ファッション

23歳で起業 ビンテージからファストまで知るファッション通が作るブランド

 ゆる過ぎずきつ過ぎず――絶妙なフィット感と身体のラインが美しく見えるパターンのドレスが人気を集めるLA発「シャイナ モート(SHAINA MOTE)」。タイムレスなデザインで幅広い年齢層から支持を受けるのは、LA仕込みのリラックス感とエフォートレスなムードも加味されているからだろう。価格は、ドレスが5万5000~9万5000円、クロップドパンツが3万9000円、トップスが4万5000円など。販売拠点は世界に約85。米国ではロンハーマン(RON HERMAN)やニードサプライ(NEED SUPPLY)といったライフスタイル提案型の専門店に並び、日本ではバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)などで取り扱われる。デザイナーのシャイナ・モート(Shaina Mote)は現在30歳。「車が欲しいなら働きなさい」と両親に言われて、学校に通いながら15歳にしてビンテージショップでキャリアをスタートし、23歳でブランドを立ち上げた。来日中の彼女に話を聞いた。

WWD:23歳でブランドを立ち上げた経緯は?

シャイナ・モート=デザイナー(以下、モート):13歳のときにファッションデザイナーになろうと決めて、15歳のときにビンテージショップで働き始めました。両親に「車が欲しいなら働いてかせぎなさい」と言われたというのもあります。「シャネル(CHANEL)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「グッチ(GUCCI)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」などを扱う店で、商品を裏返してみては服の構造を学んでいました。1920年代や40年代などさまざまなビンテージを扱う店で、最終的にはそれぞれの値付けもしていました。

WWD:気の利いたパターンは、当時のビンテージ研究から生まれた?

モート:ビンテージショップでの経験も大きかったですが、学校でもパターンメーキングを学びました。その後、18歳でファストファッションのバイヤーになり、独立直前の23歳のときには13人の部下がいました。スピード感を持ってトレンドを分析することや在庫管理などを学びましたが、扱う服は、長く着られない生地を用いているために短期間で捨てられるものが多かった。その反動で、日常でも特別な機会でも長く大切に着てもらえるような服を作りたいと考えるようになりました。「ブランドに出資したい」という話もあったけれど断り、自己資金で会社を設立。両親も自営業だからその血が流れているのかもしれないですね。

WWD:“タイムレス”なデザインがコンセプトの一つだが、それだけでは今のファッションシステムに対応できない部分もある。

モート:タイムレスであることとトレンドのバランスを常に考えています。シーズンに必要なアイテムや色があるでしょう?ただし、いわゆるトレンドアイテムは作りません。例えば、去年提案したコートは袖にボリュームを持たせました。そうした小さなデザインを加えることで時代のバイブスを取り入れています。実は、この葛藤を2019-20年秋冬に少し解決できました。タイムレスな定番品を“エッセンシャルズ”としてライン化したのです。そうすることで、メインコレクションでは今何が起こっているか、この瞬間の感情などの時代感覚をより大胆に表現できるようになり、大きなターニングポイントになったと感じています。

WWD:ロサンゼルスを拠点にすべてをLAで生産している。

モート:地元のLAならばコントロールできるし、何より高品質のものが作れます。私自身が産まれ育った土地で、地元の人を雇用して利益をもたらしたいという気持ちがありました。働いているのは5人と小さいですが、昨年10月に自社の縫製工房を持ちました。カッティングやプリーツの工房も作りたいと考えています。

WWD:環境配慮型の素材を用いているとか。

モート:再生繊維のテンセルツイールやオーガニックコットンはよく用いていますが、すべての素材がサステイナブルなわけではありません。環境に配慮されたものを選びたいと思う一方、欲しい素材がなく、ニーズに対して技術が追いついていないと感じます。サステイナブル素材はテクスチャーがフラットなものが多いけれど、私の服作りにはユニークなテクスチャーが欠かせない。テクスチャーが面白くてサステイナブルな生地があれば切り替えていきたいですね。

WWD:生産と素材以外で、サステイナブルな取り組みは?

モート:ロサンゼルス市には余った生地のリサイクルプロジェクトがないので、余った生地は地元のファッション学校やキルト学校に寄付しています。

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