「オメガ(OMEGA)」や「ブレゲ(BREGUET)」などを擁する世界最大の時計企業スウォッチ グループ(SWATCH GROUP以下、スウォッチ)は、コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)およびLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)に時計の心臓部であるムーブメントを供給しているが、その契約が2019年一杯で切れた後は供給を取りやめる可能性があることを示唆した。
スウォッチはスイスの大手ムーブメント製造会社エタ(ETA)を傘下に収めており、多くの時計メーカーに部品を供給しているが、02年に供給停止を表明している。その際は、優越的地位の乱用に当たるとして日本の公正取引委員会に相当するスイス競争委員会が介入し、それを受けてスウォッチは取引のあるメーカーに対して19年まで供給を継続することを約束していた。
ニック・ハイエック(Nick Hayek)=スウォッチ グループ最高経営責任者(CEO)は、「(契約が切れることを)全く心配していない。心配すべきなのは彼らの方だ」とライバルであるリシュモンとLVMHに言及し、「当社は年間およそ51万個のムーブメントを外販しているが、それを自社製品に回したい」と語った。同氏によれば、スイスの小規模な時計メーカーの何社かとは供給契約の更新をしたので取引を継続するが、リシュモンとLVMHとはまだ更新していないという。「ムーブメントの製造にもっと投資をするべきだと思うが、それは彼らの問題だ。当社の問題ではない」と述べた。
リシュモンとLVMHは、スウォッチが02年に“供給停止”を表明して以降、ムーブメントの内製化を進めてきている。しかしそれは主にハイエンド向けであり、中価格帯の製品についてはやはりエタから調達しているケースが多い。同社が安定した品質のムーブメントを大量生産して安価で提供しているからだ。なお、リシュモンは「カルティエ(CARTIER)」「IWC」「ジャガー・ルクルト(JAEGER LECOULTRE)」などを、LVMHは「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」「ゼニス(ZENITH)」「ウブロ(HUBLOT)」などを擁している。
ハイエックCEOは、スイスの時計産業を支援するため、リシュモンとLVMHへの供給を継続することを検討しても構わないとしつつも、両社は将来的なことまで考えて行動していないと批判した。「IWC」の場合、ムーブメントの45%をエタから調達しているという。米WWDからの問い合わせに対し、「IWC」の広報担当者は「グループ内のことなのでコメントを差し控える」と回答し、「タグ・ホイヤー」からのコメントは得られなかった。