高橋みどりオーエンス代表兼イメージディレクター(左)とのトークショーに登場したレベッカ・ミンコフ
ニューヨークブランド「レベッカ ミンコフ(REBECCA MINKOFF) 」は2019年春夏コレクションから東レ・ディプロモードが輸入販売を担っており、現在西武渋谷店では4月1日まで、ルミネ新宿 ルミネ2では3月31日までポップアップイベントを開催中だ。共同創設者兼クリエイティブ・ディレクターのレベッカ・ミンコフ(Rebecca Minkoff)はポップアップおよび3月28日には西武渋谷店で高橋みどりオーエンス代表兼イメージディレクターとのトークショーのために来日した。日本でのビジネスの新たなスタートを切った彼女に、ブランドの今後や女性起業家としてのビジョンについてインタビューをした。
WWD:ポップアップショップでは“I AM MANY(直訳すると私はたくさんの面を持つ)”という文字が目立ったが、どういうメッセージ?
レベッカ・ミンコフ共同創設者兼クリエイティブ・ディレクター(以下、ミンコフ):2018年9月に新たなブランドコンセプトとして“I AM MANY”というスローガンを打ち出した。もともとブランドの根源にある考え方でもあるのだけど、女性には一女性として、母として、妻として、パートナーとして、ビジネスウーマンとしてなど、さまざまな面を持つでしょう?そんな女性の多面性を讃えるキャンペーンで、世界中の女性をサポートしたいの。そのフィロソフィーは洋服やバッグのデザインにも応用していて、例えばリバーシブルに着られたり、バッグも2、3ウェイで使えるように工夫している。SNSでの拡散はもちろん、ニューヨークのイーストサイドにある公立小学校では5年生が自分にとっての“I AM MANY”とは何かを表現するプロジェクトがスタートしたくらい、幅広く反響があった。
1
/
12
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクション WWD/REX/SHUTTERSTOCK
WWD:2019年春夏コレクションもマルチに使えるピースが多かった。
ミンコフ:その通り。多方面で活躍する現代女性のために、ウエストポーチにもクロスボディーにもなるマルチユースなバッグを手掛けたり、洋服にはファスナーで裾の丈を変えられるディテールを加えたり。また、同じプリントをさまざまな素材で表現したり、シルエットでも遊んでみたりしたの。でも、すべて日常に取り入れやすいようにデザインしたことがポイントよ。
WWD:昨年はランウエイでの発表を休止したが、今季復活させた理由は?
ミンコフ:2018年はデジタルでのコレクションの発表に挑戦したけれど、やっぱりリアルな空間での体験も大切なことを改めて感じたの。特にファッションウイーク期間中はみんながファッションについて話し、ファッションに注目が集まるときだから、そのタイミングでショーを開催するには大きな意味があることに気づいた。過去の数字を振り返ると、ショーを開催した時の方がインプレッションやSNSでの投稿が増え、さらにECサイトのトラフィックもあったので、ランウエイショーを再開したの。
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクションのバックステージ WWD/REX/SHUTTERSTOCK
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクションのバックステージ WWD/REX/SHUTTERSTOCK
WWD:SEE NOW, BUY NOW(見てすぐ買う)形式で成功した数少ないブランドの一つだと思うが、そもそも始めたきっかけは?
ミンコフ:SNSが普及し、誰もがファッションショーを見れるようになった中で、ショーで見たものをその場ですぐに買えないことに不満を抱く消費者が多いのでは、と数年前に気づいたの。また、コレクションを発表した数週間後には私のデザインを模倣したものがファストファッションブランドの店頭で並んでいることも多かった。より早く、そして安価で買えてしまうのであれば、若い子はどんどんファストファッションで買ってしまう。そう思って、消費者の“すぐに買いたい”というニーズに加え、模倣品を防ぐべくはじめたの。最初はかなりの不安があったけれど、公式ECサイトへのトラフィックが爆発的に増え、さらにノードストロム(NORDSTROM)のサイトでは1日で70万ドル(約7630万円)を売り上げ、SEE NOW, BUY NOWを私たちの顧客は欲していると分かり、ずっと続けているのよ。
WWD:インフルエンサーを積極的に起用したり、店頭ではタブレットを使ったセルフレジをいち早く導入したり、デジタル戦略に力を入れている。
ミンコフ:2005年にブランドを始めた当時は、そこまでSNSも普及していなかったし、ブランドもそこに着目もしていなかったと思う。だけど私たちは消費者とよりパーソナルなコミュニケーションを取りたかったから、早い段階からSNSに注力したの。今も投稿をするだけでなく、コメントを返したり、いいね!をつけたり、積極的に消費者と会話をしているわ。また、最近はより身近な存在であるマイクロインフルエンサーを起用したり、インスタグラム上の“インフルエンサー”でなくとも、社会や文化に影響を与えている女性とも協業しているの。「レベッカ ミンコフ」を買ってくださるリアルな消費者層がロールモデルにする女性を起用することで、今まで無視されてきたマイノリティーの女性にも光をあて、サポートをしたいの。セルフチェックアウトの導入などは主に兄のユーリー(Uri)が仕切っていたんだけれど、現代の消費者にとって、デジタルは欠かせないものだから当たり前だと思って。QRコード付きのバッグも、コードを読み取るとコンテンツをみれるようになっていて人気なの。ただバッグという“モノ”だけで終わらせず、ブランド体験につながる良いツールだわ。
WWD:レベッカさん自身は女性支援の活動に積極的だが、その理由は?
ミンコフ:2018年9月に女性起業家を支援する「フィーメイル ファウンダー コレクティブ(FEMALE FOUNDER COLLECTIVE)」を立ち上げました。自分も一女性としてビジネスを経営しているけど、多くの女性を話す中で自分ほど恵まれておらず、苦しい思いをしている女性がたくさんいることに気づいたの。そんな彼女たちを支援したいという思いで立ち上げたわ。でも、いざ女性オーナーの企業を探そうとした時に、自分の名前を冠した企業でない限り、オーナーが女性かは全くわからないことに気づいたの。そこでオーガニック認証やリサイクルマークのように、企業に特殊なシンボルを作ればすぐに女性がオーナーだとわかるのでは、と思いついた。まだ立ち上げて6カ月だけど、すでに世界中から4000人以上の女性が加盟している。北米だけでも女性がオーナーの団体や企業は1200万ある。目標は、その1200万団体・社に加盟してもらい、女性が女性を支え合えるような社会に変えることね。
「レベッカ ミンコフ」2019年春夏コレクションのバックステージ WWD/REX/SHUTTERSTOCK
WWD:3児の母として育児と仕事どちらも両立させているが、その秘訣は?
ミンコフ:ワークライフとプライベートライフの“バランス”はないと思っている。“バランス”は、男性的な考え方だと思うわ。それより、 “メリハリをつける”という考え方の方が好き。以前は週80時間働くことも平気であったけど、息子が生まれてからは時間の管理をより真剣に考え始めた。私には素晴らしい夫とベビーシッターがいて、仕事の時は仕事に、家にいる時はメールもチェックしないで子供たちとの時間に集中するの。
WWD:日本では今季から新しいビジネスパートナーを迎えたが、今後の目標は?
ミンコフ:現在、ECの売り上げは北米についでアジアが2位なの。中国とマレーシアで新店舗をオープンする予定だが、いつかは日本にも店舗を出したい。北米でのビジネスが安定してきた分、次のステップは海外マーケットを成長させることだわ。