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「スパイダーマン:スパイダーバース」の監督に聞く、主人公マイルスが“エア ジョーダン 1”を履く理由

 「第91回アカデミー賞(91st Academy Awards)」では長編アニメーション賞を、「第76回ゴールデン・グローブ賞(76th Golden Globes)」でもアニメ映画賞を受賞するなど、“映画「スパイダーマン」シリーズ史上最高傑作”との呼び声高い「スパイダーマン:スパイダーバース」が、3月8日からTOHOシネマズ 日比谷をはじめとした全国の劇場で公開中だ。

「スパイダーマン:スパイダーバース」公式トレーラー

 本作は、映画「スパイダーマン」シリーズ初のアニメ作品であり、主人公もこれまで実写作品で主人公を務めていた高校生ピーター・パーカー(Peter Parker)から、アフリカ系とヒスパニック系のハーフの中学生マイルス・モラレス(Miles Morales)へと変更。マイルスのスパイダーマンとしての活躍を描きながら、人種・性別の異なる複数のスパイダーマンが登場するといったこれまでの「スパイダーマン」シリーズにはなかったストーリー展開となっている。

 監督を務めたのは本作が監督デビュー作品となったロドニー・ロスマン(Rodney Rothman)、ピーター・ラムジー(Peter Ramsey)、ボブ・ペルシケッティ(Bob Persichetti)の3人。今回は代表してロスマンに、マイルスを主人公にした理由から、スニーカー好きの間で話題となったマイルスが履く“エア ジョーダン 1(AIR JORDAN 1)”についてまでを語ってもらった。

WWD:アフリカ・ヒスパニック系の少年マイルスを主人公に選んだ理由を教えてください。また、作中では複数のスパイダーマンが登場しますが、これはダイバーシティー(多様性)の流れを汲んでいるのでしょうか?

ロスマン:マイルスを主人公にしたのは、ブライアン・マイケル・ベンディス(Brian Michael Bendis)原作の「アルティメット・スパイダーマン(Ultimate Spider-Man)」を基に製作したからなんだ(編集部注:「スパイダーマン」の連載が長期化し複雑になりすぎたため、設定をリセットして2000年からスタートした新シリーズ)。「アルティメット・スパイダーマン」を映画化するにあたって、コミックスの世界をただ再現するというよりも“2019年における世界”を表現した「スパイダーマン」にしたかった。それを突き詰めた結果として、原作同様にカラードの少年マイルスが主人公になったんだ。いろいろなスパイダーマンが登場する点については、もちろんダイバーシティーの要素も含んでいる。ただ、1つの問題を解決するのにいろいろなやり方を試すように、いろいろなスパイダーマンを登場させたという意味合いの方が強いかな。コミックスを映画化するのは非常に経済的だし、効率がよかったよ(笑)。

WWD:本作はシリーズ初のアニメ作品でもあり、これまでと比べるとコミックスの世界観をより忠実に描けたと思いますが?

ロスマン:実写とアニメは全く違うスタイルの映画だと考えていて、やはり原作がコミックスだから実写よりも世界観は伝えられると思い製作に臨んだ。テーマは、“コミックスの世界観を保ちつつ、そのコミックスを読んだときの没入感のようなエキサイティングな感覚をどう観客に与えるか”。コミックスは1つのコマの中でいろいろなことを訴えていて、一つ一つのコマが力強さを持っている。これを映画でも表現したかった。だから原作のコミックス同様、オノマトペ(擬音語や擬態語)をビジュアルとして可視化したり、CGアニメーションじゃなくて手書き風アニメーションのシーンがあったりするんだ。

WWD:劇中では、マイルスがバンクシー(Banksy)に憧れを持ってグラフィティを楽しみ、自室にはチャンス・ザ・ラッパー(Chance The Rapper)のポスターを張るなど、ストリートカルチャー関連の描写が多く見られました。

ロスマン:ニューヨークの街を歩けば必ずグラフィティを見かけるように、グラフィティはニューヨークと切り離せない関係にあるものの1つ。グラフィティやストリートアートと言えばバンクシーだし、もちろんそれ以外からもインスピレーションを受けていて、その全てのインスピレーションを組み合わせてニューヨークの街の感覚を表現した結果、ストリートのテイストが強くなったんだと思うよ。

主題歌はラッパーのポスト・マローンと、レイ・シュリマーのスウェイ・リーによる「Sunflower」。日本版はロックバンド凛として時雨が担当している

WWD:ジェームズ・ブラウン(James Brown)やノトーリアス・B.I.G.(The Notorious B.I.G.)など、サウンドトラックにブラックミュージックを多く使用しているのも印象的でした。

ロスマン:主題歌はヒップホップだし、ポップスからラテンまであらゆるジャンルの音楽を使用しているのも、ニューヨークという街を舞台にしているから。あとは、マイルスが自分の次元にいながらも違う次元のスパイダーマンたちと共存するといった違和感を感じているが、同じように観てくれる人たちに“聞き覚えのある音楽だけど初耳”みたいな変な体験をしてほしくて、作曲家のダニエル・ペンバートン(Daniel Pemberton)に交響曲を作ってもらい、それをLP盤にして、そのLPをDJがスクラッチしたのを録音するみたいなアプローチをとっているよ。

WWD:スニーカー好きの間では、マイルスが“エア ジョーダン 1”を履いていることが話題になっていました。ナイキ(NIKE)から話があったのでしょうか?

ロスマン:答えはシンプルで、(監督の1人の)ボブが「マイルスだったらやっぱり“エア ジョーダン 1”だろう!」と言い出したからなんだ。周りからは「ナイキからお金を貰ったんだろ」って散々言われるけどむしろ逆で、われわれから「お金を払ってマイルスに履かせたい」って言ったくらいだよ(笑)。結果としてコラボ“エア ジョーダン 1”を発売することにはなったけどね。

WWD:マーベル作品ではお馴染みのスタン・リー(Stan Lee、1922〜2018)のカメオ出演についてなにかエピソードがあれば教えてください。

ロスマン:リーの出演シーンは、彼が亡くなる1年前には作っていたんだ。彼はそのシーンを作っている最中に奥さんを亡くして悲しかっただろうけど、とても友好的に製作に取り組んでくれた。だからこそ彼が亡くなった後もシーンは変えなかったんだ。そういった状況での彼のセリフは感情的で、共感できるものになっていると当時から思っていたし、亡くなったことでより言葉に深みが増したと感じているよ。

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