3月18〜23日に開催された「アマゾン ファッション ウィーク東京(Amazon Fashion Week TOKYO以下、AFWT)」が、ついに終了。52ブランドが思い思いのショーやイベントで新作コレクションを披露しました。前評判通り素晴らしいショーを行ったブランドもあれば、期待を(いい意味でも悪い意味でも!?)裏切ったブランドも数多くありました。そこで今回、取材班が今期のAFWTについてゆるりと討論。長年AFWTを取材してきたベテラン記者2人と、先シーズンから取材班に加わった新米記者1人が、面白かったショーやブランドについてゆる〜く語り合います。まずは最初の3日間をプレイバック!
新米記者S.I:AFWTがついに終わりましたね。長いようで、短い一週間でした。
ベテラン記者K.O:諸事情で今回は2日しかいられなかったけど、今シーズンは、ここ最近の東コレを盛り上げていたアマゾンファッションによるプログラム「アット トウキョウ(AT TOKYO)」がAFWT期間中に開催されないということもあり、ブランド的にはややインパクトが弱い印象でした。
S.I:前回の「アット トウキョウ」での「N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」は特に盛り上がっていましたね。会場は少し遠かったけど、たくさんの人が来ていました。
K.O:そうそう。正直今回は、盛り上がるのかちょっと心配していました。ただ、トップバッターの「ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)」の来場者はさすがの大入り。「ドレスド」のショーを見に来る若い人たちはオシャレな人が多いですね。テーラードをしっかり作れるからこそ、さまざまな遊びの要素を加えてもブレない芯の強さがあります。
S.I:演出がかなり印象的でしたね。白い服を着たモデルと、黒い服にフェイスマスクのモデルをペアで登場させて、“人間の2面性”を表現したとか。
K.O:最近は「ダブレット(DOUBLET)」なんかも担当しているスタイリストのデミ・デムさんと組んで、ちょっと際どい表現や演出も増えてきました。今回は取調室風のセットを組んで観客はほとんどスクリーンを眺めるという演出でしたが、服は見えましたか?
S.I:ちょっと演出が凄すぎて、服の記憶が……(笑)。
K.O:僕も(笑)。ただ、服一点一点のクオリティーは高いので、その辺が来場者にも伝わっていればいいなという印象です。
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S.I:「ジェニーファックス(JENNY FAX)」は相変わらずの狂気さを見せましたね。先シーズンは切断された指がモチーフのアクセが髪についていたりしましたが、今季は指に熊ちゃんやケーキがぶっ刺さってました。
K.O:かなりのキワモノ感がありました。いつもよりは割と王道的なロリータかと思いきや、無造作に伸びたロングヘアやずり落ちたスカートから毛糸のパンツをのぞかせるなど、二度見三度見要素はばっちり。後半に登場したキューピーちゃんのようなルックが狂気のピークかな。
S.I:個人的には目玉がついた親指に見えました。あれはどういったシチュエーションで着るんでしょうか?
K.O:ごめん、まったく想像できない(笑)。スタイリングは前シーズンに続いて「バレンシアガ(BALENCIAGA)」などのスタイリングを手掛けているロッタ・ヴォルコヴァ。前回よりはスタイリング負けしていない印象でした。
S.I:2日目トップバッターの「シュシュ/トング(SHUSHU/TONG)」は、「ジェニーファックス」にも負けず劣らずのクレイジーさを見せました。テーマは“愛してるって言わなきゃ殺す”。告白と脅迫を兼ね備えたこの文句、パンチありすぎました。
K.O:ただ、2日目までで個人的に最も心を打たれたのが、上海拠点のこのブランドでした。普段はメンズばかり取材しているので、まさか自分がこの狂気的なガーリーでテンションが上がるとは。もしかして新しい何かが自分の中で目覚めてしまったのかもしれない。助けて。
S.I:お巡りさん、この人です!
