「グレースコンチネンタル(GRACE CONTINENTAL)」などを擁するアイランドが、宮崎県に本社を置くアパレル企業オフィスカワノを相手取りアイランドの商品を模倣・販売したことは不正競争防止法上の不正競争に当たるとして提訴して約2億5000万円の損害賠償などを求めていた件で3月1日、知的財産高等裁判所はオフィスカワノに約1億4000万円の損害賠償支払いを命じた。オフィスカワノは東京地方裁判所の一審判決を不服として控訴したが、二審も「原判決(一審判決)は相当」とこれを退けた。両社とも上告は行わず、判決は確定している。
アイランドは、「当社は1997年の創業時から“唯一無二のモノ作り”を方針として掲げている。苦労してデザインを生み出し、そのデザインが商品として世に出るまでに多くのプロセスを経ている。模倣品の販売は作り手の思いを踏みにじった行為。さらには店頭で販売しているスタッフ含め、全社員が悔しい思いをした。今回の訴訟によって、他社に対しても『こういうことができる』『こういうことはやってはいけない』といった警鐘を鳴らせたのでは」と話す。
一方オフィスカワノは「海外、国内メーカーから仕入れた商品のため、非意図的であるとともに、明らかなデザインの違いもあることなど特殊な事例であると考えるが、結果的に当社の主張が全面的に認められず、相手方主張の約50%が認められた形となったことは残念」だとコメントした。また今後ついて「数年前からデザイナーを雇用し社内で企画デザインを行う体制に変更しており、ほぼ自社企画商品となっているため、今後はこのような事例にはならないと考えている。しかし、現在でも国内メーカーからの仕入れ商品がわずかにあるため、今回の事例を謙虚に学び、誠実に確認作業を遂行している」と続ける。
アイランドによると、本件は2015年6月、アイランドのEC担当者がネット上で同社の商品とよく似たオフィスカワノの商品を見つけたことに端を発する。アイランドは弁護士を通じて7月に販売停止などを求める警告書をオフィスカワノへ送付したが、オフィスカワノは模倣の事実はないとしてアイランドの要求を拒否。アイランドは同年12月に訴訟に踏み切った。
争ったのはドレスやサロペットなど計8点。一審はそのうちの7点が「実質的に同一」として、この7点についてはオフィスカワノがアイランドの商品に依拠(他人の商品のデザインを知った上で、それをまねて同じデザインの商品を作り出すこと)して商品を製造したことも認め、オフィスカワノに約1億4000万円の支払いが命じた。これは日本の模倣品訴訟の賠償額としては高額な部類に入る。
なお、今回の裁判では“色違い”の同一性についても判断している。裁判所は、「色彩も、商品の形態の一部を構成するもの」とし、「色彩の違いが商品の形態の実質的同一性の判断に影響を与えないとする原告(アイランド)の主位的な主張は採用できない」としつつも、「婦人服において、形状が同じで色彩だけ異なるいわゆる『色違い』の商品が広く存在していることは周知の事実であるから(中略)婦人服における色彩の違いは、(中略)一般には、形態の実質的同一性の判断に強い影響を与えないというべきである」と判断した。アイランドの顧問弁護士の新都総合法律事務所の板橋喜彦弁護士と森円香弁護士は、今回の件について、「今まで色違い商品の同一性判断について、正面から判断した判例はほとんどなかったが、今回初めて色展開について同一性を認めている。これまで判断されてこなかった部分について判断されたという意味では重要な判例」とコメントした。