10月で開業10周年を迎える商業施設「アーバンドック ららぽーと豊洲(東京都江東区)」が右肩上がりの成長を遂げている。2015年度(16年3月期)の売上高は、前年比107%の382億円。湾岸エリアの人口増加を追い風に、それに対応したテナントの入れ替えやサービス、イベントを充実させてきたことが奏功した。
豊洲エリアの人口は11万人に
ららぽーと豊洲はIHI(石川島播磨重工業)の造船所跡地に三井不動産が開発。工業地帯だった豊洲だが、00年以降は工場の閉鎖が相次ぎ、跡地に三井不動産などのデベロッパーによる高層マンションやオフィスビルの建設ラッシュが続いた。この10年間で豊洲エリア(豊洲1〜6丁目を中心にした周辺地域)の人口は6割増の11万人になった。大企業のオフィス移転も加わり、東京メトロ有楽町線の豊洲駅の乗降客数は1日当たり18万人を超えた。東京メトロの駅で11番目の規模であり、表参道駅や日本橋駅を上回っている。
ららぽーと豊洲の特徴について三井不動産商業施設本部の柴㟢翔平・主任は「足元のお客さまが高頻度で利用していること」と説明する。同社が運営するラゾーナ川崎プラザ(神奈川県)、ららぽーとTOKYO-BAY(千葉県)と同様に、RSC(広域型ショッピングセンター)の店舗構成だが、売上高に半径5km商圏の顧客が占める割合が60%を占めており、NSC(近隣型ショッピングセンター)的な側面を持ち合わせている。
街の変化に対応し、タワーマンションに入居する世帯所得に恵まれた子育てファミリーや近隣のオフィスワーカーに照準をあわせたMDを強化してきた。12年の改装では住民に向けてインテリアや生活雑貨、化粧品を強化するとともに、オフィスワーカーが昼休み中に食事をとれるように、3階にあったフードコートを1階に移設した。来店頻度を増やすことで、ファッションなど高単価なテナントへの買い回りを促す。地下鉄で6分で銀座に出られる立地だが、住民は衣食住のほとんどを施設内で済ますことができる。子育てファミリーが多く暮らす新しい街という事情を反映して、最近はららぽーと豊洲がコミュニケーションの場として機能している。フードコートや運河に面した広場にママ友が集まるだけでなく、同施設のカルチャーセンター「ららクラブ」の利用率も高い。広域客の集客装置になっている子供の職業体験テーマパーク「キッザニア」は、10周年を記念してららぽーと豊洲の各テナントと協業した職業体験イベントを開くなど、話題性にも事欠かない。
豊洲は今後も住宅はもちろん、築地からの市場移転、東京五輪の競技施設や選手村など開発が目白押し。ららぽーと豊洲の隣接地には三井不動産による高層オフィスビルの建設も発表された。柴㟢主任は「豊洲は住宅、オフィス、商業の三位一体で開発されている。五輪後を見据えた街づくりを進める中で、ららぽーと豊洲は拠点としての機能を強めていきたい」と話す。