2019年春夏にスタートしたイタリア・ミラノ発の「プラン C(PLAN C)」が、東京・青山に世界初の路面旗艦店をオープンした。同ブランドをデザインするカロリーナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)は、「マルニ(MARNI)」の創業デザイナー、コンスエロ・カスティリオーニ(Consuelo Castiglioni)の娘。カロリーナの父、ジャンニ(Gianni Castiglioni)がブランドの最高経営責任者(CEO)を務め、カロリーナの弟ジョバンニ(Giovanni Castiglioni)もビジネスに携わるなど、イタリアらしい家族の絆がブランドの大きな魅力となっている。旗艦店オープンに合わせて来日した父娘に、家族での経営やブランドの進捗を聞いた。
WWD:「プラン C」はデビューシーズンから国内外で100社以上の卸先が決まった。手応えは?
ジャンニ・カスティリオーニCEO(以下、ジャンニ):期待も大きかったですが、それ以上の反応がありました。特に、日本、韓国、香港などのアジア地域では大好評といっていいでしょう。ただし、やみくもに販路を拡大するつもりはありません。日本でパラグラフとディストリビューション契約を結んでいるように、各国で信頼できるパートナーと組んでいきます。ブランドの立ち上がりの時期は、アイデンティティーが非常に重要です。だからこそ、最善のパートナーと共にじっくりブランドを広げていきます。
WWD:世界初の路面旗艦店に青山を選んだ理由は?
ジャンニ:日本での売り上げはブランド全体の3割を占め、カギとなる市場です。日本では今春、卸だけでなく百貨店インショップも3店オープンしましたが、単に商品を見せる場ではなく、われわれのアイデンティティーを表現する場が必要でした。それが旗艦店です。青山はとてもエレガントな場所。ブランドの背景にあるクリエイティビティ―を伝えるには、東京の中でも青山がベストです。19年秋にも百貨店インショップを出店しますが、急拡大は考えていません。今後3年で10店程度の出店を考えています。
WWD:カロリーナは、「プラン C」立ち上げ前は「マルニ」でスペシャル・プロジェクト・ディレクターなどを務めていた。当時と今とで、もの作りに対するアプローチは変わったか?
カロリーナ・カスティリオーニ(以下、カロリーナ):「プラン C」では年2回コレクションを発表しており、プレ・コレクションは作っていません。だから、春夏物は厚手のコートから軽やかなサマードレスまで含んでいて、半年間をしっかりカバーできるようになっています。発表の方法も、ランウエイショーではなくプレゼンテーションにしました。これがわれわれの独自のやり方です。年に2回コレクションを出せば十分なはず。もっとたくさん発表するようになっては、きっと心が疲れてしまう。今後ランウエイショーを行うことも、現時点では考えていません。
ジャンニ:ファッション業界はもっとスローダウンすることが必要です。業界のサイクルが早いせいで、(プレ・コレクションを発表していたら)商品一つ一つの寿命がすごく短くなって、シーズンがすぐに過ぎ去ってしまう。
WWD:「プラン C」を含め、イタリアには業界のスピードから距離を置き、ブランドの核を家族でしっかり守っているブランドがたくさんある。一方で、家族経営ゆえに疲れることなどはないのか?
ジャンニ:家族で経営していると全てクイックに決まるし、投資家などから無用なプレッシャーを受けることもありません。社員もみな家族みたいな存在です。各国のディストリビューションパートナーも、われわれのそういった姿勢を支持してくれています。
カロリーナ:家族でビジネスをするうえで、難しいことは何もありません。われわれの会社は小さなチームで、お互いに助け合っているから肩ひじ張ることなく働けています。オフィスにはキッチンもあるから、みなで一緒に食事をすることもあります。とはいえ、各人には明確は専門領域があって、一人一人がプロフェッショナルです。
ジャンニ:青山の旗艦店も、まるで家庭のような温かい雰囲気の店です。青山で体現しているものをブランドとして今後も大切にしていきたいし、温かみを感じるアプローチを続けていきます。