パリ装飾美術館(MUSEE DES ARTS DECORATIF)の元チーフキュレーターで歴史家のパメラ・ゴルバン(Pamela Golbin)が、グーグル(GOOGLE)初の“アーティスト・イン・レジデンス(Artist-in-residence以下AIR、アーティストがある場所に一定期間滞在して制作活動をする)”プロジェクトのキュレーターとして起用された。テクノロジーと芸術やファッションの融合とそのシナジー効果について探求するという。
プロジェクトの中心となるのは、グーグルが2015年に開発したセンサー機能を織り込んだスマートテキスタイルの「プロジェクト ジャカード(PROJECT JACQUARD)」だ。リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)との共同開発で、同テキスタイルを使用した袖口をなぞるだけで電話をかけたり音楽を聴いたりできるデニムのジャケット“リーバイス コミューター(LEVI’S COMMUTER)”として17年に商品化されている。
グーグルは、世界中の芸術作品を閲覧して解説記事などを読むことができるプログラムと、その公式アプリ「グーグル・アーツ・アンド・カルチャー(GOOGLE ARTS & CULTURE)」を提供しているが、今回のAIRプロジェクトはその一環として行われる。3月4日~4月1日に公募した中から3人のアーティストを採用し、5カ月間にわたってスマートテキスタイルを活用した創造的な作品の制作に取り組んでもらい、成果品を来年10月にパリのイベントなどで公開する計画だ。ゴルバン=キュレーターは、「スマートテキスタイルやウエアラブルテックの可能性を幅広く探究するため、グーグルの優秀なプログラマーとアーティストが組んで活動する。最終的には、発見したアイデアや新技術を全て衣服に搭載したい」と語る。なお、ジャカードの糸作りには日本の伝統的な組紐機が使われているため、採用されたアーティストは来日する予定だという。
ゴルバン=キュレーターはパリ装飾美術館に25年間勤務し、18年末に同館のチーフキュレーターを退任。在任中は、「ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)回顧展」やマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)が率いる「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」展のほか、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」などの展覧会を担当した。また、最近米ハーバード・ビジネス・スクール(HARVARD BUSINESS SCHOOL)の社会人教育コースを修了した。