュ(CRASH)」のインタビューで答えているほか、「『シャネル』ではチームワークを大事にしていて、上下関係を感じることはない。私は自分が“ディレクター”だと思っていないし、だからこそ全てがスムーズに運ぶ」と話している。
ラガーフェルド氏が「シャネル」で手掛けた最後のコレクションが3月5日に発表されるが、パリ・ファッション・ウィークのクライマックスとなることは間違いないだろう。なお関係筋によれば、計画されている追悼セレモニーはショーとは別に行われる予定で、日時などは決まっていないという。