K.O:銃で打たれた血痕を服にしたり、血でなぐり描いたようなギンガムチェックだったりと、ゾクゾクするようなバイオレンス感でした。最近、ゾンビものの米ドラマ「ウォーキング・デッド」にハマっていたり、グロ満載の魔女系映画「サスペリア」を見たばかりというのもあったりするからかもしれません。あの振り切った感じが気持ちよかったです。こういうガーリーなブランドが映えるのも東コレの特徴かも。
S.I:先輩は最近、ファイヤースティックTVを買い、ドラマや映画を見まくっているそうですね。
K.O:最近はドキュメンタリーをずっと見てます。
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ベテラン記者H.I(以下、H.I):すいませ~ん!遅くなりました。
S.I:今、ちょうどK.O先輩と2日目について話していました。「アンリアレイジ(ANREALAGE)」が初のメンズを披露するなど、いろいろあった2日目ですが、H.I先輩的にはいかがでした?
H.I:「アンリアレイジ」は“拡大”っていうテーマがとっても分かりやすい。会場に入った瞬間に超巨大なマネキンが目に入ったし。拡大したブルゾンの袖がワンピースになるっていう発想とか、かわいいな、ブランドらしくて面白いなって思った。
S.I:パリでも好評でセールスも良かったと森永(邦彦デザイナー)さんが言ってましたね。
H.I:ただ、昔も縮尺を変えるっていうテーマの時があったから、そこと今でどう違うのかな?とは思ったけど。でもやっぱり「服としてかわいい!」って思うのが一番だと思うからよかったのでは。
S.I:かわいいと言えば、個人的には「マラミュート(MALAMUTE)」も良かったのではと思いました。
H.I:ずっとかわいらしい雰囲気だったけど、ここ数シーズンは大人っぽいイメージに脱皮しようとしている印象です。SF映画が着想源だったようだけど、不穏でダークな感覚は今シーズンのトレンドのムードとも合ってるな〜、と。
S.I:服やショーも良かったんですけど、デザイナーの小高(真理)さんがかわいい。ショー後に記者に囲まれて、緊張のせいか声や手が震えていたんですが、それすらも可愛かったです。なんかずっと見ていたいな……と思って見てました。
H.I:……(この人も何かに目覚めてしまったようね)
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S.I:3日目は「ハイク(HYKE)」とAFWT初参加の「ザ・リラクス(THE RERACS)」に多くの人が集まっていた印象でした。どちらも、上質感のあるベーシックウエアが持ち味ですが、先輩的にどちらが良かったですか?
H.I:どっちがいいかというよりも、それぞれの個性がよりはっきり分かった気がしたかな。同じカテゴリーにしがちなブランドだし、実際どっちがお店に入るかで競合する部分もあるだろうけど、「ザ・リラクス」はジャケット!コート!といった具合に単品が立ってくる感じ。それに対して「ハイク」はスタイルなんだなと思った。
S.I:あとは「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」がメンズを発表したのは衝撃的でしたね。
H.I:メンズは今シーズンのAFWTのキーワードかも。「アンリアレイジ」や「ハイク」なんかも初のメンズをランウエイショーで披露した。まあ、「ハイク」はアイテムとして「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」コラボで既にメンズを出してはいたけどね。
S.I:3日目といえば、「ネグレクトアダルトペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATIENTS)」も色んな意味で注目を集めましたね。前シーズンはモデルがカップ焼きそばや肉まんを食べながら登場したんですが、今回モデルは全員Tシャツにスエットパンツ。服はトルソーにつけてモデルに運ばせるという。フィナーレも圧巻。まさに狂気。
H.I:ディレクターが裸で出てきた時、コレクションのテーマはFAKE(偽物)だけど「あ、この人、ある意味本物だ」と思いました。
S.I:ちなみに今回はカップ焼きそばではなく、カップナポリタンでした。ランウエイでのカップ麺に文字通り”味をしめた”ようですね。