トム・フォード(Tom Ford)が、アメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA以下、CFDA)の新会長に選任された。現会長であるダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)は2006年にCFDAプレジデントに任命され、15年から現職を務めている。当初、トムの新会長就任は20年1月の予定だったが、19年6月に早められた。CFDAは、「トムの幅広い経験や知識はCFDAの大きな財産であり、米国のデザイナーが世界で活躍できるよう支援するという当協議会のミッションを力強くサポートしてくれるだろう」とコメントした。
同協議会は、フォン・ファステンバーグが会長に就任するまではプレジデントが代表となっており、過去にはオスカー・デ・ラ・レンタ(Oscar de la Renta)やペリー・エリス(Perry Ellis)らが務めている。トムは11人目の代表となる。同協議会の取締役会は、マイケル・コース(Michael Kors)、トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)、ノーマ・カマリ(Norma Kamali)、ヴェラ・ウォン(Vera Wang)、マーカス・ウェインライト(Marcus Wainwright)ら19人で構成されている。
会長就任後にトムが取り組むだろうと思われる課題の1つが、ニューヨーク・ファッション・ウイークの再生だ。まだウワサの段階ではあるが、同ファッション・ウイークは3月15日にオープンしたばかりの大型再開発プロジェクト「ハドソンヤード(HUDSON YARDS)」内のアートセンター「ザ・シェッド(THE SHED)」で開催されるのではないかという話もある。主催および運営会社の米IMGは、9月に行われる20年春夏コレクションをどうするのかについて最終案を調整中だという。
現在、CFDAにはウィメンズ、メンズ、ジュエリー、アクセサリーのデザイナーなど500人以上のメンバーが所属しており、ここ数年はモデルの健康増進や多様性の理解を促し、地球の環境保護にも取り組んでいる。ファッション界のオスカー賞ともいわれるCFDAファッションアワードも主催しているが、今年は17年間にわたってメインスポンサーを務めてきたスワロフスキー(SWAROVSKI)が降板して不参加のため、新たなスポンサーを探している最中だ。
課題が山積みの中での就任となるトムだが、3月19日にそれらとは全く関係のない話で“渦中の人”となった。トムがメラニア・トランプ(Melania Trump)大統領夫人について、「男性の趣味が悪いエスコート嬢に服を提供するつもりはない」と発言したらしいという話題でソーシャルメディアが持ち切りとなったのだ。
しかし、トムはそのような事実はないと反論。「そのようなことは絶対に言っていない。トランプ大統領が誕生する前に、ファーストレディーは米国製の服を着る必要があるから、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)やメラニア・トランプに衣装を提供することはないだろうとテレビのトーク番組で発言したことがあるだけだ。私がデザインする服は米国製ではないし、ファーストレディーは国民が親近感を覚える価格帯の服を着用することが多いことを考えると、私が作る服は高すぎる。一度だけ、ミシェル・オバマ(Michelle Obama)前大統領夫人に衣装を提供したことがあるが、それは私がロンドン在住だった頃に彼女が訪英して女王に謁見するという特別な事情があったからだ。私はメラニア夫人を侮辱するようなことを言ったことはないし、誰に対してもそのような発言をすることはない。今は、どこかの誰かが捏造した話がインターネットで拡散されてしまう時代だ」と語った。
なお、トムは17年にも同様の論争で話題になっている。