セレクトショップで人気を集めていた東京のウィメンズブランド「アンソール(ENSOR CIVET)」の元デザイナー櫻井綾が、新ブランド「カードル(THE CADRE)」を2019-20年秋冬に始動する。「アンソール」は、櫻井の出産を機に17年プレ・スプリングをもって休止していた。
デビューコレクションは20型で、いずれも櫻井が得意とするミリタリーウエアや古着、ベーシックアイテムをベースにしながら、母になった櫻井の等身大のデザインが加わっている。
「子どもが産まれて着る服が変わった。『家で洗濯できる』『自転車に乗るときに裾が引っかからない』『しわになりにくい』『毛玉になりにくい』といったことに目が行くようになった。正直な話、以前はデザイン性や素材のコストを優先していたため、扱いやすさまでを考慮することが難しいこともあった」。「カードル」は「アンソール」に比べて価格は1~3割程度高い。素材へのこだわりに加え、「その日のコーディネートやオケージョンに合わせて自由な着こなしができるように」と、ファスナーやスナップを多用した凝ったディテールのためだ。
「出産後、環境が大きく変わり、日々の生活の中からインスピレーションを得ることが多くなった。服に“機能”を求めるようになり、デザインされた機能服を作りたいと思うようになった」。すべてではないが、「できるだけ、自宅で洗える服作りを目指す」と加える。
「モノに責任を持つため
インディペンデントである必要があった」
インコントロ傘下で「アンソール」とそのカジュアルライン「EN」を手掛けていた当時の卸先の数は両ブランド合わせて約70。売上高は3億~4億円(弊紙推定)だった。
新ブランドは、東京の人気デザイナーズブランドで生産管理を10年以上担ってきた友人と櫻井との共同出資(櫻井6割、友人4割)で会社を設立して運営する。独立会社にこだわったのは、「物に責任を持ちたかったから。子育てがあるため、自分のペースで進められることも重要だった」。「アンソール」当時はプレコレクションも含めると1年に4コレクション、2ブランドを手掛けていたため、1シーズンのサンプル数は60強。企業ブランドのため、関わるスタッフの数も多かった。
「カードル」にはネームがない。「品質表示だけで十分であることと、できるだけ洋服本体にお金をかけたかったのが理由の一つ。 同じ理由で下げ札も品質表示にしていて、洋服を傷つけないで洋服に付けることができる品質表示を採用した」。下げ札には、その商品を手掛けた縫い手や工場などのサインが入る。「それぞれの道の職人(=プロフェッショナル)と共に服を作っており、彼らへの敬意を示している」。櫻井とその友人のこれまでの経験をもとに選んだプロたちに依頼したという。
セールスは「マメ」を育てた敏腕、
六本木八栄
セールスは「マメ(MAME KUROGOUCHI)」や「クリスチャン ワイナンツ(CHRISTIAN WIJNANTS)」などを手掛けるセールエージェント、ショールームリンクスの敏腕セールス六本木八栄が担当する。
「カードル」のセールスを受けた理由を六本木は「タイミングとフィーリングが合った。櫻井さんのモノ作りに共感でき、また、ショールームとしてさらに成長するために次のステップに踏み出すタイミングでもあった」と説明する。「実際に手に取ってみると、キャリアを感じさせる丁寧なデザインであることと、写真では分からない驚きがあった。まだ告知をしていない段階でお店からの問い合わせがあるなど、ファンが付いていたと実感している。これまでのファンはもちろん、違ったターゲットも狙える」と評価する。
ブランド名の「カードル」はフランス語でフレームや額を意味する。櫻井は「額は絵を守り、また絵の一部にもなる。着る人を引き立てられる服にしたいという思いを込めた」と話す。英語の定冠詞と仏語を組み合わせたのは「モノ作りに国籍は関係なくいろんな文化からインスパイアされるから」とのこと。