英百貨店デベナムズ(DEBENHAMS)は4月9日、管財人の管理下に置かれたと発表し、事実上の経営破綻に陥った。店舗の営業は続け、債権者所有の新会社の下で再建を目指す。
今回は、あらかじめ再建計画を策定して債権者の承認を得てから倒産手続きを開始する“プレ・パッケージ型”の倒産であるため、デベナムズの小売り事業などは債権者が所有する新会社に直ちに移譲される。これによって店舗の営業や仕入れ先との取引関係は維持され、かつ新会社の下でおよそ2億ポンド(約290億円)の資金が利用可能となることから多くの雇用や年金などが保護される見込みだが、事業再建の一環として50店程度の閉鎖は避けられないという。
同百貨店は1778年に創業。英国を中心に世界で約240店を展開しているが、ECへの参入が遅れたことが影響して業績が悪化していた。2018年8月期決算では4億9150万ポンド(約712億円)の税引き前損失を計上し、5900万ポンド(約85億円)の税引き前利益を上げていた前期から大幅な赤字転落となった。
18年8月には、やはり英百貨店のハウス・オブ・フレーザー(HOUSE OF FRASER)が破綻したが、英スポーツ ダイレクト(SPORTS DIRECT)の創業者で大富豪のマイク・アシュリー(Mike Ashley)が買収している。また、スポーツ ダイレクトはデベナムズの株式を30%近く保有する筆頭株主であり、アシュリー創業者をCEOに迎え入れるという条件で1億5000万ポンド(約217億円)の買収策を提案していたが、経営陣に拒否されている。9日には2億ポンド(約290億円)に増額した買収案を提示したが、これも拒否された。同氏は規制当局を批判しているほか、デベナムズの経営陣を「欺瞞に満ちている。うそ発見器にかけるべきだ」と非難し、管理手続きの取り消しを求めているという。
デベナムズの株式は9日午前8時(現地時間)の時点で売買が停止され、10日付で上場廃止となる。これにより、筆頭株主のスポーツ ダイレクト保有分も含め、株式価値はゼロになる。テリー・ダディ(Terry Duddy)=デベナムズ会長は、「株主にとっての価値がゼロとなってしまうのは非常に残念だが、今回の手続きによって店は通常どおり営業することができ、事業再建を目指すことができる」とコメントした。