2017-18年秋冬に「アマゾン ファッション ウィーク東京(Amazon Fashion Week TOKYO)」に初参加し、今やすっかり東コレの顔になった「ハイク(HYKE)」(吉原秀明、大出由紀子)。同ブランドが持ち味とする“上質なシンプルベーシック”といったカテゴリーでは、今季「ザ・リラクス(THE RERACS)」(倉橋直実)も東コレに初参加し、「ハイク」と同日にランウエイショーを行った。有力ショップを多数卸先に持ち、ファッション業界関係者にもファンが多いという点でも共通する2ブランド。今季の両ブランドのショーをどう思ったのかを、“服をよく知るファッションのプロ”代表、ファッションディレクターの萩原輝美さんに聞きました。
WWD:海外ブランドを中心に、いつもモードでエレガントなスタイルでキメている萩原さんですが、服好きの大人から見て、今季の2ブランドはどうでした?
萩原輝美(以下、萩原):まず「ハイク」からいうと、吉原さんと大出さんは「グリーン(GREEN)」時代から見続けているんだけど、リアルクローズでありながら時代のバランスを入れていくという、“東京モード”を確立した2人だと思う。フィービー・ファイロ(Phobe Philo)が「セリーヌ(CELINE)」で作ったムーブメントともちょうど時代が合って、ますます盛り上がった。今回のコレクションでいえば、引き続きユーティリティーとリアルクローズのバランスが取れていました。ある意味では変わっていなくて物足りないんだけど、ファンにとってはそこが魅力なんだとも思う。ただ、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」とのコラボで、ダウンであったりパッディング(中綿)であったり、今年らしい素材で軽さを出すのは上手だなと思った。
WWD:「ザ・リラクス」はどうですか?
萩原:これまでそんなに見る機会がなかったんだけど、「ハイク」に比べるとやや硬さがあるなと思いました。それはつまり、きっちりシルエットを作っているということなんだけど。ゆるく着るというよりきっちり着る感じ。個人的には、もうちょっとゆるくなってもいいかな。ショーを見て、テーラードジャケットが得意なんだと感じたけど、サテンのテーラードジャケットにサロペットを組み合わせていたルックがあったじゃない?あのあたりの着こなしは新鮮でいいなと思いました。大人がああいう風に着るというより、若い子たちに「テーラードはこんな着方もできるよ」という提案をする感じ。
WWD:「ザ・リラクス」はジャケット、コートなど単品の強さが印象的でしたが、それに比べると「ハイク」は単品というよりスタイルなんだなと感じました。
萩原:そうともいえるかもしれない。「ザ・リラクス」は私は男性的な硬さがあると思ったけど、それは個人の好みの問題。ただ、今の時代の女性って、今更強い服を求めたりはしないとも思うのね。しなやかさが時代のムードとしてあって、そういう感覚の取り入れ方は「ハイク」はやっぱりうまいなと思います。特にコラボでそういう気分を入れていくわけだけど、今回も眼鏡のコラボをやっているなって、すごく分かりやすかったじゃない?
WWD:確かに。変わらないもののよさはもちろんありますが、ファッションにはやはり変化も必要です。この2ブランドはトレンド変化とは別の領域でスタイルを築いているともいえますが、今後も人気を保ち続けるのでしょうか。
萩原:海外のコレクションを見ていると、今季はウエストマークがポイントになっていて、女性らしさが重要になってきている。そうなると、「ハイク」のあそこまでの量感の出し方って、やっぱり今はちょっと違うよね。その点は物足りないなと思いますよ。ただ、それを時代からズレていると見るのか、我が道を行くと見るのか。もちろん、我が道を行くスタイルでも、コアで変わらないファンは今後も両ブランドともにいると思いますが、それ以上を求めようとするなら、我が道を行くでは難しいかもしれない。
WWD:今季、パリで初めてプレゼンテーションをした「オーラリー(AURALEE)」もそうですが、上質な素材を使い静かに主張するといったタイプの服が、「ハイク」「ザ・リラクス」を含め、東京のブランドとして一つのカテゴリーになっています。今の時代の“東京らしさ”が、これだということなんでしょうか?
萩原:このテイストが東京特有のものだとは思わないですけどね。海外にもその時代、その時代にこういうミニマルなものってあったし、今もある。フィービーの「セリーヌ」しかりです。それが今も東京には残っている、根を張っているという意味では東京らしいっていえるのかもね。