ロッセーラ・ヤルディーニ/「ロッセーラ ヤルディーニ」クリエイティブ・ディレクター PROFILE:伊ベルガモ出身。1976年に「トラサルディ」でアクセサリーを手掛けた後、「アルベアール」を設立。数年後、「カデット」に入り、フランコ・モスキーノに出会う。途中5年間、「ボッテガ・ヴェネタ」に移るも、「モスキーノ」立ち上げ時に再度フランコと組む。2013年までクリエイティブ・ディレクターとして活躍。15年から現職 PHOTO BY SHUHEI SHINE
昨秋、自身のブランドを立ち上げたロッセーラ・ヤルディーニ(ROSSELLA JARDINI)「ロッセーラ ヤルディーニ」クリエイティブ・ディレクターが来日した。イタリアでは「フェンディ」や「エトロ」「ロダルテ」「エリー サーブ」などの生産を手掛けるシエッフェと組み、合弁会社、シャリマールを昨春に設立。ロッセーラが75%、シャリマールが25%出資し、社長にはマルコ・パンツェーリ=シエッフェ社長が就いた。日本では2016年春夏からセレクトショップ、イザで取り扱い、17年春夏から独占販売輸入権を取得したグルッポタナカが本格展開する。同社の田中伸幸・社長は、「『ヌメロ ヴェントゥーノ』と価格帯はあまり変わらないが、エレガントさが魅力だ。弊社の新しい核になるだろう」と期待する。
WWDジャパン(以下、WWD):満を持して自身のブランドを立ち上げ、業界復帰した理由は?
ロッセーラ・ヤルディーニ「ロッセーラ ヤルディーニ」クリエイティブ・ディレクター(以下、ロッセーラ):シンプルに、疲れていなかったからよ(笑)。ファッションの仕事を続けることが自分にとって一番の情熱だと思うし、自分のブランドで再起するにあたり、自然にいいパートナーにも出会えたこともあるわ。シエッフェは、素材を扱う技術やクオリティーの完成度が高く、刺しゅうや縫製の技術を常にリサーチしている。それがいいパートナーの条件ね。
READ MORE 1 / 1 ブランドのアイデンティティーを大切にしていきたい
6月16日には、綱町三井倶楽部で2016-17年秋冬コレクションの発表イベントを開催
WWD:自身のブランドで大事にしていることとは?
ロッセーラ:美しい服を作ること。エレガントで着心地のいいもので、機能的な服。私にとって、モノとして意味をなさないものは意味がない。だから素材は重要なの。例えば、敬愛する山本耀司が用いるクレープをどうしても知りたくて、元・仏「ヴォーグ」編集長に探してもらって迷惑をかけたこともあったわ。結果、見つけることができて今は、100%綿のクレープ・デシンと、トリアセテートとポリエステルを混合した2種類の日本産クレープを愛用しているわ。プラダ最高経営責任者のパトリツィオ・ベルテッリともよく、日本の素材の素晴らしさについて話すわ。きっと日本の水が特殊なのではないかしら。
WWD:「ロッセーラ ヤルディーニ」は、「モスキーノ」時代とは違ったエレガントさが際立って見えるが。
ロッセーラ:94年のフランコの死後、彼のDNA、“遺産”を継承しようと、始めは苦戦した。彼はデザイナーではなく、コミュニケーターという役割だったから、私もその立場を追随しようとしていた。自分のブランドでは、制限がないので、ブロケードなどのクラシックな素材も多用している。
WWD:今のファッション業界をどう見る?
ロッセーラ:あまりいい兆しではないと思う。デザイナーの今すぐ結果を出さなければいけないというプレッシャーが大きく、交代ばかりで使い捨てのよう。今は、インターネットやSNSのデジタルの進化で、店舗での新鮮さがない。顧客が「これが欲しい」と憧れを持ち続けていられる服でないと。ランウエイに出てくるジャージーやスポーティーなスタイルなんかは、あまりにも早い結果を求めるプレッシャーから生まれたものなのではないか。ブランドを発展させるには、元々あったDNAを保たなければいけない。「ヴァレンティノ」や「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン」はいい例ね。アンソニー・バカレロによる新生「サンローラン」がどうなるか楽しみだわ。
WWD:今後、自身のブランドをどう成長させていくか。
ロッセーラ:ケリングやLVMHといった大企業と競うつもりはないわ。小さい規模から育てていきたい。アイデンティティーを壊さないよう、手ごろでも価値あるモノ作りを大事にしていきたい。日本でもいいディストリビューターと出会うことができた。初対面からとてもポジティブなフィーリングを持てたわ。