世界最大の時計・宝飾の見本市「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」が3月21日、スイス第3の都市バーゼルで開幕した。会期は26日まで。今回注目されたのは、昨年12月に同見本市からの撤退を表明した、世界最大の時計企業スウォッチ グループ(SWATCH GROUP)の影響。初日、それは最も悪い形で表れた。
「バーゼル・ワールド」に1994年から25年連続で取材に訪れる時計ジャーナリストの渋谷ヤスヒトは、「肌感覚的だが、初日の来場者は昨年の7割減。最盛期だった00年ごろとは程遠い。運営会社のMCHは結果を真摯に受け止め、大至急対策を講じなくてはならない。このままではスイスを代表する見本市の存在が危うい」と話す。
スウォッチ グループは18年まで会場中央に、「ブレゲ(BREGUET)」「ブランパン(BLANCPAIN)」「オメガ(OMEGA)」など10以上のブースを構えたが、今回そこには休憩スペースやレストランが新設された。だが近年の撤退ブランドはスウォッチ グループにとどまらず、メインパビリオンでさえ2階に上がると会場は閑散とした雰囲気。数年前まであった近隣会場のテントなどは総じて撤去された。
ニック・ハイエック(Nick Hayek)=スウォッチ グループ最高経営責任者 (CEO)は、出展中止の理由を「SNSをはじめとするネットメディアの普及により、見本市出展にかつてのようなPR効果はなくなった」と述べ、グループは現在、チューリヒで小売店向けの展示会を開催中。それが「バーゼル・ワールド」の閑古鳥ムードに拍車をかけている。時計関係者の間には、期待を込めてスウォッチ グループの「バーゼル・ワールド」復帰を予想する声もあるが、今回の来場者激減がその判断に影響を与える可能性は否めない。低調なまま終了しそうな雰囲気の今年の「バーゼル・ワールド」に、今後別れを決意するブランドも現れそうな雰囲気だ。
「バーゼル・ワールド」は、出展者を取り合うライバル的存在の時計見本市「S.I.H.H.(サロン・インターナショナル・オート・オルロジュリ、通称ジュネーブサロン)」と協議し、2020年から5年間、1月と3月で分離開催してきた2つのフェアを連続して行うことで合意している。20年は「S.I.H.H.」が4月26〜29日にジュネーブで先行開催し、「バーゼル・ワールド」が4月30日〜5月5日に見本市を開く。