「アンリアレイジ(ANREALAGE)」は26日、パリ・ファッション・ウイーク期間中に2019-20年秋冬コレクションを披露した。会場に入ると天井からは自然光が降り注ぎ、ランウエイの中央に巨大なトルソーがそびえ立つ。ショー開始前から明らかにここ数シーズンとは“何かが違う”ことを予感させた。
前シーズンまで題材にしていた「光」は2018年10月に東京で開催したショー“A LIGHT UN LIGHT”をもって終了。今季からは“服”をテーマに掲げ、その中でも今回はディテールに着目したコレクションを披露した。
「アンリアレイジ」の公式インスタグラムには、ショーの前からコレクションに登場するアイテムを平置きして撮影した画像が公開されていた。そこにはダッフルコートやチェック柄のシャツ、アーガイル柄のニットなどが並び、“光”をテーマにしていたころの構築的で実験的、アートな要素が強かったコレクションと比較すると“普通の服”に戻ったなという印象だ。
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しかしその印象は一瞬で覆されることになる。一人目のモデルは巨大化させたトレンチコートの衿部分に体を通し、ケープジャケットとして着ていたのだ。ここで今季のテーマ“ディテール”や、ランウエイに置かれた巨大トルソーの意味を理解した。その後もブランドのネームタグをブランケットやマフラーとして着用したり、MA-1ジャケットの袖をタイトスカートとして着用したりするなど、服のパーツを巨大化させて1つの服として提案するコレクションが続いた。
ショーの後に森永邦彦デザイナーに話を聞いたところ、インスタグラムの写真はコレクションに登場したアイテムそのものを平置きし、縮尺が分からないように撮影したものだという。「今の時代、画面上で服を見ることが多くなっているから、画面の上ではスケール感やサイズ感が伝わらない。それであれば、“画面では伝わらないもの”を大きなテーマに掲げ、そのスケール自体をデザインしてしまおうと思った」と説明する。しかし決してSNSやECサイトなど、デジタルに対する拒否感や抵抗感から生まれたコレクションではない。「大きなものを作りたかったわけではなく、画面で見るものと実際に見るものの対比が重要。“服のディテールを着ていると思わないけど、これ自体が服になっている”ということの対比やリアルとアンリアル、ヴァーチャルと現実という対比を作りたかった」。
森永デザイナーは、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON 以下、LVMH)が若手を支援するために創設した「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」の19年のセミファイナリスト20組に選ばれている。ここからファイナリストが8組に絞られ、グランプリには賞金30万ユーロ(約3300万円)と、LVMHのエキスパートによるコーチングを1年間受ける。2年連続で日本人がグランプリを獲得できるか、注目だ。