仏ノルマンディー地方グランヴィルにあるクリスチャン ディオール美術館(Christian Dior Museum)で4月27日から「グレース・オブ・モナコ、プリンセス・イン・『ディオール』」展が開催中だ(11月17日まで)。ハリウッド女優からモナコ公妃となったグレース・ケリー(Grace Kelly)のワードローブ85点以上を通して、「ディオール(DIOR)」とグレース妃の緊密な関係を紹介する。展示品は1982年に彼女が死去して以降、モナコの宮殿に保管されてきたもので、会期中の11月22日に彼女の生誕90周年を迎える。
グレース妃は1956年にモナコ公国大公レーニエ3世(Prince Rainier III )と結婚してから、「ディオール」を愛用するようになった。同年にニューヨークで行われた婚約パーティーでは「ディオール」の56-57年秋冬オートクチュール・コレクションから“コリネット”を着用。モナコ公妃としての初の公式ポートレートも同じドレスで撮影している。
展覧会は「ディオール」のドレスの美しさとともに、歴史上最も愛されたプリンセスの1人としてのグレース妃の生活を物語る内容にもなっている。フェザーで飾られたシフォンのオートクチュールドレスが彼女の公妃としての人生を象徴する一方で、シャツドレスやツイードのスーツなどのコレクションは、母であり、妻であり、エレガントな現代の女性であった日々の生活をしのばせる。
同展のキュレーションを手掛けたファッション史学者のフローレンス・ミュラー(Florence Muller)が、モナコの宮殿でグレース妃が遺したドレスを確認したところ、数百枚のうちおよそ3分の1が「ディオール」だったと語る。57年のムッシュ・ディオールの死後もグレース妃は、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)からデザイナー職を引き継いだマルク・ボアン(Marc Bohan)と親しくし、「ディオール」を愛用した。ボアンは宮殿でのイベントなどに度々招かれ、グレース妃の娘たちと一緒に遊んだりしていたという。
ミュラーはこの展覧会のためにブルゴーニュに住むボアンに会いに行った。「彼女は私のスタイルをまさに体現していた。目を引くが、決して押し付けがましくない」とボアンは回想し、「シャツドレス、ブラウス、クレープデシンは彼女の好みにぴったりだった」と語ったという。
「ボアンはグレース妃の役割を完璧に理解していた」とミュラーは解説する。「グレース妃がスタイリッシュであると同時にエチケットのある服装が求められていたことをね」。展覧会では長袖のドレスが多く展示されているが、どれもファッションとしてひねりが加えられている。「“バヤデールドレス”がいい例だ。長袖とハイネックで露出が少ないながら、カフタンのようなデザインと明るい色使いでヒッピーシックな要素も取り入れている。ボアンはこうしたバランス感覚に優れていた」。
同展ではほかにもグレース妃のアクセサリーや手紙、モナコ宮殿が公開したアーカイブ映像も見ることができる。